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第9話 リジーの告白

「人間族なんですよね?」

「ああ。遠藤雄飛、17歳。どこにでもいる高校2年生男子だ」

 と俺。

「ならこれはどうですか?」

 アスカが何かを呟きながら俺の手を握った。


「手、冷たいな」

 ひやりとした感触が心地よい。

「それだけですか?」

 不満げなアスカ。

「うーん、そうだな、彼女いない歴更新中の俺にとって、女子の手を握る行為は多少の興奮を伴う」

「多少? これでも」

 アスカがぎゅっと俺の手を握る。


「あ、少し興奮。なんか恋人同士みたいだ」

「……少し興奮程度?」

「全然何ともない」

「すごくえっちなイメージ送っているのですよ?」

「うーん。何も感じない」

「こ、これならどうですか? ……はあああああ!」

 と、アスカが気合いを入れて催淫する。


「アスカさん、もういいよ。手が痛い」

「ありえません。魔族で魔法力無効(キャンセレーション)固有技能(スキル)を持っている者でも、この催淫には勝てないのに! なんで?」


 ドラゴンが意地悪い顔をして俺に近づいてきた。

「残念だったね、ユウヒ」

「何がだ?」

淫の血統(サキュバス)の催淫と淫夢は最高にえっちなんだ。聞いた話では、もう、本物の女性では満足できなくなるらしいよ。そんな淫夢魔法を君は体験できないんだね。魔法力無効(キャンセレーション)だから」

「みたいだな」

「おまけに魔族よりも人間族の方が快感が強いらしいよ。人間は魔法が使えないから魔法に対して敏感なんだよ。あー惜しいな-、せっかくの淫夢が体験できないって!」

 ドラゴンがクック、と笑った。


 ハッ! 悔しくなんか……ある!


 リジーが話しかけてきた。

「……見たでしょ?」

「ん? 何を?」

「……さっき。パンツ脱いだとこ」

 リジーは耳まで真っ赤だ。

「あ、ああ、そうだな、うん。いや、ほとんど見えなかったぞ。本当に」

「嘘だもん。パンツ脱がされて、羽交い締めにされて……見えないわけないもん」


 ……まあ、そうだな。すこしだけ見えた。しかし、どう返事したものか。


「……お嫁に行けない」

 リジーが泣き出した。

「お嫁に行けないよ……あんな姿、旦那様以外には見せちゃだめって、お父様に厳しく言われているのに、お兄ちゃんに見せちゃった……もうお嫁に行けない……」

「いや、そんなことないだろ……」

「バカバカ、リジーのバカ! パンツ脱がされるなんて! わーん」

 リジーが泣き崩れた。


「泣かないで、リジー」

 ドラゴンが慰める。

「そうですよ、エリザベス様。魔族ならまだしも、見たのは人間族なんでしょ? 問題ありません」

 なんかひっかかるな、アスカの言い方。

「関係あるもん! うわーん」

 リジーは泣き止まない。


 アスカが俺をキッと睨みつけた。

「あなたに催淫魔法が効けば、エリザベス様以上の恥辱を与え、エリザベス様の名誉を守るのに」

「その理屈はおかしいだろ? リジーのパンツ剥ぎ取ったのは俺じゃない。デヴィだ。あいつが悪いんだ。ていうか、そもそも最初にデヴィのパンツ脱がしたのはリジーだぞ? 自業自得だろ?」


 リジーが「ひっく、ひっく」としゃくり上げながら俺に話しかけた。

「……責任とって、お兄ちゃん」

 下を向いたまま、俺の手をぎゅっと握る。

「責任? デヴィ探して、デヴィのパンツでも脱がすか?」

「違うもん……」


 リジーが俺の目を見た。


「お嫁さんにして。お兄ちゃんの」

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