第1話 困った体質、馴染めない人間《2》
まぁ…本人に聞いた方が早いと思うのよね……というより、あくまで推測なんだもの。確信はない…だから、今日聞いてみようと思うのだけれど………その選択は正しいのだろうか…ま、今日は本当にイレギュラーな事がいっぱいあったとはいえ、ね?突っ込まれたくない事もあるだろうし…。
「ねぇ…」
「ん?どうした?」
君はいつもと変わらぬ人懐っこ『そうな』笑顔で聞いてくれる。
「……君は、人…人間ってどう思う?」
「なんで、そんな質問するの?」
まだ、へらへら笑ってる。
「私は、君に興味がある。同族なのか…はたまた違うのか…気になったことは、理解しないとすまないたちでね」
「そーだねぇ…俺は、なんとも思ってないよ。興味…は、たぶんある。けど、その興味は普通の人とはズレてる、と思う」
などと言う。それでも、いつもと『寸分変わらぬ笑顔』で言いきった。
「……で、本当は?」
ああ…やっちゃったよ。悪い癖だ。人は嫌じゃないのに、人間嫌いの体質のせいで、いつも他人を疑ってかかる…なんだ、結局変わってない。
彼の様子をうかがう。笑顔が完全に消え去り、一瞬無表情になった後、不適な笑みを浮かべ…
「全くもって興味の欠片もない。感情じゃなくて、理性で動いているんだ、俺は。だから、人間はあくまで観察対象……こんな所にくる意味とかほとんどねぇよ」
…予想はしていたものの、結構キツいモノ隠していた彼のドス黒い裏面を見せつけられたショックのような、なにかが私を止めた。
「…なーんて、言ったら信じる?」
あれほどえげつないモノ見せときながら急に、ころっと軽いノリに戻るんだから、何が本当なのかを見抜けない。
「信じるかは、わかんないよ…ただ」
「ただ?なに?」
「ただ…本当の君を見てみたかった、確認したかったんだよ。私の関係性」
「…………………」
珍しく黙りこくってしまった。まぁ…彼はこんな奴なのだ。で、私は…もういいや。今日は疲れた。
「帰ろっかな…」
「お!帰んの?」
「帰るよ?めんどくさいのに絡まれるし…疲れたのよ」
適当に放置していたカバンをとり、帰ろうとする。
ドアを開けるとそこに
「……あ」
せんせーが居た。なにしてんの?
「なにしてんの?」
思ったことがそのまんま口に出るくらい驚いたらしい。
「いや…入るタイミングなくて…」
「んじゃ、帰るとしますか…っと、あれ?せんせー、どったの?」
「ちょっと、お願いがあってね」
「嫌です」
速攻で断った。なんかやな予感がする。
「言わせてくれよ…」
「せんせー、もう帰っていいすっか?」
彼も早く帰りたいようだった。
若干涙目になっているせんせーが…
「……でだな、そのお願いなんだが…問題児を何とかしてほしい」
「だから、嫌です」
「何とかってなんすか?なにすりゃいいんです?」
彼は割と食いついていた。趣味、人間観察って言うような男だからね…この人。
「とにかく、問題児…狐衣詩を何とか矯正してほしい」
寒気がした。今一番聞きたくない名前だった。
「なんで私たちが、そいつを?」
心なしか声が凍てついていた。
「教育指導の先生が投げ出して…それで、オレにお鉢がまわってきたんだ」
「へぇー…で、なぜ私たちが?」
「オレが頼れるのはお前たちしか居ないからだ」
「そんなドヤ顔で言われても…」
彼が私の思いを代弁してくれた。
「はぁ…で、何をすればいいんです?」
「それは知らん」
無責任すぎる…どうしろと…。
「まぁ…明日から、観察しつつ…問題点を探していくか」
「わかったわ…君、よろしく」
肩をポンと叩くとキョトンとした顔になる。
ちょっとかわいいと思った。
「へ?なんで?お前、同じクラスだろ?」
「…そう、だけど…」
「なに?なんかあったのか?」
「別に…絡まれただけよ」
「そっか…不良なのかな」
「さぁ?」
「せんせーを放置しないで…」
しょぼくれたせんせーは早くお嫁さんを見つけてください。
「とりあえず帰ろっか」
2人で帰る帰り道今日はどっちからかえるのかな?