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幻姫と星空の国  作者: 立花柚月
湖の街
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新章スタートです。登場人物もちょこちょこ増える予定です!

それから五日ほどが経った。その間、エリカとレオは湖の街へと続く街道を進み続けていた。時々、追手と思われる人物たちが襲撃してきたが、二人は何とかそれを避け、服屋の店主が言っていた湖の街にたどり着いた。そこでまず印象に残るのは、街並みの美しさだ。石畳の道路が放射状に広がっており、その中心には噴水広場がある。天に向かって湧きだす水が光を反射して小さな虹をつくっていた。透き通った美しい湖がある街なので、湖の街と呼ばれているそうだ。そして、その湖はここに住む人々の生活の基盤となっており、街にはその湖から流れる水が流れてくる水路がたくさん通っている。そこでは子どもたちが楽しそうに遊んでいて、時々、水路の水を利用した水車も見ることができた。

しかし、二人が宿を探すためにその街を歩いていると、途中で不思議なことに気付いた。何故か街の人々が二人を見てひそひそと話をしているのだ。しかしそれは嫌な噂話をしているような顔ではなく、どこか好奇心に溢れた表情だったため、理由が更に分からない。しかも、どの道を歩いても同じような状態になる。二人は思わず顔を見合わせた。

「一体、何でしょう?特に嫌悪感などはないようですが…。旅人が珍しいのでしょうか?」

「さあ……?でも、よっぽど気になるなら、向こうから話しかけてくるだろう」

レオはそう言ったが、結局街の人々が彼らに話しかけてくることはなく、その理由が何も分からないうちに二人は宿を見つけた。湖とは少し離れた小高い丘の上にあり、この街の景色が一望できる。既に時刻は夕方に近く、空には一番星が輝いていた。空いている部屋があるかを聞くため、二人は建物の中に入った。ドアについていたベルが軽やかな音を響かせる。その音に、中のカウンターで何か話をしていた二人の人物が反応し、こちらを向いた。二十歳ほどの青年と、彼と同じくらいの年の背の高い女性だ。どうやら彼らがこの店の主らしい。しかし、その二人もまた、こちらを見た瞬間、驚いたような表情をした。

「…これはこれは…。また、随分とすごい客が来たようだな。なあ、ソアラ?」

青年が楽しそうな笑みを浮かべる。ソアラ、と呼ばれた女性は、その質問に何度もうなずいた。その視線はずっとエリカの方に向けられている。街中にいた人たちと同じような好奇心に満ちた瞳だ。疑問に思ったエリカは質問した。

「この街を歩いていた時もすごく通行人の方々に見られていたのですが、どうしてですか?旅人が珍しいのでしょうか?」

すると、青年は少し驚いたような表情をして、何故か一旦カウンターの奥の部屋へ向かった。しかし、すぐに何かを持ってエリカの前に戻ってきた。そして、楽しそうな笑みを再び浮かべてそれをエリカに渡す。エリカは不思議に思いつつそれを受け取った。だが、そこに描かれていたのは――。驚愕し、何も言えなくなる。隣にいたレオも、その絵を見て息をのんだ。しばらくして、エリカはようやく言った。

「これ…、一体、何ですか?見たことがないのですが…、この人……」

青年が持って来たのは、一枚の絵だった。そして、そこには、夜空を思わせる黒髪と、金色の瞳を持つ女性が描かれていた。背景は夜の闇。空に数え切れないほどの星が輝いている。女性はどこか神々しく、優雅な雰囲気だ。まるで人ではないような独特の気配。ただの絵のはずなのに、それが分かる。そして、その人物は…、何故かエリカにとてもそっくりだった。まるで、生き写しのように。青年が答えた。

「これはな、この街の住人なら誰でも持っている絵画だ。ここには、星の女神が降り立った、って伝説があって、その時に描かれた絵なんだとさ。それ以来、この街ではその絵を基にした絵画がさかんに描かれて、今でもこうして残っている、ってわけだ」

