4.全ての始まり 4
途中から視点が第三者に移行します
私はココオン・フォン・アコルデ。システル王国アコルデ公爵が長子にして次期アコルデ公爵。
そしてわたしは金倉真由美の記憶を持つ転生者。
私のお父様はわたしのお父さんで。
わたしが小さい時に死んじゃったお父さんはお父様になっていて。
お父様は私に自分の力を譲渡することで私を逃がそうとしている。
自分の力を譲渡したことによってお父様の戦力は激減。
「なん…で?なんでなの、なんで今なの!やめてお父さん、お父様。嫌だ死なないでまって行かないで…!お父様、お父さん!」
「ココオン…ごめんね。これはわたしと公爵の約束。少しの間、眠ってて」
そして、首筋に強い衝撃があり私の意識はブラックアウトした。
***
「迷惑をかけるな、サラマンダー」
「構わないよ。契約者の存命はわたしの優先事項第1位だからね。それより…いいの?」
「ああ、いいんだ。それに私が死んだら自動的にこの『精霊剣アコルデ』は次の所有者、つまりココオンの元に転移する。何も問題はない」
「そうじゃないよ。本当にここで死んでも構わないのかってことだよ。君の前世は短命で、もう一度娘を守りたいって転生したんじゃないか。歴史を繰り返してどうするんだ」
「娘に命の危機が近づいていたら守るのが父親の役目だ。だから頼んだ。ココオンも、この国も」
「大精霊の名にかけて約束は守るよ」
ありがとう、そう口の動きをしたあとアコルデ公爵は敵の中に突っ込んでいった。
魔力やスキルを失ってもその剣技は変わらぬもので、1人また1人と敵を打ち倒していく。
けれど徐々に追い詰められていく。理性を失った操り人形には痛覚などない。いくら斬っても向かってくる。その生理的な恐怖とも戦いながらアコルデ公爵は剣を振るう。
(ごめんね、ココオン。自分の父親の死を見届けさせてあげられないのはわたしのエゴ。生きていて欲しいという願い。けれどわたしにはこいつらを倒すことはできないんだ)
「さようなら、アコルデ公爵。あなたはわたしが知ってる世界で1番いい父親で世界で1番1番ひどい父親にそっくりだ」
サラは小さくそれをつぶやき、ココオンを魔法で浮かべ窓から王宮を脱出した。
そのつぶやきが届いたかのように、アコルデ公爵はふと笑みをこぼした。
その日、システル王国は2人の賢者を失った。
1人は国王、ジーク・システル。
もう1人は公爵、エレステア・フォン・アコルデ。
お父さんの名前がエレステアです。誰?とか思わないであげてください。
次話も第三者視点は続きます。主人公気絶してるからね。