表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傭兵団長の娘  作者: 住宅街
3/3

三話 脱出

続きました!

 


 爆炎が大広間を舐め尽くし、隠し通路に流れ込んでくる。

 飛び込む様に奥の部屋へ入り間一髪で扉を閉めると、石扉の裏側がジリジリと焼けるのが伝わってきた。


 (父さんが死んだ?そんなはずない…父さんが死ぬなんて有り得ない…!)

 

 直前に見た光景が脳裏をチラつく。どんなに頭の中で否定しても、記憶がそれを許さない。

 骨折によるものではない痛みが胸の奥からする。この世で一番信頼し、尊敬し、愛していた人の死は予想以上に私の心を傷つけた様だった。

 悲しみを頭から振りはらい、気持ちを切り替える。私たちが逃げ切らなければ、父の死も無駄になってしまう。

 落ち着いて自分の怪我を回復し、自分の装備をチェックする。運よく、何も無くなってはいなかった。


 「う、うう…」


 その時、レニが呻き声をあげた。意識を取り戻しかけているらしい。


 「レニ!起きてレニ!」


 「セラ、か…?俺は…一体、どうなったんだ…」


 「爆発で怪我をしたのよ。王国兵に殺されそうになっていた所を父さんが助けて……意識を失った後、私が隠し通路に引きずって来たの」


 「君が助けてくれたのか…ありがとう」


 「違う。助けてくれたのは父さんよ…父さんが王国騎士の攻撃を押し留めてくれたの」


 「なるほどな。だが…その団長はどこに居るんだ?」


 口に出そうとするだけで胸が痛む。またあの光景が蘇った。


 「団長…父さんは死んだわ。私の目の前で。王国騎士に殺されたの…」


 レニの目が大きく見開かれる。私を見て何か言おうとするそぶりを何回かした後、諦めた様に俯いた。

 少しして顔を上げた彼の顔は、少し悲しげだがいつもの表情に戻っていた。


 「あの団長が…死ぬとはな。詳しい話を聞きたいところだが…煙が扉の隙間から流れ込んで来ている。思いのほか火の進行が早いらしいな」


 あの魔術師の魔法の所為だ。ここからでは分からないが火はかなり燃え広がっているだろう。


 「波止場に脱出用の船が用意してあるらしいの。とにかくここを出ましょう」

 


 ◇◇◇

 


 通路は麓の地下墓地に通じていた。このまま下って行けばすぐに波止場へ着くことが出来るだろう。

 後ろを見ると、火が全体に回った城が崩れ落ちかけている。辛うじてまだ原型を留めている塔は激しく燃え盛り、灯台の様に麓を照らしていた。


 「セラ。話しておきたいことがある」


 突然、レニが真剣な面持ちで口を開いた。


 「なに?」

 

 私はレニの口調に並並ならぬ物を感じ、その場で身を硬くした。


 「ゼンズ団長が居なくなった今、傭兵団の団長は空席だ。そしてその地位に相応しいのはセラ、君だ。俺は今から君に忠誠を誓い、君の命令に従う」


 (!?)

 「ちょ…!?ちょっと待ってレニ!こんな時に何言い出すのよ!」


 「今じゃなきゃダメなんだ。波止場は封鎖されてるだろうし戦闘は避けられないだろう。そんな時、指示を出す人間が居なくちゃならない」


 「だからって!そもそもあなたは副団長なんだからあなたが団長になるべきじゃない!」


 「上に立つ人間にはそれ相応の器ってやつが必要なんだ。俺にはそれが無いが、君にはある。ゼンズ団長の事は長年見てきたけれど、同じくらい君のことも見てきたから分かるんだ」


 「でも……」


 私が団長?そんな大役、私には無理だ。確かに父さんの様な団長になりたかったし、なるつもりだった。でも今の私はとてもじゃないが父さんには及ばない。強さ、勇気、知識、責任…何もかも。


 「でも…団員のみんなだって…どうなったか分からないし。傭兵団が存続できるかも分からないんだよ…」


 「少なくとも君の部下は一人はいる。ここにな」

 

 父さんが作り上げた傭兵団を失う訳にはいかない。死んでいった仲間たち、生き延びているかもしれない仲間たちのためにも。

 誰かが…いや、私がこの傭兵団を守っていかなければならないのだ。

 

 「………わかった。今から、ベリエ騎士団の団長はこの私が務める。レニ、副団長は頼んだわ」


 「喜んで…セラ団長!」


 ◇◇◇


 波止場の近くの岩陰から波止場を偵察する。父の言った通り、桟橋にラストワードの旗を掲げた船が停泊していた。


 「しっかり固めてるわね。建物の近くに三人、桟橋に二人、高台にも弓兵が二人いるわ。住民は中央に集められて監視されてるみたい」


 「なるほどな…ラストワードの船まで隠れて行くのも無理があるか。俺の鎧の音でバレるだろ」


 「そうね…全員倒さないと安心して船に乗れない。中にいる人が味方とも限らないし。あの高台…私なら気付かれずに登れると思う。上を制圧したらあの二人が持っている弓で援護するわ」


 「了解だ、団長。俺は気付かれないギリギリのところで待機する」


 「ええ。作戦開始よ」


 私は近くの商店に裏口から入り込む。音を立てないよう慎重に、時には大胆に。二階から屋上に出ると、隣の屋根に飛び移り、すぐさま隠れる。

 弓兵の一人は船会社の看板の横に、もう一人は少し奥の建物のバルコニー立っていた。

 投げナイフを軽く握りタイミングを見計らう。興奮した心臓は段々と落ち着いていった。

 バルコニーの兵士が移動した。丁度、下からは見られない位置のはずだ。

 その瞬間、物影を飛び出し、一人目の背後に迫る。まるでハグでもするかのように男の後ろから腕を回し、そっと喉笛を切り裂くと、鮮血が看板の裏に飛び散った。と、同時にその血に濡れたナイフを二人目へ向けて投げる。二人目は右目からナイフの持ち手を生やしたまま痙攣し、生き絶えた。

 下の兵士たち三人がバルコニーからの音を訝しみ、返事がないと分かると誰がが見に行くかで揉め出した。

 私は口論に負けた方に拾った弓矢の狙いを定め、レニに合図を出す。

 

 「ったくよぉーどうせ酔っ払って寝ちまっ…」


 レニが二人の首を流れるように切り落とすのを横目で見つつ、矢を放つ。三人が同時に崩れ落ちた。

 同じように桟橋の二人も射抜くと、レニに制圧完了の合図を出し、ホッと緊張を解く。どうにか乗りきれたようだ。

 

 (さあ後は脱出するだけ…)

 

 その瞬間、背後の扉が吹き飛んだ。




 「我は王国陸軍第七師団、バッド・モー上等兵である!王国騎士のの中でも最強を誇るウィリアム・ギョーム大尉の誉れ高き命により、ベリエ戦士団である…貴様の命、頂戴する…!」





個性を出すのって難しい…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