表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人外だらけの世界に飛ばされた人間様御一行の記録  作者: 南野


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/57

第五十七話 不安事


 ブレイクやノーザイのやり取りを見ていた階直かいじきたちは、ブレイクたちに何があったのかは知らない。そのためせきのぞいた、自分たち人外が彼らに危害を加える可能性がある、そう思われていると考えた。


「? なんかよく分からないけど、キミたちに危害を加えるつもりは一切ないよ。人外や人間関係なく、手伝ってくれる相手にそんな無礼な事するわけない」


階直かいじきは頭にハテナを浮かべるが、すぐにブレイクたちをしっかり見ながらそう答えた。

 彼女の言葉に続いて、せき詩色しいろも同じように心配しなくても良いと伝える。


「そもそも、人間の俺がこうして普通にいるんだから、それなりに信じていいですよ。二人はそんな野蛮やばん方達かたたちじゃないですし、争い事は好まないので」

「わしはわしの事が好きなやつが好きだからの。わしの事を嫌わんかったら、何もするつもりはないぞ」


せき詩色しいろの声音から、それは本心から言っていることが分かる。

 『カコデモニア』には人間を良く思わない人外が多い。しかしそもそもの話、そういう人外はわざわざこの『デルテのやかた』に来たりしないだろう。

コーネダリスや和凪かずなぎたちのように、目の前の三人が人間に危害を加えるつもりがない、というのはブレイクたち全員が理解している。


「まぁ、そちらさんがどうこうと言うより、他の要因が心配なんだよな……」


 棚部たなべは小さな声でそうこぼした。

 階直かいじきたち本人が言うように、依頼をしてきた三人に対して、ブレイクたちはそこまで警戒はしていない。しかし棚部たなべが言うように、階直かいじきたち三人は大丈夫でも、道中や町中で別の人外と何かが起こらないとも限らない。そこが心配になるのは、ブレイクも同意見だった。


 棚部たなべやブレイクが迷っている顔をしている中、広岡ひろおかはソファーのひじ置きにひじを置いたまま片手を上げた。


「ごめん、僕は今回パス。本当は行きたいんだけど……ちょっと無理そうだから、みんなで行ってきてよ」


そう言った広岡ひろおかは少し顔色が悪く、顔も若干じゃっかん引きっている様に見えた。もしかすると体調が悪いのかもしれない。

 そんな広岡ひろおか一瞥いちべつした棚部たなべは、ブレイクや白金しろがねに自分も行けない事を伝える。


「俺もちょっといそがしくてな。今回の件、お前らだけでも大丈夫そうか?」


 棚部たなべ広岡ひろおかが行けないのは少し不安ではあるが、別に敵陣に乗り込む訳でもなく、難しい問題を解きに行くとかでもないため、ブレイクとノーザイと白金しろがねは顔を見合わせてコンタクトを取った。

そして白金しろがねが代表して、親指を立ててウインクをしながら、棚部たなべに大丈夫だと伝える。


「大丈夫やで。何かあればすぐに連絡するわ」

「それじゃあとりあえず、四人で行くってことでいい? あ、サフィナにも後でちゃんと聞くよ。その結果、四人から三人になるかもしれないけど」


ノーザイがそう言いながら、階直かいじきたちの方を見る。

 サフィナと桜音さくらね姉妹は、コーネダリスたち三人外と一緒にリビングで待機している。そのため、サフィナにはまだ聞けていない。ブレイクは「後ですぐに聞きますので」とノーザイの後に付け加えた。

 彼らの言葉に、棚部たなべ階直かいじきたちを見ながら伝える。


「あぁ、多すぎても邪魔になりそうだしな。彼女たちが大丈夫なら、俺もそれでいいと思うが」

「問題ない。むしろ三~四人も来てくれるとは思わなかったから、正直ありがたいよ」


そう言って、階直かいじきは初めて微笑みを見せた。依頼主である彼女が良いと言うなら、とりあえずは問題ないだろう。

 階直かいじきの隣で静かに座っていた詩色しいろが、あごに手を当てながら、糸目のまま軽いドヤ顔で話し始めた。


「なら案内せねばなるまい。わしが案内してやろう」

「いやいや、ボクが案内するよ。論祢ろんねを先頭にすると日が暮れる」


意気揚々と言った詩色しいろに、階直かいじきはペシッと軽く手を当てながら、彼の提案を一瞬で却下きゃっかした。

 そして、階直かいじきが出した提案の方にせきが乗る。


「俺も綾美あやみちゃんに賛成ですね」

「二人して酷いぞ。わしが信用できんのか」

「だってキミ方向音痴ほうこうおんちじゃん。これまで何十回なんじゅっかい……いや、何百回なんびゃっかい道に迷ったか忘れたの?」


普段以上のジト目で階直かいじき詩色しいろを見る。方向音痴ほうこうおんちと言われた詩色しいろは、いやいやと首を横に振って、不服そうな顔と声で階直かいじきせきの言った。


