(三)
何で、こうなるんや?
間抜けを1人、罠にかけて破滅させる……たった、それだけの話やぞ。
やっとる事は、我ながら大掛かりやけど……。
でも、とんだ誤算が1つ。
あの間抜けは、俺が思うとったより、遥かに間抜けやった。
自分で勝手に自滅し始めとるらしい。
ああ、糞。
あいつが不幸になるのは、俺の望む所やけど……あの間抜けをちゃんと絶望のズンドコに突き落すには、俺の予定通りに破滅してもらわにゃアカンのや。
どうすりゃいいんや……。
ああ、畜生……。
最後の手段や。
って、何で、始まってもないのに、最後の手段を使わにゃアカンのやッ⁉
まあ、ええわ。
とりあえず、女を何度も世話した政治家のセンセの秘書に電話をする。
「おう、ワイや。すまんが、知り合いが面倒事に巻き込まれとってな。あんたんとこのセンセの力で揉み消して欲しい事件が……」
『あの……またですか?困りますよ、ホント』
「おい、変な気起さんといてや。ワイが変な気起したら、あんたんとこのセンセにエラい迷惑かける羽目になるで」
『やめて下さい。で、また、女関係ですか……』
「いや、それが……」
俺が、揉み消して欲しい事件の概要を説明し終った途端……。
『はいっ?』
また説明する羽目になる。
『あ……あの……確認したいんで、もう1回、詳しくお願いします』
またまた説明。
『あの……本当に、そんな事件を揉み消せってんですか?』
「ああ、そうや……」
そう言ってから、もう1回説明。
そして、ようやく……。
『何て真似やらかしたんですかッ⁉』
「俺じゃねえッ‼やらかしたのは俺の知り合いやッ‼」
『あなたも大概だけど、あなたの知り合いは、あなたよりタチが悪い人ばっかりなんですかッ⁉』
「仕方ないやろッ‼知り合い言うても、俺より遥かに阿呆なんやからッ‼」
『どんだけの阿呆なんですかッ、その人はッ⁉いや、ただの阿呆がやらかすよ〜な生易しい真似じゃないでしょ、それッ⁉』
「信じられんよ〜な阿呆やッ‼でも、その阿呆に何か有ったら、俺が困るんやッ‼」
『まあ……いいです……。いつか、こんな事になるとは覚悟してましたから……』