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傭兵団長の娘  作者: 住宅街
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一話 襲撃

思いつきで、初めて小説を書きました!百合小説の筈なんですが全くガールズラブ要素入れられませんでした…小説と呼べるかもわかりませんがよろしくお願いします。流石に短過ぎますね。

 私には姉が居た。いつも一緒に遊び、若くして亡くなった母の代わりに愛情を注いでくれ、片時も離れずに世話をしてくれた。そんな優しい優しい姉が居た。ずっとそう聞かされてきた。


 城が燃えている様だ。何世紀前から存在しているか分からないこの城が。私たちベリエ戦士団の本拠地であるこの城が。

 城の二階にある寝室まで焦げ臭い匂いが流れてくる。城の床板が燃えるメキメキという音や皿が割れる音、沢山の足音に混じって鋭い金属音が聞こえてきた。戦いの音だ。どうやら真夜中の侵入者はだいぶ深くまで侵入しているらしい。急がなければならない。

 私は黒い髪を後ろで束ねると、寝間着の白いシャツを脱いで肌着一枚になり、その上からぴったりしたボディスーツに身を包む。リザードマンの皮で出来たそのスーツは月の無い夜の様に真っ暗で、暗がりの中で見られても認識される事は無い。静音魔法が符呪され、黒色に染められたプラチナアーマーと投げナイフを数本刺したベルトを装着し、父から貰った仕込み剣を掴むと私は部屋を飛び出した。

 部屋の扉を開けた瞬間、血の匂いが鼻腔をくすぐる。階下の大広間を見下ろすと、団員たちが敵を押し留めようと必死にバリケードを築いており、大扉は今にも破られそうに軋んでいた。

 私は目を見張った。幾ら何でも早すぎる。

 この城が本拠地であり、私の父であるゼンズ・ベリエが団長を務めるベリエ戦士団はヴァインダー王国を中心に活動する傭兵団である。団員はほぼ全員が戦闘経験のある老若男女であり、野党まがいの傭兵団や徴兵された市民で構成された王国兵とは一線を画す戦闘力を誇っていた。

 その団員達をここまで押し込むとは一体どんな勢力なのか。


「セラ!」


 階段を降りると銀色の鎧に身を包み、片手にブロードソードを握る騎士に呼びかけられる。父の副官であるレニだ。いつもきっちり磨かれている鎧には煤や返り血がべっとりと付き、既に敵と交戦してきた事を示していた。


「敵は?何処の勢力なの?」

「服装を見る限りは王国兵だ。実際、最初に侵入して来た奴らは難無く倒せたよ。ただ、後から来た四人は実力が段違いだ。メアリーベスとアンジェロがやられたんだからな」


 あの二人を破ることのできる人間……。王国四騎士の名が脳裏を掠める。

 家族同然の人間を二人も失った衝撃と悲しみを押し殺し、私はレオに向き直った。


「この押されようはそいつらの所為ってことね。とにかく大広間だけは守らないと。私も手伝うわ」

「いや、君は団長を見つけて来てくれ!戦闘が始まってから見てないんだ。こんな事態になって現れないのはおかしいだろ!」

「副団長!扉が破られます!」

 バリケードの後ろでクロスボウを構えたショーンが叫ぶ。


「……!いいから君は行……」


 レニは最後まで言えなかった。私も父を探しに行くことは出来なかった。


 目の前が眩しい程に明るくなったと思った瞬間、意識の主導権が自分の手から離れていった。




 ◇◇◇




 瞼を開くとショーンと目が合った。正確に言うなら彼の亡骸と。頭の三分の一が欠け、そこから脳漿がタラタラと流れ出ている。身体にはバリケードの破片だろうか、木片が突き刺さり、その先端が胸から突き出ていた。


 どうやら何かの爆発が起こったらしい。私は吹き飛ばされ、階段の前に転がっていた。 


 身体のいたるところが痛い。何本か折れてるかな、とぼんやり考える。目の前に転がっている仲間の事を考えれば運が良い方だろう。


 ショーンの身体越しに見た大広間は仲間たちの死体で溢れていた。多くは身体のどこかが欠けており、爆発の威力を物語っている。私も死体だと思われているのだろうか…レニはどうなったのだろう…。


 そんな死体の山の中で、傷つき、跪いたレニをランダル王国の鎧を纏った兵士たちが取り囲んでいた。レニの肩には大きな傷が有り、鎖帷子の合間から血が噴き出している。あれでは剣を握れないどころか、命も危ない。


 王国の標準装備である鎧をきた兵士たちの中で、服装が異なる者が四人。


 茶髪、碧眼の優男風の男がレニの前で彼を見おろしていた。男の右手には、精密な意匠が施された鎧には不釣合いな武骨さのモーニングスターが握られている。その後ろで美しいブロンドの髪に純白の鎧を着た女が何やら男に訴えている。脇に差しているロングソードも鎧と同じく真っ白でその女の周辺だけ発光している様に見えた。どうやら意見が纏っていないらしい。少し離れた所では戦斧を担いだ大男とローブ姿の女が口論の経過を窺っている。


 あれが王国四騎士だろうか。


 優男が後ろを振り返らずに問い掛ける。




 「……何故、殺すなと?」




 「その男は降伏しているだろう。武器を持たない者を殺すのは騎士として恥ずべき行為だ」




 「ですが命令は傭兵団の殲滅です。四騎士の一人である貴方が命令違反をなさるおつもりですか?」




 「だが…!私たちは…」




 「お姉様」




 今まで沈黙していたフードの女が声を上げる。




 「彼ら傭兵団は大量虐殺を行った大罪人。お姉様が慈悲をお与えになる価値など万に一つもありません」




 「あの虐殺の犯人だ。ここで捕まえても結局、処刑台送りになるだろ。今殺すのと何の違いがあるってんだよ。俺は捕虜を引きずりながら王都に帰るのは御免だぜ」




 大男もすかさず口を挾む。




 「…………」




 言い返せない女に優男が諭すように畳み掛ける。




 「良いですかカサンドラ。これは正義の執行なのです。ホワイトランディングの村人たちがどんな風に殺されたのか思い出してください。男は磔にされ、女は火炙りにされた。この男はその犯人なのですよ!」




 女は優男の言葉に諦めたのか、首を振り呟く。




 「分かった…殺れ…」




 「聞きましたね、皆さん。殺してください」




 命令を聞いた部下の一人がレニの背後に立ち、剣を振り上げる。レニは自らの死を受け入れるかのようにこうべを垂れた。




 そして……上半身と下半身が切り離された。

次の話も書けたらいいな

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