表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/87

オイタにはお仕置き

 アリシアは、爪の裏側がかゆいような苛立ちで、爆発寸前だった。

 教育もない、未開の部族でもあれば、彼らには何もわからないんだから、と許せたかもしれない。

 でも、この連中――難民キャンプ自警団をなのるチンピラたち――は、キャンプで育ったとはしても、先進国の援助でちゃんと教育を受け、文明人として生活するべき人間だ。


「スリルが欲しいのなら、戦場へ行って自分の命をかければいいのに」


 アリシアのつぶやきに、カイトが応答した。


「自分は命をかけているみたいな口ぶりだな、アリー」

 カイトの皮肉が、アリシアの胸をちょっとだけ引っかいた。


「あんただって、体は快適な椅子の上でしょ。べつにスリルが欲しくて【ピクシー】を着てるわけじゃないし。なに? ケンカ売ってんの?」

「リスクを払わずに、スリルを求めるのは卑怯か?」

「ああ、なぁんだ、そういうこと。気に障ったの? 謝るわ。 卑怯者よばわり(・・・・・・・)してごめんなさい」

『二人とも、任務に集中して』


 キオミのが割り込んで、言った。


「……了解」


 あ、ハモっちゃった。


 岩の影から現れた男たちは、三人だった。

 その男たちは、援護のつもりだろう、カラシニコフをアリシアの【ピクシー】に点射した。アリシアの感覚野には、着弾の衝撃と、装甲に跳ねる銃弾の火花と音が伝えられている。でもいくら貧弱な装甲とはいっても、戦闘車両である【ピクシー】の装甲に、小銃でダメージを与えるのは無理だ。


『アリー、もう、二人』

「わかってる。むかつくわ、こいつら」


 その派手なパフォーマンスは、他の二人が背後へ抜けるための伏線だ。

 アリシアは攻撃には構わず、駆け抜けようとした二人を、粘着弾で地面に縫いとめた。酸素と反応して硬化するゲルが、即座に化学反応を始めて行動の自由を奪う、アリシアは一瞥をくれて、ちゃんと呼吸ができる状態かどうかだけを確認した。

 男たちはゲルを引き剥がそうとしてジタバタしていた。


 もとの三人に向き直ると、男たちは小銃を捨てて、両手を上げた。男たちは顔の半分を布で隠していたけれど、目元でニヤニヤしているのがわかった。

 ハルシオンは交戦の意思がないものを攻撃できない。それを知っているのだ。


 トルコ政府は、難民の揉め事で、自国の法的な慣習を引っ掻き回されたくないと思っている。人を殺してでもいない限り、引き渡しても、おざなりな取り調べ、短期間の拘留、何十日かの懲罰的労働で難民キャンプに帰される。そんなのバカンスとそれほど変わらない。


 アリシアは、兵装を粘着弾からゴムスタン弾に切り替え、ニヤニヤする顔の真ん中にお見舞いしてやった。

 折れた歯が飛び散るのが見えた。いい気味だ。


『アリー……』

 キオミの咎める声が届く。


「殺してないわよ。オイタにはお仕置き……普通じゃない?」


 五人ほどが駆けてゆくのを、視界の片隅にとらえた。アリシアは無人機ドローンの【ファハン】を飛翔させた。

 【ファハン】は自動車用タイヤほどの大きさをした、ダクテッドファン形式の、無人飛行端末(ドローン)だ。半自立操縦で動かし、死角にいる目標の様子を観察したり、時には搭載した不可視レーザーで座標を取得したり、間接照準したりできる。

 アリシアは、【ファハン】のカメラで、上空から男たちの様子を監視した。


「トラッシュ、そっちへ行ったわよ」


 静かなので寝ているのかと思ってたけれど、トラッシュはちゃんと応答した。


「確認した。なあ、アリー。これつまらないよな」

「そうね、つまらないわ。ほんと、いろんな意味で」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