そう言いつつ、青年はじっとエリカの顔を眺めた。あまりにもそっくりすぎて、逆に怖い。だからこそ、道行く人々が彼女を見ていたということにも納得がいく。この絵はこの町ではとても有名だからだ。しかし、当の本人は星の女神というものを知らなかったらしい。非常に怪訝そうに絵を眺めている。

「そう、ですか…。では、何故、星の女神さまと私はそっくりなのでしょう?」

「そこまでは知らないな。…そうだ、気になるなら、その時の伝説について書いてある本があるから貸してやるよ。あんたら、ここに来たってことは泊まっていくんだろ?」

エリカがうなずくと、ソアラがいつの間にかその本を持ってきていて、エリカにそれを手渡してくれた。エリカはお礼を言って、丁寧にそれを受け取る。黒い背景に、星のような銀色が散っている、不思議な表紙が印象的だ。タイトルは書いていない。エリカは、部屋に入ってから読んでみようと思いつつ、部屋の案内をすると言うソアラの後に付いていった。その階の端には階段があり、そこから泊まるための部屋に行けるようだ。どうやら、一階は食堂だけで、そういった部屋はないらしい。ソアラを追って二階の廊下を歩いていると、ふと彼女が質問してきた。

「そういえば、二人はどこから来たの?星の女神様について何も知らなかったってことは、ここら辺の人じゃないよね?」

ソアラの疑問は当然と言えば当然のものだ。だが、具体的に答えるわけにはいかない。そのため、レオが「エトリセリアの方」と言う曖昧な答え方をした。その返答にソアラは何かあると感じたのか、それ以上詳しくは聞こうとせず、とある部屋の前で立ち止まった。

「ここだよ。この部屋が空いてて良かったね。すごく眺めがいいんだよ!はい、これ、鍵。こっちが青い扉の方で、もう一つが緑色の扉の方。失くさないように気をつけてね」

そう言ってソアラは二人にそれぞれ鍵を渡し、すぐにそこから立ち去った。やるべきことが色々とあるらしい。だが、エリカは部屋に入る前に、先ほど通ったばかりの廊下を少し戻った。レオは少し怪訝に思ったが、付いて行く。少しして彼女が立ち止まった先にあったのは、この国の地図だった。湖の街から先のことがよく分からないので、見ておいた方が良いと思ったのだ。エリカは取りあえず、湖の街の名前を探すことにした。その名はすぐに見つけることができたが、こうして見ると、まだあまりエトリセリアからは離れられていないことが分かる。すると、レオがとある一点を指差した。

「ここが港町みたいだな。…けど、まだまだ遠い。どれくらいかかるか…」

確かに、この街と目的の町は非常に遠い。この国の中で、湖の街は比較的東側にあるのに対し、港町は北西に位置するからだろう。今までと同じようなペースで行くと、相当な時間がかかってしまう。それに、ただ荒野だけが広がっているような場所も幾つか存在しているようだ。

「お金の面が心配になりますね。今はまだ十分にありますが、果たして今後、どれくらい費用がかかることになるのか…。全く分からないですね…」

エリカはそうつぶやいたが、この感じだと、足りない可能性の方が高い。何となくそのことを察したレオが、あることを提案した。

「それなら、さっきの人たちに聞いてみるか?どこか、一時的に働けるような場所があるかどうか…。色々とこの街の情報を知ってそうだったし」

そこで二人は一旦それぞれの部屋に荷物を置いた後で、ソアラと青年――レヴェンのところへと向かい、そのことについて尋ねてみた。すると、レヴェンは気さくな笑みを浮かべて驚くような提案をした。

「それなら、昼間ここで働くっていうのはどうだ?そしたら昼に飯を食べにくる客がそこまで飯を待たずに済むし、あんたらは金を稼げるからちょうどいい」

なので、二人はありがたく、その仕事をすることにした。ただ、今日は疲れているだろうから明日からでいい、とレヴェンは笑う。何も言っていないはずなのにそういった状態を見抜いてしまうのは、彼が何人もの客を見てきたからなのかもしれなかった。

読んで下さり、ありがとうございました。

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