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つないでゆくもの  作者: ぽんこつ


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流れる雲

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


龍応は本堂で訪れた観光客に寺の由来を説明していた。

最近は老若男女問わず寺社巡りをする人々が増えている。

向かいで話を聞いている女性の二人組の観光客は夢で見た龍に因んだ寺社を巡っているという。

そこに作務衣姿の女性が引き戸を開けて本堂に入ってきた。

お辞儀をすると入り口の脇で応対が終わるまで佇んでいた。

龍応は客を境内の中から続く洞窟に促すと女性に声を掛けた。

「何でしょう?」

「龍応様、お電話が入っております」

「ありがとう……そういえば明日で遍路は終わりでしたかね?」

「はい……」

女性は頭を下げると本堂の整理を始めた。

その様子を見て龍応は頷くと母屋へ急いだ。

南の空が鼠色の雲に覆われていて、こちらにアメーバのように近づいて来ている。

母屋に入り電話を取ると川勝龍一郎からであった。

「お待たせしましたね。何回も連絡頂いたのに申し訳ない」

「いえ、とんでもないです。急を要する報告があります」

「伺いましょう」

龍一郎の報告は愕然とするもので、昨夜、香の友人の美樹に不審なメッセージが届いたという。

その内容は『あの子の秘密を知っています、それについてお話があります。バイト終わりに潮風公園に来てくだい。もしお越しにならない時は秘密は秘密でなくなります』というもの。

美樹は一人で行くのに不安を感じ、友人である龍一郎の息子、真一郎に連絡を取った。

真一郎が公園に着いた時、美樹は一人で周囲に人の気配はなかったという。

美樹を呼び出した相手は何者か?

「まずいな……」

「仰る通り。呼び出した相手がどうであれ、何かしらの感触を得ての行動かと思います。美樹さんが誘いに乗れば確証に近いものになり、来なくともマイナスになる事は何もありません。恐らく、姫巫女様の存在に気づき親友である美樹さんに探りを入れた可能性は高いと感じます」

「至極尤も。美樹さんが標的。口は悪いが餌になりえる。その後のカラスや鳩の動きは?」

「鳩は2日ほど前に彼ら本来のブツを手中に収めて以降なりを潜めています。面白い行動はしていますが、おそらく結界については興味を無くしたと考えていいようです。一応マークは継続しています。カラスも同様に目立った動きは見せておりません」

「なるほど、どう思いますか?」

「全くの当てずっぽうはこの際、考えなくてよいと思います。よって私は秘密に感づいている可能性が高いのはカラスだと判断します」

「そうなりますね」

「何か姫巫女様に繋がる要因を掴んだことになります。侍らう者達の報告はいかがですか?」

「うん、今の所問題なく、不審者もその範疇には見当たらないというこです」

「了解しました。一つ、もうお考えの中にあるとは思いますが、美樹さんにも侍りを付けた方が良いと考えます」

「是非に及ばず、ただ人員を割けない……あ、ご子息にお願いしよう……一人での行動には慣れているでしょうから」

「分かりました」


電話を切ると、玄関に女性が駆け込んできて、肩の水滴を払っている。

「降り出しましたか?」

「はい」

龍応は窓の外の雲の流れを読んだ。

「通り雨でしょう、小一時間で過ぎますよ」

「分かるのですか?」

「そんな特別なことじゃありませんよ、長年ここで空を見ていたら、何となく分かるんですよ」

女性は小首を傾げ、軒先に上がると一礼して台所へ入って行った。

龍応が居間のパソコンで日誌を付けていると、稲光が部屋の中を照らした。

そして空が悲鳴を上げると窓がガタガタと怯えている。

「龍応様、お茶が入りました」

女性が腰を下ろして、円卓に湯飲み茶碗を置いている。

龍応は椅子から立ち上がり円卓に向かって座ると、お茶を口にした。

様呼ばわりは悪い気はしないが、止めるように伝えても、目の前の女性は結局直そうとはしなかった。

「明後日からどうされるのかな?」

「……はい、免許証の住所に行って見ようと思ってます。明後日のフェリーでたちます」

「そうですか、明日は忙しくなるので会えないかもしれない。短い間でしたがありがとう」

「いえ、そんな……助けて頂いた、私が言う事です。ありがとうございました」

女性は正座をして両手をついて頭を下げた。

龍応は、お茶を口に含む、

「お茶淹れるの上達しましたね」

その声に女性は顔を上げると嬉しそうにはにかんでいる。

「そうそう、もし何かあれば連絡するといい」

龍応が名刺を差し出すと、女性はそれを両手で押し頂いて頭を下げていた。


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