「わしが方向音痴ほうこうおんちなんじゃなくて、わしに合わせられない方角ほうがくに問題がある」

「何を言ってるんですか?」


 よく意味の分からない事を言う詩色しいろに、せきは意味が分からないという顔で彼にそう言った。そして階直かいじきも「は?」と言ってそうな顔をして、詩色しいろにジト目を向けていた。


 階直かいじきたち三人がそんなやり取りをしている間に、ブレイクはサフィナを呼んで来た。ブレイクは粗方あらかたの事情をサフィナに話す。

 話を聞いたサフィナはほんの少し悩むが、すぐに笑みを浮かべながら承諾しょうだくした。そしてブレイクに「ありがとう」と小さな声で伝えた。

 そんな兄妹のやり取りを見ていたノーザイは二人の近くに来て、ブレイクに対して「良かったね」と笑顔で伝えた。ブレイクは少し視線をらしながらも、小さく「あぁ」という返事をノーザイへ返した。


 そうしてブレイクとノーザイが話しているあいだに、広岡ひろおかがソファーから立ち上がってサフィナの元へ向かっていた。


「サフィナちゃん」

「はい、どうしました?」

「これ渡しとく。大丈夫とは思うけど念のためね」


そう言って広岡ひろおかがサフィナへ渡したのは、実験場に行く時に百花ももかにも渡していた、コーネダリスが作った簡易かんいシールドが張れる魔法道具だった。

 それを見たサフィナは目を何度かまばたきをして、広岡ひろおかと魔法道具を交互に見ながら、これを渡してきた彼に思った事を聞いた。


「えっと……これはなんですか?」

「あれ、そう言えば知らないんだっけ……? じゃあ簡単に説明するよ」


 広岡ひろおかはサフィナに使い方を説明し始めた。

 その様子をブレイクはじっと見ていた。やはり、いつもの広岡ひろおかより元気がないように見える。それだけじゃなく、なんとなく違和感を感じるような……と思っていたら、広岡ひろおかと視線がかち合う。

 ブレイクは少し驚くが、広岡ひろおかは人差し指を口に当てて、しーっというジェスチャーを取った。その時の彼の顔は、あまり見たことない、困ったような表情だった。


 サフィナへの説明を終えた広岡ひろおかは、棚部たなべに何か一言伝えてすぐに「じゃあみんな気を付けてね」とだけ言って、そそくさと応接室から出て行った。

 先程よりも顔色が悪かったので、やはり体調が優れなかったのかもしれない。

あの人、体調とかくずすんだな……とブレイクは少し思った。そしておそらく、広岡ひろおかはそれを隠そうとしている。

出る前に棚部たなべと何か話していたので、きっと棚部たなべは気付いているし知っているのだろう。彼が付いているのなら、ブレイクがそこまで心配する必要はなさそうだ。


 そして階直かいじきの家に行くための準備を終えたブレイクたちは、玄関の前で見送りをしてくれる棚部たなべたち三人に顔を向ける。


「ほな行ってくるわ」


 白金しろがね徳札とくさね高峰たかみねに手を振って言った。二人は互いに視線を合わせた後、少し微笑んで白金しろがねに言葉を送る。


「はい、行ってらっしゃい。気を付けてくださいね」

「何かあれば、その無線機で連絡してくれ」


二人はその言葉の後も、あーだのこーだのと言ってくる。

それらが心配からくるものであると、白金しろがねはちゃんと分かっている。だから白金しろがねは、はにかみながら笑って一言答える。


「も~、分かっとるって」


 そんなやり取りをしている白金しろがねたちの横で、棚部たなべはブレイクたち三人に話し掛ける。

 サングラスで分かりにくいが、棚部たなべがブレイクたちを心配しているのが伝わる。


「……大丈夫だとは思うが、一応気は緩めるなよ。どんな時でも油断はするな」


棚部たなべにそう言われ、ブレイクとサフィナは強く返事をするが、ノーザイはいつもと変わらず「はーい」と軽い返事をした。

 ブレイクたちは庭にある小さな噴水の近くで待たせている、階直かいじきたちの所へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