起動
「電圧、油圧ともに正常、普通は動かせるなこれ」
「で、でも、確かこの機体、動かせないんじゃ?」
「そうなんだろうけど、もうこれしかないだろ」
現在和宏達は崩壊した収容所から脱出する為にフルンティング"動かせないFm"に乗っている。
Fmは基本2人乗りになっているので沙奈も問題無く乗ることができている。
「なんでこれ、動かねえんだよ!」
「だから、無理だって他にも方法探そうよ」
何時まで経っても動き出す兆候の見えないフルンティングに和宏は怒鳴り次第にフルンティングのモニターに拳をぶつけて叫ぶ。
「動け、この馬鹿野郎!」
『馬鹿野郎とはなんだ馬鹿野郎とは!』
「へっ?」
「な、何?」
和宏がモニターに拳を当てたまますっとんきょんな声を出す。
しょうがないだろう、いきなりモニターから少女の声のような機械音が聞こえてきたのだから。
『私は少なくともお前のような馬鹿面の奴よりかは馬鹿ではない!』
モニターの中に何故かこちらをしかめ面で指差して来てる少女がいた。
その少女の衣装は電子的な姿で髪をプラグのようなもので纏めていた。
『なんだ、黙って聞いていれば散々好き勝手言いまくって、お前は何がしたいんだ!』
少女の罵りに和宏達は呆気にとられる。
『ん…?お前聞いてるのか!?おい、無視するな!』
「えっと…誰?」
和宏がやっとの事絞り出した声は誰かを問うことだった。
まあそうだろう、フルンティングに乗ってたはずなのにパネルには何故か少女がいるのだから。
『なんだ、そういうことか、私はこの機体フルンティングの意思だ!』
少女改めフルンティングが胸を張ってそう言う。
浩昭にこの機体は意思があると聞いていたがここまでの自我があるとは和宏達は思ってなかったからかやはり呆気にとられる。
「…そうなのか、って、というか!この機体動かしてくれねえか!」
『嫌だめんどくさい』
「なっ!」
『何故動かさないといけないのだ、動かしたいのなら誠意を見せることだな』
「それどころじゃないんだよ!」
『ほう、それどころとは?』
「周り見えないのか!?」
『周りだと…なんだ!崩れてるじゃないか!』
和宏に指摘されてやっと気付いたのか驚きの声を上げる。
「だからお願いだ!動かしてくれ!」
『と言ってもな、私は本来言うところな、機体を動かすことは難しいのだよ』
「なんでだよ!」
『Fmはな、指紋認証などの過程を辿らなければ動かすことは出来ない、つまりパイロットがいなければな』
「なら俺がパイロットになる!だから動いてくれ!」
『ならば問う』
「な、なんだ?」
突然声を低くしたフルンティングに和宏は息を呑みながら尋ねる。
そしてフルンティングは和宏が自分の操縦者になるものに相応しいか確かめるように問う。
『お前は、何を守るために私を、力を欲する?』
その言葉に和宏は考える必要性もないと軽く首を振ると覚悟を決めた表情をして言う。
「大切な者たちを守るために、俺は力が欲しい」
間も開けずにそう言った和宏にフルンティングは少し言葉を失うと可笑しそうに笑い
『間髪入れずに言うとはな、うん気に入った"もう一人の搭乗者"に相応しい、ならば』
モニターのところに手形の模様が浮かび上がる。
『ここに手をかざしお前の名前を言え、それで登録出来る』
言われた通り和宏はモニターに手をかざし自分の名前を言う。
「和田和宏」
するとフルンティングはにやっと口を歪めて。
『登録完了だ』
「おい!すぐ俺のグレイプニルをここに運んできてくれ!」
浩昭は収容所の前で手に持っているトランシーバーに声を荒げている。
「ん?なんだ、もう運んできた?後ろを見ろ?」
言われた通り後ろを振り向くとそこには浩昭専用の機体、攻撃型Fm、グレイプニルがそこに膝立ちでハッチを開けている。
「仕事が早くて助かる」
浩昭は慣れた様子で機体を駆け上がりハッチの中に入り込む。
浩昭が手早くベルトを締めていると後ろから声が聞こえてくる。
「いや〜、仕事が早いと言われて照れますな〜」
「普段からそうしてくれるとこちらとしてはありがたいのだがな、幸成軍曹よ」
「うっ、そこを突かないでくれよ、浩昭」
浩昭に慣れた様子で軽口を叩いてるのは浩昭の機体に乗るもう一人の操縦者、橋本幸成。
「それよりもまずは目標を撃破することが大事だ、気を引きしてめいくぞ」
「はいはい、分かりました、っと、前方、12時の方向に飛行型Fm3機を確認」
「了解、直ちに撃破する」
浩昭はレバーを握りグレイプニルを立ち上がらせて腰についている高出力ブレードを取り構える。
「すぐに終わらせるぞ、子供達がいるからな」
