妖精女王
カイトの視覚野で、【ピクシー】の稼働を示すアイコンが、二つ追加された。引き続き各機乗員の生体情報表示が消失したのは、リーダーが交代したことを示していた。
ヒロインの登場だ。カイトは苦笑いでかぶりを振る。
妖精女王。誰も手が届かない圧倒的な戦績。妖精たちの頂点に座する伝説のプレーヤー。最強の騎士達を従える暴君。
でも実際は、懲罰で社会奉仕活動をしていた、ミドルスクールのガキだ。
「現状報告」
アリシアの言動は前置きなしだ。そういうとこは嫌いじゃない。なにをすればいいか分かっている奴は、カイト側の人間だった。
『侵入者は六十人程度四個小隊と推定。センサの反応では五十八人、数人程度は前後する。目的はおそらくキャンプ襲撃。今回は本気。顔を隠してる。殺害し焼き払うつもり』
と、キオミがアリシアに応えた。
「まるで魔女狩りね」
『なんとか二チーム確保。米軍から一チームが参加。それぞれが小隊を迎え撃つ』
ハルシオンとしても、通常の侵攻作戦よりはるかに多い人員だった。守備任務はものすごくコストがかかる。ピクシードライバーに支払われる報酬は、お安くない。それが秘密を保守することが出来ている理由の一つでもある。
「ばらけたら、止められないね、たぶん」
唯斗は、いつも影が薄いくせに、時折どきっとするようなことを言う。だが、確かにその通りだった。単独でばらばらに行動されたら、小さくとも戦車である【ピクシー】では追従しきれない。
『想定の範囲。手が空いた米軍兵士も警護についている』
カイトたちの視覚野には、センサに目標情報を明らかにするマップが映し出されている。同時に探知された目標は、敵性存在を意味する赤いコンテナで、今見ている視野に重ねて映し出されていた。
マップ上の人型アイコンは、生まれたての蜘蛛の子のように拡散した。
「あ、ばらけた」と、トラッシュ。
そりゃそうだよな、訓練されていない素人なんだから。




