襲撃
本日三話目。
これで今回は最後です。
その後整備場に行くことになり和宏達はワクワクしながらその道中で会話に花を咲かせていた。
「Fmの整備なんて、楽しみだな!」
「もしかしたら乗れるかもしれないぜ〜」
「Fmの整備か〜、どんな風に整備してるのかな?」
三人できゃっきゃっと楽しそうに会話を繰り広げていると和宏はふと視線を感じたので顔を上げるとそこには銀色の少女が立っていた。
(あれ、何処かであったこと、あるのか?)
その少女を見たときに和宏の胸の中に何か懐かしい、愛おしい気持ちがよぎった。
その気持ちはずっと会いたかったものにあったかのような狂おしい程求めているような気持ちだった。
和宏は顔を伏せ記憶を探りもう一度顔を上げるとそこに少女はもういなかった。
「おーい、和宏ー、早くしないとおいてかれるぞー!」
「あ、悪り、すぐ行く!」
研二急かされたので考えるのを中断する、そして少女が居たところをもう一度見てから考えを振り切るように首を振る。
(気のせい…だよな?)
和宏は先程は杞憂だったのだと自分の中で結論付けて研二達の方に走る。
対して、銀髪の少女は物陰に隠れその胸を押さえていた。
「……なんでしょう、この気持ち…」
その問いに答えるものは誰もいなかった…
「ここがFmの整備場だ」
和宏達に見える景色にはFmがズラーっと並んでおりそのうちの5機程か現在整備を受けている。
「すげぇー!」
「こう見ると壮観だな」
和宏は子供のように目を輝かせFmを見る横で研二は眼鏡をくいっと上げる。
「今ここには稼働できるのが6機、整備を受けているのが5機、出撃中の機体が8機、そして稼働は出来るが動かせないのが1機駐屯している」
「稼働できるのに動かせないってのはどういうことですか?」
「それはおいおい教えるからな、ついて来い」
言われるがまま雛鳥のように浩昭の後ろを生徒達が着いて行く。
…そしてそこにその機体はいた。
その機体はそこに膝立ちの状態でそこに待機している。
他の機体と違うところはその背に大きな"翼"がついたバックパックを背負っているところだろう。
肩にはミサイルが6本かたほうずつに積まれいて、武器が腰に高出力ブレードとプラズマライフル、後ろの方にマシンガンとハンドガンが積まれている。
「これが現在動かすことができないFm、万能型Fm-000フルンティングだ」
浩昭のその言葉の中に入っている単語に和宏は疑問を覚える。
「柳中将、Fmに万能型というものもあるのですか?」
「ああ、ある、万能型はその名の通り全タイプの能力を使える、そしてこの機体には単独長時間飛行ユニットが積まれている、一番の特徴は演算コンピュータ、演算式の発展型、思考式を積んでいるところだ」
「何故そのような機体が動かす事が出来ないのですか?」
「痛い所を突くな…、まあいい、基本Fmはな、奪取などそのような事をされないために声帯認証、指紋認証を採用してるのだがな、先程言ったとおりこの機体に積まれた演算コンピュータ、つまり思考式はな、その名の通り考えることが出来る」
「ということは…」
「ああ、それを逆手に取られてこの機体は"気に入った奴"しか乗せないと言い始めてな」
「そうだったのですか…」
「軍の機体を持ってない奴は全員試したのだがなことごとく駄目だ、なのでこの機体も処理するかどうかという声も上がってきてな誰でもいいから搭乗者が欲しいのだよ」
そこで言葉を切った浩昭は次に衝撃的な言葉を放つ。
「なので生徒諸君にこの機体に乗ってもらおうかと思う」
浩昭の衝撃的な発言の後生徒達は和宏を残して全員乗ったが全て画面にバツ印が出て終わった、そして和宏の番が来る時にその上空には不穏な影が居た。
『こちらデルタ隊、現在基地には稼働Fm約6機、今なら行けます』
『こちらベータ隊了解した、これから降下作戦を開始する』
基地の遥か上空にFmを運ぶための飛行機がとどまっていた、そしてそのハッチが開き隊長格のものは命令を下す。
『投下開始』
その合図とともに開いたハッチから3機の飛行型のFmが降下を開始する。
ワイヤーを飛行機に繋げ減速しながら陣形を整える、雲を抜けるとワイヤーを外しホバー状態に切り替えバックパックの中に入ってるグライダーを展開してさらに降下。
『目標接近、各員戦闘態勢』
地表がどんどん近づく、しかし高いところから減速の為のブースターを吹くとその光を捉えられてしまうので直前まで減速は出来ないのだ。
やがて地表までの距離約100mに近づくと。
『減速開始』
シュボォォォ…!
隊長のその声と同時3機のFmの足の裏から火が吹く。
その時には既にグライダーはしまい込んでおり後は減速するだけになっている。
気合を入れる為に隊長は声を張り上げる。
『これからが本番だ!何としてもあの万能型を破壊するぞ、気を引き締めていけ!』
『『Yes,Siree!』』
ズシンッ!
その掛け声と共に三機のFmの足が重い音を立てながら地面に着く。高所からの落下の勢いを消すため前傾姿勢になりながら進軍を開始する、そしてそのFmが持つアサルトライフルから火が吹く。
『戦闘開始!』
始まりの狼煙が上がる。
敵機Fmが接近する少し前和宏はFmに乗る前の緊張感で深呼吸していた。
「次、俺の番か、やばい緊張してきた!」
「お前には無理だろうな」
「うっさい、俺は絶対にこのFmを動かしてやる!」
緊張して強張った足を前へと踏み出す、するとけたたましい警戒音が収容所の中に響き渡る。
「なんだ!」
その警戒音に浩昭は即座に反応し声を上げる。
『敵機接近、敵機接近、現在稼動可能Fmは直ちに出撃せよ』
「くっ、こんな時に!君達、すぐに奥に避難しろ!俺は出撃する!」
浩昭のその声に生徒達は慌て始める。
「何、何なの!?」
「これ実践演習とかだよな!?」
「と、取り敢えず避難しなくちゃ!」
「あ、あっちだよな!?」
混乱しながらも先生の支持に従い奥に避難し始める、和宏もその波に飲まれながらも必死に走る。
「あうっ!」
「っ!?」
走っていると後ろから沙奈の声が聞こえる、後ろを振り向くとそこには痛む足を涙目で抑えている沙奈がうずくまっていた。
「大丈夫か!?」
「和宏君…!うん、ちょっと捻っただけだから、歩けるよ」
「無理しなくていいから、取り敢えずっと」
「和宏君!?」
沙奈が何故驚愕の声を上げたかというと和宏が沙奈の事を"お姫様抱っこ"したからだ。
「大丈夫だって、ほら行くぞ」
和宏は沙奈を安心させようと微笑むと走り出そうとする。
…その時退路を塞ぐように瓦礫が落ちてくる。
「くっ、これじゃ進めない!」
「いいよ、私は置いて行って!」
「駄目だ!俺は全て守るって決めたんだ!だから、沙奈の事も守る!」
「和宏君…」
逃げる方法を探してあっちこっちに視線を彷徨わせる。
そして一つの希望を見つける。
「…あれなら!」
和宏が見つけたもの、それは…
…Fm、フルンティングだった。
これから盛り上げて行こうと思います。
次の投稿は…出来次第ですけど、5日くらいは空くと思います。