「え?何?浩昭って子供好きなのか…ってそういえば浩昭には可愛い娘が…」
「それ以上言ったらお前をここから放り出すぞ」
「えー!何でさ!」
「いいから口を閉じろ、舌を噛むぞ」
「分かったわかっ!」
浩昭は幸成の答えを聞く前にグレイプニルを走らせ始める。
幸成は舌を噛んだのか涙目になり口を押さえているがすぐに気を引きしめて前を見る。
グレイプニルは手に持った高出力ブレードのトリガーを引きブレードを出現させる。
前方にいる敵機の飛行型Fmは銃の引き金を引き弾をばら撒き始めるが浩昭はブレードを回転させて全弾、熱により爆発させたり溶かしたりして防ぐ。
そしてブースターを起動させると一気に懐に入り込みブレードを斬り上げて手前にいた1機を撃破する。
切断面には人だったものも見えるがお構いなしにそのFmを蹴り倒し追撃とばかりに腕についている収納式75ミリマシンガンを残りの機体に向けて打ち始める。
「くそっ、散開しろ!」
敵機の隊長は残りの仲間に指示を出し浩昭の機体を囲むように散開し始める。
「打てぇっ!」
瞬間、死を体現したかのような鋼鉄の嵐が浩昭のグレイプニルを襲うがそれを浩昭は冷静に対処する。
腰についたもう一つの高出力ブレードを起動してから両手に持ったブレードを回転させて防ぐ。
「今度はこっちの番だ」
浩昭は右のブレードを一旦止めて右にいるFmに近づく、その間も弾丸は止まないが左右にジグザグに機体を走らせながら徐々に距離を詰めて行く。
そして徐にブレードを空中に投げると手の収納庫から高周波ダガーを取り出し敵機のFmの銃身を切り刻む。
そのFmはすぐに対処してワイヤーを射出して浩昭のグレイプニルを固定しようとするがその前に頭上から何かが落ちてくる。
「頭上注意だ」
それは先程浩昭が空に投げた高出力ブレードだ。
刀身を独楽のように回転させながら頭上から死へと誘う一撃をお見舞いされる。
その刀身は寸分たがわずに敵機のFmを一刀両断にする。
「さて、あとはお前だけだな…」
浩昭はFmに食い込んだブレードを機体に足をかけて抜くと無感情に冷静に残りのFmに剣先を向ける。
暫し静寂が訪れる。
そして風がやむと同時に敵機のFmが行動を起こす。
「何!?」
そう浩昭のグレイプニルの胴体に銀色の光を反射するワイヤーが繋がれていたのだ。
さっき1機を撃破した時に繋げられていたらしい。
そして敵機のFmはそれを使い浩昭のグレイプニルのバランスを崩すと飛行ユニットを起動させて空を跳び真上から飛びかかってくる。
「舐めるな!」
浩昭はブースターを起動させてグレイプニルの体を上の方に床との設置面から火花を上げながら反転させて収納庫から高周波ダガーを射出する。
それを敵機は浮遊機雷を射出して爆破により防ぐ。
その稼いだ時間の間に浩昭はグレイプニルの体を起こし高出力ブレードを2本構える。
そしてブースターを起動させて懐に入り込み高周波ダガーを射出しながら高出力ブレードを振るう。
それを敵機は浮遊機雷の爆発により高出力ブレードのプラズマ体を吹き飛ばしたり75ミリマシンガンを使いいなす。
「こいつ、やる!」
浩昭はグレイプニルの右足を敵機にかけて転ばそうとするがその前に浮遊機雷を目くらましに使われて飛行ユニットにより逃げられる。
「きりがないな…」
次で終わりにしようとグレイプニルの高出力ブレードの出力をあげた時幸成が大声を上げる。
「後方!収容所に敵機影、約3機、くそ囮だったのか!」
そう収容所に3機のFmが姿を現したのだ。
その間に目の前にいるFmは片手を上げるとそこを狙ったかのようなタイミングで別の飛行型のイカロスを付けた機体が持っていく。
「くっ、まずはあっちだ、幸成、出力をあげろ!」
「今やってる!」
去っていた敵機には目もくれず収容所の方に走り出す。
あそこには生徒がまだ残ってるのかもしれないのだなので優先事項をこちらに変えたのだ。
そして、3機のFmは銃を構え収容所に踏み込もうとした時何かが煙を切りながら空に舞い上がる。
一辻の線を引きながら空を飛んだそれは空中に停止してそこにいるもの達を見渡す。
それはもう一つの太陽のような銀色に光るFmだった。
バックパックに"翼"が付いていて空にとどまる間常に火を吹いている。
「まさか、あれは!」
浩昭は言葉を失う。
そう何故ならそこに浮いているのは動かせない機体
「万能型、フルンティング…!」
万能型、フルンティングが飛んでいるのだから。
やっと主人公機動かせました。
次の回で本格的にバトります。
どうか、これからもよろしくお願いします。




