オリジン・イヴの剣
やっぱベネットたちが主役の話の方が書きやすいなぁ……。
「これが例の遺跡か……」
イジワール紳士は中に立ち入ろうとする。
すると桃介が目を覚まし、
「おい、なんだあれ」
イジワール紳士は舌打ちする。潜入は一人でやりたかった。
「ついてくんじゃねぇガキ。てめえらは寝てろ」
「なんだと? おい、小夜、竜一、起きろ、すげえぞこれ」
二人も目を覚まし、三人は光輝く透明な遺跡に見惚れていた。
「これ、中に入れるの?」
小夜は入り口が妙に暗いのを見て指摘する。
「どうやら違う空間につながってるみたいだねぇ」
竜一が一人で納得する。
「おい、イジワール、俺らも連れてけ」
「断る」
「そんなの許さないわよ!」
「お前ら、死ぬぞ」
三人はその言葉に黙った。イジワールも本気で死ぬかどうかは分からずそう言ったが、危機を感じていたかれは、ここは子供のくる場所ではないと分っていた。
「俺様は行く。死んでもいいなら勝手にしろ」
イジワールはステッキを突きながら遺跡内部に入って行った。
彼は発明王で、いくつもの発明品を開発していたが、特許は取っていない。彼は『どこでもテラスくん』という、ダサイ名前の光源を手にし、遺跡の内部に潜入した。桃介たちも後を追った。
狭い石造りの階段を降りていく。
最下層までいくと、広い部屋があった。
「なんだ? この石碑は?」
石碑には、謎の文章と絵が刻まれていた。
「しょうがない、『なんでも読めるくん』で解読しよう」
「そのダサイネーミングセンス、どうにかならないの?」
小夜のツッコミを無視し、イジワールは虫メガネの発明品を使って石碑を読んでいった。
「オリジン・イヴ、ここに眠る……」
オリジン・イヴは自殺するとき、死に場所を神から与えられた。それがこの『眠らない月』という遺跡。神に憐れまれたオリジン・イヴは美しい死に場所を選ばれたのだ。ここに立ち入った者は暁までに出ないと一生でられない。
ここの遺跡には、オリジン・イヴがオリジン・アダムと闘うのに使った剣がある。そこにオリジン・イヴの魂は眠っている。
「ざっと解読するとこんな感じか……つまり、オリジン・イヴの剣っつーのはここにあるわけだ」
「どうやって探すんだよ」
「なぁに、たやすいことさ。暗号が遺跡に書いてある。IQ180の俺様ならすぐに解ける」
イジワールは読めるくんであちこち探索したかと思えば、自分の指の皮を噛み切り、血で六芒星を壁に描いた。
すると、天井が光輝いた。
「うわっ!!」
桃介たちは驚いて目を瞑った。
そこには、金色に輝く剣が落ちていた。
「案外容易く見つかったねぇ」
「こいつを持って帰るぞ。ガキ共、一緒に来い。もう寝る時間だからな」
そして出ようとしたとき──。
「ハーイ! そこにいるのはベネットかい? ん? 違うのかい? ベネットと同じ匂いがしたんだけどなぁ……!?」
アメリカンポリスの恰好をした男が、階段の入り口で腕を組んで壁に背をもたせかけていた。
「誰だ、てめえは?」
フハハハハハと彼は笑い、
「ジョーカーズ十三部隊、Nさんだよ。君たちと友達になりたいんだ! 大丈夫! 宗教の勧誘じゃないよ! その剣、欲しいなぁ……」
「嫌だと言ったら?」
Nは高笑いして、
「僕の友だちが嫌だなんていう訳ないじゃないか。そんなことを言ったら僕に殺されちゃうからねぇ!!」
桃介たち三人は身震いした。




