第一幕
俺が呼ばれた異世界はまさに剣と魔法の世界だった。
公園で一人ぶらぶらしていた時、いきなり目の前が真っ暗になり気を失った。
目を覚ましたとき、薄暗い石造りの部屋の魔法陣の上に寝かされていたから間違いない。
おまけに周りのやつらも俺を勇者だと言っていたからな。
こりゃあれか?素敵パワーで無双して、果ては王女様と結婚、さらには王様かも知れんな!
うはっ、夢が広がる広がる!
あ、向こうのひそひそ話聞き逃した。
ま、いいだろ。なんたって俺は勇者なんだから。
あれから三年が過ぎた。
仲間はもう俺しか残っていない。
皆俺を魔王とやらの前に進ませるために、途中で別れてきたから。
確かに皆頼れる奴等だったが、おそらく今頃は…
「ふん、我を前にして考え事とはな。なめられた物よ」
「はん、今の俺にとっちゃあお前でも雑魚みたいなものだからな」
互いに互いを挑発する。
ま、俺が勝つだろうよ。何たって俺は勇者なんだから。
ここは王国の城にある謁見の間、彼らは王に対して報告をしていた。
「……以上が此度の魔王討伐までの全容になります」
「うむ。して、魔王と勇者はどうなった?」
「われわれが魔王城脱出後、しばらくで城が極光により崩壊しました。あの剣の効果によるものかと」
「死体は確認できませんでしたが、あの剣は回収できました」
あの狂った聖剣か。所有者が殺されたとき、所有者の全存在を消費して敵を消滅させるなんざ、どう考えても頭がおかしいだろうに。しかも、
「ふむ、やはり勇者殿は予定通り魔王を討伐したわけですな」
「はっ。お言いつけどおり、一切の女を近づけさせませんでした。あの極光が勇者殿が純潔だった証でしょう」
所有者が童○じゃなきゃならねえとはな。
おまけにこいつら、三年も一緒に旅をした仲間が死んだってえのに冷静そのものだな。
故郷から呼び出され、女と接触もなく、仲間は薄情。
あの勇者もかわいそうなもんだ。
わたしにはおにいちゃんがいます。
いつもやさしくて、よくわたしをかたぐるましてあそんでくれたりします。
でもあるひ、きゅうにおうちにかえってこなくなりました。
きっとわたしがおいしゃさんごっこをいやがったから、おにいちゃんはわたしがきらいになったのかな。
だからさがしにいこうとおもいます。
おにいちゃんのともだちがあんないしてくれるから、きっとすぐにあえるよね。
まっててね、おにいちゃん。
一週間前、妻がこの世を去った。
どうしてこうなってしまったのか。
やはり、息子が失踪してからだろう。
高校生の息子が失踪し、その息子が下着ドロをしていたと知った時も最悪だと思った。
さらに半月後、年端もいかない娘が攫われ、惨たらしい死に方をした時、妻はとうとう倒れた。
あれから七年、結局妻は目を覚ますことがなかった。
神よ、なぜこうも私たちを苦しめるのだ。
なぜこうも、私からすべてを奪うのだ。
もういい。こんな世界に未練などない。
息子はもう死んでいるだろう。
娘の仇もとった。
妻の葬儀も終わった。
娘の仇も殺った。
俺も、逝こう。
「世界よ、くそくらえ!」
俺は、空に身を投げた。




