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⑱ファミレスを堪能しよう!



 全国にチェーン展開しているファミリーレストランの【バック・ブリーカー】にやって来た二人は、アルバイトとして働いていた大家さんの次女、春奈に席へと案内された。



 「へぇ~、この子が例のマキナちゃんか! 春奈よ、宜しくね!」

 「うん! よろしくー!!」


 春奈が案内した席を離れる際、マキナと互いに自己紹介を交わす。そして所定のポジションに戻りかけた春奈が、あーそうそうと言いながら振り返ると、


 「今はまだランチタイムだから、ご指定の注文を頂ければ、あそこのランチビュッフェが四時までご利用出来ま~す! じゃ、ごゆっくりぃ~♪」


 と言い添えてから去っていった。



 「……ふぇ? おにーさん、()()()()()()ってなーに?」

 「いやブッへじゃなくてビュッフェだよ。判り易く言うと、好きな物を取りに行けばいいんだ」

 「ふーん、そっか。まー、とにかく……どれにしよーかなぁ?」


 彼の説明にふんふんと軽く頷きながらメニューに目を通していたマキナだったが、


 「……おにーさん! マキナ読めない!」

 「あー、はいはい……じゃあ写真見て決めなよ」


 仕方なく大伝青年が返答し、マキナは暫くの間、本能の赴くままメニューを眺めていたが、


 「……これ、あと……これ!!」


 そう言いながら二つのメニューを指差した。けれどその二品を一瞥した彼は、若干引き気味になりつつ、


 「……【大満足の爆盛りジューシーカツ】と【天を突く峻峰(しゅんぽう)クレージー海老フライ】……なぁ、お前……もしかしてフードファイター目指してんのか?」


 呆れ果てながら呼び出しボタンを押し、やって来た春奈に二品とミックスサンド(ビュッフェセット)を注文した。




 「……じゃ、向こう行ってビュッフェの料理を持ってこようか」

 「……えー? 面倒だからおにーさん、持って来てー!」

 「お前の好きなモノなんて判らんから、自分で取りに行けって」


 そう大伝青年に諭されたマキナは渋々立ち上がり、パーテーションで遮られて見えなかったビュッフェコーナーへとやって来たのだが……


 「……お、お、お……っ!!」

 「何だよ、マキナどーしたトイレか?」

 「違うぅー!! 何これしゅごくないぃ!?」


 語尾の最後辺りで若干言語野情報を乱しながら、マキナはその光景を目の当たりにして歓喜の声を上げた。



 感染防止のカバーを被せられたケース内には、煌めく輝きを放つ色とりどりの新鮮そうな生野菜の数々と丁寧にカットされたフルーツ類。そしてその隣には根菜やパスタ系の茹でられた副菜の数々が並び、更に別の場所には炊き上がったばかりの真っ白なライスと抜群の相性を誇る各種のカレー等、ランチ向けの品々が所狭しとひしめき合いながら、マキナの挑戦を今か今かと待ち構えて(?)いたのだ。


 「……好きなモノ、持って行っていいが注文したメニューも有るんだぞ?」

 「……ここに住んでいぃ!?」

 「アホか。とにかく控え目にしとけよ」


 放置しておくと全品目を持っていきそうなマキナを制しつつ、大伝青年はとりあえずサラダと別添えのボルシチ風スープを取って席へと戻った。


 と、直ぐに思い立ってビュッフェコーナーに向かうと、両手に持った皿にどうすれば新しい料理が載せられるかと考えた末に、チラッとステーキ用ナイフを見つめるマキナを発見した。


 「……こーゆー場所で血を捧げたら出入り禁止になるからな?」

 「……ふわぁーい!」


 仕方なく両方の皿を大伝青年が持ってやると、目についたカレーとライスを確保しながらマキナが自分達の席に戻る。


 「うーん、これも持ってきたけど……スープかな?」

 「そんなもっさりしたスープが有る訳ないだろ……全く。カレーは飲み物じゃなくて(れっき)としたオカズだよ」


 山盛りになったマキナのサラダとパスタの皿を置きながら説明する大伝青年の後ろから、


 「お待たせしましたー! 大人気の爆盛りカツとクレージーなジャンボ海老フライでーす!!」


 そんな風に茶目っ気を交えながら春奈が巨大な銀色のお盆を台車に載せながら運んで来ると、マキナと彼の前によっこらしょと言いながら置いた。


 「……マジで爆盛りだし、クレージーなジャンボサイズだなぁ……」


 思わず洩れる彼の言葉通り、二つのステンレス製のお盆は千切りキャベツが盛られた上に、一方は巨大なトンカツ、チキンカツ、メンチカツの三種類が鎮座している。そしてもう片方には四十センチは有りそうな有頭ブラックタイガーが三匹横たわっていた。


 「わああぁ~スゴーい!! こんなに誰が注文したのかなー?」

 「いやお前でしょ? つーか写真よりデカいよな確実に……」


 まあ何を言っても仕方ないか、と諦めながら大伝青年はスマホを取り出してマキナの姿を枠内に入れながら記念撮影し、それじゃ食べようかと(うなが)した。すると彼女は手を合わせてから組み、いつか聞いた時は意味が判らなかったお祈りをすらすらと唱え始めた。


 「……黒き雌山羊の母よ、深き闇の泉の父よ、我が血肉の(みなもと)となる糧を与えし者に、悠久の平穏と共に戦う勇気を与え給え……いただきます!!」

 「……改めて聞くと胸がざわつくお祈りだなぁ……いただきます!」


 そう付け加えながら合掌し、遅くなった昼食に挑む事となった。



 

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