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ベネット遠征伝~女を汚す奴は、許さねぇ!~  作者: 神羅神楽
第九章 小夜~イジワール紳士とオリジン・イヴの剣~
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青年紳士の正体

今後は読者様の負担を軽減すべく一話を短めに投稿します。

──フランス、パリ。

 ステッキを持って新聞を読みながら歩く背の高い仮面を被った、あのホテルで女を抱いた青年紳士。

 彼は表向きは貿易商をやっているのを装っている。


 が、実を言えば。


「今度のターゲットは何にするか……。オークションで5億ユーロで落札されたアジア人画家の油絵……ほう。こいつは面白そうだ。落札者は地主か。どれ、酒場で情報を集めてみるか」


 すると通りがかりの子どもたちが、


「あ、イジワール紳士だ!」

「イジワール紳士! チュロスちょうだい!」


 イジワール紳士とよばれた青年は、にこやかにほほ笑み、ポケットの硬貨をとりだして子供たちに握らせた。


「金は魔法だ。欲しいものになんでも姿を変えてくれる。わかったらこれ持って、おもちゃでもチュロスでも買ってこい」


「イジワール紳士、ありがとう!」


 


 彼の名はイジワール紳士。

 こう見えて、実は世界でも有名な窃盗犯なのである。

 ところがなぜか警察はそう簡単には手を出せない。

 ただ一人、ボルボ警部を除いては。




──アメリカ、ワシントン州。


 ICPOワシントン支部。


 ボルボ警部はイジワール紳士逮捕の計画を練っていた。

 たった一人、地図を広げて。


「コーヒーが冷めますよ」


 そう声をかけたのは、彼の妻であり、警部補のシェリー。


「イジワールの野郎、今度はオークション品に手をつけようとしてるらしい。どうやら日本に来日するそうだ」

「情報が早いのですね」

「当然だ」


 ボルボ警部は冷めたコーヒーを啜る。

 彼の背中は大きく、がっちりした体型が目立つ。


「日本に行くのですか?」

「ああ。奴のいるところならどこにでも行くさ。お前はどうする?」

「私は仕事が残っていますので……」

「まるで俺が暇人のような言いかただが、まぁいい」

「実際暇人じゃないですか。イジワール紳士を逮捕しようなんて、無茶な案件ですもの」

「うるさいな。ま、せいぜい頑張ってコンビニ強盗でも捕まえることだな」

「ICPOに逮捕権はありませんよ」


 ボルボ警部とイジワール紳士は、ほぼ同時に日本へと発った。



──日本、横浜。


 朝比奈第一小学校。


「なぁなぁ? 今度裏山行かね?」

「いいわねぇ。竜一は?」

「まぁ、模試も無事に終わったし、一日だけならいいよ。母さん説得するから」


 裏山には桃介たちの秘密基地がある。

 秘密基地と言っても、大地主の家のことで、桃介は大地主の木林(きばやし)という老人と懇意で、テレビゲームなどをやらせてもらっている。全然秘密ではないのではあるが。

 学校の帰り、桃介は大地主にスマホで電話した。すると大地主は、すごいものを手に入れた、と告げた。

 電話を終えた桃介は、


「また変なもん手に入れたってよ」

「あのじいさん、お金持て余してるから、そういう趣味にいくらでも使っちゃうのよね。あたしだったら札束ばら撒いてボーイズバーでイケメンをはべらすわ」

「僕は……読書でもしようかな……あと勉強も」

「馬鹿野郎竜一! ゲームにポテチこそ小学生の模範じゃねぇか! やるぞ! 新作ゲーム!」


 そうして、終末、三人は学校のフェンスを上り、私有地にこっそり入り、茂った木々の間を抜け、道に出た。

 そこはだだっぴろい山麓がひろがっており、青葉の香りがする。


「何度来てもいいとこよねぇ」


 小夜は伸びをする。


「おーい、よく来たのぅ」

「木林じいさん!」


 山麓の邸宅に、木林家があった。


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