時折痙攣するだけの肉片
樹は、『コディ』の光学センサで、レヴィーンの足跡を追った。
足跡は、画像的には色調の乱れで解析ソフトに検出された。自分の体を外部から操作する違和感は相変わらずだけれど、とくべつ不便を感じる要素はない。不測の事態にも対処できそうだった。
足跡は墓地で途切れていた。付近を走査すると、墓石のあたりに、体温の痕跡があった。
温度差のシルエットは、何人かの大きな人間が、小さな人間を組み敷いているパターンだった。
胸が悪くなった。頭の中を不吉な想像が渦巻いた。
複数の足跡は、墓石の間を縫って進んでいた。本当であれば、コディを先行させて遮蔽物にするところだけれど、それでは自分の視界がなくなってしまうので先に立って進んだ。
足跡は、ある建物の残骸に向かっていた。それはかって遊牧民が使用していた、テントを快適にするための石積だ。
丸い石を積んだ壁は、そのほとんどが崩れ落ちていて、二方の壁だけが、かろうじて残っている。
最初に見えたのは、白い足だった。岩だらけの地面には、長靴とズボンがくっついた形の、防護服の下半分が転がっていた。
白い両足を広げた状態で押えている男が二人いて、その間で覆いかぶさっている男がいた。
レヴィーンは顔を背けて、声を殺していた。
それを見た瞬間、全身の血が沸騰した。
見張りに立っていた男が、小銃の銃口を樹に向けた。
コディが、銃口と樹の間に割って入った。チタニウムとタングステンの積層装甲に銃弾が跳ね、青い火花が散った。
「武装選択対物戦闘――」
樹が呟くまでもなく、腹部から六銃身のモーター駆動機銃がせり出した。人間には強力すぎるその武器を、コディは見張りの男に向けた。
精密射撃を意識すると、コディの視野画像には十字線が表示された。
銃撃の意思と照準位置を明らかにすれば、実際の射撃プロセスは自動化されている。
コディの腹部上面に懸架された機銃は、見張りの男を腹部から両断した。
足を押えていた男たちは、足元の小銃に手を伸ばした。
その腕は、もう目標指示されていた。男たちは血の噴出する切り株を凝視しながら絶叫した。
呆然としている、レヴィーンに覆いかぶさった男の頭部も、すでに照準目標だった。
一瞬の斉射で、頭部が消え去った。連続して着弾する弾丸のエネルギーは、男の体をレヴィーンから引きはがした。
腕から流れる血を止めようとしながら絶叫する男たちを、樹は、時折痙攣するだけの肉片に変えた。
機関部の過熱警報でモーターが停止するまで、樹は銃撃を止めなかった。
ようやく、射撃が止まった時、樹はレヴィーンの悲鳴が聞こえないことに気がついた。もしかしたら、ひどい怪我をしているのではないかと思った。
「レヴィーン!」
「来ないで!」
レヴィーンは泣いていなかったし、取り乱してもいなかった。
「お願い、こっちを見ないで。だれか、他の人を呼んで……大丈夫、怪我はしてないよ、でも、しばらく隔離だね」
血に汚れた横顔が見えた。
「殺すことなかったのに……」
レヴィーンは悲し気に、足元に散乱した肉片を見下ろしていた。




