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間違いからの第2人生  作者: ふぅみき
24/40

24 王宮廊下での疑惑

「ごっ誤解です!とんでもない誤解です!ちょっと止まってください!」


「五階も六階もねえ!ここは一階だ!てめえは黙ってあたしらについてくりゃいいんだ!」


「そうですそうなのです!大人しくしてるのです泥棒!」


 ダメだ意思の疎通ができない!同じ国の言葉で喋ってるはずなのに意思の疎通ができない!完全なる冤罪だぞバーロー!


 心の中で悪態をついていると少女とは思えない力でズルズルと引っ張られる。両腕をがっしりと掴まれているものだから身じろぎすら難しい。てかおい、私絶賛男装中だよ?周囲からみたら少女にひこずられる騎士の図だよ?これでいいの私!そして君たちもそれでいいのかい少女達よ!嫁ぎ先が無くなるよ慎みを持とう!どこで誰が見ているか分かんないんだから!


 まあここに人が通りかかる気配はこれっぽっちもないんだけどね!


「ほんとうに嘆かわしい!ヒグレリア国がこんな盗っ人の侵入を許すような甘い警備をしていたなんてな!」


 口の悪いほうのお嬢様がわざとらしく首を振る。


「全くです!最悪です!論外なのです!」


 ぷんぷんと擬音が聞こえてきそうな顔でお怒りなご様子。そこで思わず口を挟んでしまう。


「んー論外なのはキャッチボールのできないお嬢さま方のほうでは?」


「なんだと!?」


「なんですって!?」


 てへっ。誤魔化すように笑ってみるけど時すでに遅し。ついイラッとして言い返してしまった。警備している騎士隊が馬鹿にされたからって…つい。


「貴様、あたしらを馬鹿にしているのか!」


「ほんとです!最悪です!私達を侮辱した罪は重いです!不敬罪なのです!」


 はいこの通り。益々話がぶっ飛んだ。


「いやそんな侮辱なんてとんでもとんでも。…不敬罪?」


 あ、れ、そういや、この少女達かなり上質なドレスを着ていらっしゃる…?まじで?このパターンどっかでやったぞ?


「もちろんなのです!ヘコイルト国の公爵令嬢を馬鹿にしちゃったんですから不敬罪なんて当然なのです!」


 なるほど。公爵令嬢でしたか。へコイルトなら、妖精王女さま関係かな?


「はっ。心配するな。貴様はその前に窃盗の罪で裁かれる。気楽に後悔してるがいい」


 さて、どうしよう。この会話ができない少女達にどうやって言葉を投げようか。…もういっそ逃げてしまいたい。


「ふん、やっと黙ったのです!最初からそうしてほしかったですのこの泥棒!」


 あー誰かに似てると思ったら…この公爵令嬢、あの義妹にそっくり。この喋り方といい、プライドの高そうな感じといい。うん、どこの公爵令嬢も似たようなもんだな。もう身分制度廃止にするべきじゃない?


 なんて私の精神状態が末期に突入し始めた頃。


 抱きつきたくなるくらいのナイスタイミングで後方から声が聞こえた。






「あれ?シャロン?女の子侍らせちゃってなにやってるんすか」






「ショドウェイ先輩ぃいいいっ!待ってましたー!」


 一瞬ぶん殴りたくなるような単語が聞こえた気がしたけど気にしないでおいてあげます!

 両腕を無理矢理くねらせながら後ろを振り返り肺に空気を流し入れて、目一杯叫ぶ。


「ってことで助けてください!」


 目を剥いてびっくり顔を晒した先輩。遠い目をしながら持っていた本を掲げてため息をついた。


「…また面倒事起こしてるんすか…ほんっと、どいつもこいつも…」


「ちょっ!違います!多いに違います!私が起こしたんじゃなくてこのお嬢さま方が!」


 馬鹿なんです!

 と叫びそうになったところで隣から抗議の発狂が上がった。もう一度言おう。発狂、である。


「貴方っ!その格好、ここの騎士隊じゃありませんの!?このような泥棒と知り合いですの!?」


「は?」


 あ、ショドウェイ先輩の目が死んだ。


「シャロン…俺は忙しいんすよ?ねえ、なんでこんなアホそ…オツムがよろしくなさそうな少女の相手をしなくちゃならないんすか?必要ないっすよね?ないっす。それではさようなら」


「だぁああっ!まっ!逃げるなぁっ!」


 アホをオツムよろしくないに言い換えても同じですから自己完結しないで!それに先輩がいないと私はこれより更に面倒事へダイブすることになるんですよ!助けて!


 体をひねりにひねって先輩へ全力の眼力を飛ばす。うん、あの目はきっと私の意図が届いた目に違いない。さあ助けろ。嘘です助けてください。


「…話が見えないんすよ。最初から、説明を」


「それがですね、このおじょ、ぐえっ」


「説明なんていらないだろう。さっさと連れて行くぞメアリー」


「はいですのお姉さま」


 おっ、まっ、ちょっ、締まってるぅっ!いい角度で首の内角エグれてる!やめてせめて腕を持ってなんで首を掴むかなぁっぐぅぇ!


「シャロン、君のお得意の魔法は?」


「つっ、かえ、なっ」


「それはまた何で?」


「けっか、い、ロイド、じっいさっ」


「王宮全体のやつのっすか?あれ、シャロン結界破れたっすよね?」


 なんで知ってるんだ…!ってそうじゃなくて、私あれ途中までしかできませんからね。それに、それだけじゃなくて、


「そ、れとっ、たぶんっ、ほぅせきっ」


「!」


「!」


「宝石?ってなんの宝石すか?それのせいで魔法が使えないんすか?」


「そうぅ、ネックレぐぇえええっ」


 ギリギリギリッ


「うるさいですの!お喋りはこの後の尋問で結構ですの!」


「余計な口を開くな!」


 待とうっ!取りあえず目に光を灯して助けようショドウェイ先輩!キラキラ笑顔だけど死んでるから目!アリデライ部隊長みたくなってます!


「…じゃ、その尋問、俺も付き合いましょうか」


 あ、トーンが上がってない。断定ですか。じゃなくて、え?おかしくないですか?この流れで普通付き合うって単語出てきますか?おかしいですよね!?


 というか先輩、目が死んだまんまキャラが崩壊しかけてませんか?口調が変ですよ?いつもなら「付き合うっすよ」ですよね?ーーーいつものショドウェイ先輩カモンヌ!


「良いわけないだろう!焦らなくてもお前には後で処分が下る。なんたって泥棒とよろしくやってたんだからな」


「ですの!静かに部屋にお戻りなさいなのキラキラ眼鏡」



「…………………殴られたいんだ?」



 あぁぁあああああっ!!!!!!

 せっ先輩がぁっ!キャラがぁっ!ちょぉっ!

 猫!猫早く被り直してっ!

 いくら言葉が通じない異世界人相手だとしても女の子なんだから殴る発言はまずいですって!!


「おっ、前!なっ、なっんて口を!!」


 あぁ怒り心頭で、顔面真っ青じゃないですかこの少女たち!そんな暴言聞いたこともないと思いますよ公爵令嬢だったら!


 箱の中の少女には相当な衝撃だったろうその言葉に、首の拘束が緩んだ。


「最悪!最悪ですの!!ほんっとうに頭にきましたですの!いくら顔が良いからって…所属と階級を述べるですの!」


「所属と階級?軍隊かなんかと勘違いしてないっすか?ですのですの耳障りなんすよクソガキ」


 ヒッ!

 キラキラ笑顔で目が死んでるのに口調だけ戻った!だけどさらに毒が盛られた!ダメだよこれ先輩ガチギレだよなんでだろう何がそんなに琴線に触れたんだ…!


「…よろしいです、わかったですの!貴方は今すぐに!ここで!処分して差し上げますですのッ!!」


 ダン!と足を鳴らしながら風魔法の詠唱をはじめた、メアリーと呼ばれていた少女。

 しかし最後の詠唱が終わるとバチィンッと弾かれた音がし、魔法は発動されなかった。


「あっ忘れてたですの!ネックレスがあったですの…」


 ふむ、やはりあのネックレスのせいで魔法が阻害されるのか。じゃあネツラリオンで間違いないかな。色もまんまだし。


 というか、それ、ポロッと口に出しちゃダメなのではないだろうか。


「おい馬鹿…っ!それを言ったら…!」


「あっ…!」


 (やっちゃったー)というようなお顔を晒したお嬢様方。うん。だよねえ隠さなくて大丈夫なわけないよね。でもお姉さまもその反応はダメだと思うんだ。「その通りです」って言っちゃってるようなものだ。


 この子達ちゃんと社交界で生きていけているのだろうか、と少し心配になった。



「ネックレス……まじすか…!」



 廊下に響く悲鳴じみた声。その声の主の方を見ると、一心不乱に手元の本をめくっていた。

 パラララララ

 パサッ

 本の中から出てきた一枚の紙。それを凝視しながらショドウェイ先輩はこちらへ声を飛ばす。


「シャロン!その子達、俺の見間違いじゃなかったらへコイルトの公爵令嬢だったと思うんすけど!」


「へ?そ、そうです。よくご存知で…」


「レサカタン公爵の長女、ルナリー様と三女、メアリー様で間違いないっすか?」


 私から隣のお二方へ視線を移す先輩。一応聞いてはいるみたいだけど、その態度は確信を持っているように見える。


 二人の少女は、相手が自分たちの身分を認識したからか僅かに緊張していた肩を緩ませ、強気な態度を示す。


「ふん!それがどうかしましたかですの!今さら謝罪したって遅いですのよ!」


「貴様の不敬な対応はしっかりヒグレリア国王へ抗議しておく。お父様にもご報告だ。その首に刃が突き立てられないよう祈ってるんだな!」


 おーすごいすごい。虎の威を借るなんちゃらって言葉があったけど、ここまでドヤ顏できるってのはさすがにちょっと恥ずかしい。


 ショドウェイ先輩の方に顔を向けると、彼もまた可哀想な子を見るような目でお嬢様達を見つめていた。


「ああ、はい、そっすね…小国の公爵令嬢ごときに抗議受けても国王は一笑するだけだろうし、兆が一なんらかの処罰がくるとしても部隊長のほうで潰されると思うっすけど…まあ、頑張って下さいっす。それより、君たちの身分に間違いがないなら─────」


 一区切りおいて疲れたため息を吐いた後、握りしめていた紙をくしゃくしゃに潰してから言葉を続けた。


「────君たちが持っているのは、ネツラリオンでできたへコイルト国の秘宝【神の奇跡】と呼ばれるネックレスで、君たち二人を此処へ送りシャロンを捕まえるようし向けたのも、へコイルト国のお姫様…カルレーナ第一王女っすよね?」


 眼鏡の奥で鋭くなる眼光。


 両隣から、息を呑む音が聞こえた。





ポイント評価ありがとうございます…!

スピードアップ頑張ります。



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