【第1話】最後の編集作業と異世界の目覚め、そして冒険へ
テレビ局で働く俺は、朝まで続いた映像編集の作業の途中、過労で意識を失った。
最後に目にしたのは、編集画面に突然現れた英語のような記号と、日本語で書かれた浮かぶ文字だった。
【記録しますか?】
YES・NO
消えゆく意識の中で俺は編集者の本能でなのか無意識に「YES」を選ぶ。
その瞬間、視界が暗転し、体の感覚が消えた。
「どうやら俺は死んだらしい……」
「まだ編集が終わってないのに……」
「皆んな困るだろうなぁ……」
「ごめんよ……」
「…………」
そして俺の45年間の人生は終わった。
………………..
……………
……….
…..
…
はずだった………
「…..なおと…….直人!……..」
「起きなさい…..神宮寺直人…..」
俺は、瞬い光で徹夜明けの朝のように重い瞼を開いていく。
男の人の声
「やっと起きよったか」
女の人の声
「起きたわねぇ♪」
低く、厳かだが温かみのある声が耳に届く。
目を開けると
そこは光に満ちた白い空間。
目の前には、全てを見通すような目でこちらを見ている創造神と名乗るギリシャ神話に出て来そうな大柄で筋肉質の男の神と、目を奪われてしまう程の絶世の女神が立っていた。
“俺は一瞬で理解した”
「俺、やっぱり死んだんですね…..」
“女神が言う”
「あなたは何でも一人で抱え過ぎちゃうのよ……
そんな生き方はダメですよ…..」
「いやいや、俺もう死んじゃってますから…….」
そこに男の神が口を挟む。
よいか“神宮寺直人”。お前の命を、新たな世界にて再び生かしてやる。
「本当ですか?」
「おれ、生き返れるんですか!」
“神は続ける”
「そのかわり、お主の力でその世界を救ってくれ。」
”突拍子もないお願いに思わず声が出た“
「え?」
意味が理解できずに思考が止まる
「世界を救うとか無理じゃないですか?」
「おれ、ただの編集者ですよ!無理ですって…」
”神はお構いなしに話を続ける“
「これは、決定事項なのだよ」
「その代わりあなたには私達から特別なスキルを授けるわね」
いやいや、俺にそんな大役は務まらないと思いますよ。
戸惑う俺に、神様たちは静かに答える。
「疑うな。お前の中にある知識と経験が、これと組み合わさった時、必ず世界を変える力となる」
「私達も応援してるわね。だから今度こそ頑張るのよ……」
”その時だ“
”この空間に緊張が走る“
「来よったか!」
”神の顔が一瞬強張る“
「奴らが侵入してくる前に早く行くのじゃ」
女神が慌てている
「あなた急いで!」
「奴らめこじ開けようとしておるな」
「説明が終わってないが急いで出発じゃ」
「直人、行ってまいれ!」
「頼んだぞ!」
神様、ちょっと待って!
俺のスキルって、どんな能力……?
問いかけが言い終わらなかうちに、神様たちは微笑むように手を広げる。
光が俺を包み込み――意識は再び消えた。
「結局俺のスキルは何なんだよ…….」
「……………….」
「………」
俺は俗に言う異世界転生ってやつをしてしまったらしい…..
次に目覚めたのは、生まれたばかりの自分。
俺は温かい女の人の腕の中に抱かれ両親らしい夫婦が俺の顔を覗き込んでいた――
「レイ……ようこそ、私たちのもとへ」
母親らしい女性が柔らかな声で、名前を呼ぶ。
どうやらここでの俺の名前は レイ・クロノス というらしい。
なぜか目の前には異世界転生アニメでよく目にしていたスキルウインドウが開いている。
だがそれにはスキルやレベルなどの情報はなく、俺の名前だけが浮かんでいる。
日本語なのも不思議だ⁉︎
俺、本当に転生したんだな…..
元の世界の記憶はある
目はまだ微かだが見える
だが身体が自由に動かせない。
周りを見渡すがまだ世界は広くは見えず、視界も限られている。
しかし、何度も浮かぶ文字の記憶
意識を失う前に見た――「記録しますか?」――が、なぜか脳裏に残っていた。
時は流れて、俺は5歳になった。
俺は両親からは度々、
”おっさん臭い“と言われることが多い。
それもそのはず、俺は他の子供達より考え方が大人で、自分の中身が転生して来た45歳のおっさんであることを自覚している。
自分では意識して子供として振る舞っているつもりなのだが⁉︎
勿論、他の人と話す時は“俺が”なんて言葉は使わない。
何処かの”名探偵“じゃないけど、
ちゃんと使い分けて人と話す時は“僕は”と言っている(笑)
そして、今日は両親に連れられて教会来ている。
この世界では子供が5歳になると教会で神から授かったギフトが何なのか?鑑定の儀を受ける義務があるらしい。
次に名前を呼ばれた子供は前へ…
「レイ・クロノス」
俺の順番が来た。
これでやっとあの神様達から貰った能力がわかるぞ!
世界を救って欲しいと言ってたくらいだからチート能力である事は間違いないはず…..
「レイ・クロノス
前に出てこの石板に手を置きなさい」
“光る石板”
ピカーン
”少しの間“
“神官達がどよめく”
「なんだこの聞いたこともないスキルは⁉︎」
“俺はちょっと自慢げに胸を張る”
神様達、チートスキルをありがとう。
“俺は驚いている神官達にたずねた“
「俺の能力、どんなチートスキルだったんですか?」
”神官達が突然笑い出す“
「確かにチートだ…..」
「こんな名前のスキルは聞いたことがない」
”俺はワクワクしてスキルの名前を尋ねる“
「早く教えてください!」
”そこに居る全員が神官の言葉に集中する“
「レイ・クロノス、君のスキルの名前は”記録“だ」
”教会から音が消え静けさに包まれた“
その直後に起こる涙交じりの笑い声
「記録のスキルなんて聞いたことがない」
神官達を含めそこに居合わせた全員が声をそろえて話し出す。
”俺は穴があったら入りたい心境だ“
「何かの間違いってことはないんですか?」
”神官達に尋ねる“
「いいや!間違いなく君のスキルは“記録”だ」
“だが俺は引き下がらない”
「他には?、きっと何かあるはずです!」
”神官達が困った顔をしている“
両親も気まずそうだ。
”母さんが俺を抱きしめる“
「レイ、母さん達はあなたがどんなスキルを授かっても嬉しいわ」
”父さんも続ける“
「記録のスキルなら父さん達の仕事におおいに役に立ってもらえる。父さんは嬉しいぞ、だから元気をだせ!」
”俺の目から涙が溢れる“
その日の夕食はいつもに増して俺の好物ばかりが並んでいた。
両親なりの気遣いだろう。
本当にこの人達の間に生まれて来て良かったと改めて感じた。




