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華星に捧ぐ  作者: 潜水艦7号
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占拠

「だっ・・・誰だ、お前らっ!」


突然の事に動揺を隠せないものの、それでもドーベルはシート下に『隠し場所を変えた』中性子銃を素早く取りだした。


「動くなっ!動けば・・・容赦なく撃つ!」


空中から湧いてきたので無い限り、彼らがこの艦が運んでいるケージから出て来た『受刑者達』であろうことは明白であった。


そうした場合、艦のクルー達には暴動鎮圧の権限が付与されている。つまり、撃ち殺しても罪に問われる事は無いのだ。


だが、『老人』達に全く動じる気配はなかった。

「撃つ?・・ふん!好きにしろ。そんなもの、ワシらには通じんからの」


先頭に居た老人が、ぬっ・・・と手を差し出し、むんずとばかりに中性子銃を鷲掴みにする。その力は、とても生身の力とは思えないほどの剛力だった。


「なっ・・・こ、これは!」


驚くドーベルをせせら笑いながら、老人は銃を掴んだ手に力を込める。


ミシ・・・ミシミシ・・・バキッ!

大きな音を立てて、銃が砕ける。


「馬鹿な・・・」


抵抗の手段を失って唖然とするドーベルを尻目に、一緒に入ってきた4人の老人達が勝手気ままにコクピットの椅子を占拠し始めた。


「やれやれ・・・此処も狭いところじゃのぉ・・・まぁ、贅沢は言えんが」


「お前ら・・・何者なんだ・・・」

只ならぬ気配に、ドーベルはたじろんでいた。


「何者?おやおや、最近の若いモンはロクに口の利き方も知らんと見える。本来なら、お前ごとき下っ端なんぞがワシらの顔を拝むことなんぞ、有りえんのじゃぞ?」


この余裕、そして『本来なら顔を見る事も出来ない存在』。それは、単なるフェニックス上層部で無い事を示唆している、とドーベルは考えた。


「お前たちか・・・アカツキやウスイを侵入(ハッキング)しているのはお前たちなのか・・?」


「ハッキングだと?ふふん!失礼な。そんなコソドロみたいな真似をする必要なんざ、ワシらには無い。ワシらの正規なアクセス権限をもってすればアカツキを操作するくらい、造作の無いことよ」


フェニックス傘下のブレインやAIは全て、地球にある『ガイア』と呼ばれるブレインの支配系統に属している。そして、ガイアを管理しているのは『プロジェクト・サステナビリティ委員会』だ。彼らがもしも、その『権限』を有しているのだとすれば・・・


「・・・あんたら・・・『サステナビリティ委員会』のメンバーなのか・・・?」


老人はドーベルに一瞥をくれてから、何も言わずに『ニヤリ』と笑った。


半信半疑と言わざるを得ない。

火星移住計画を所轄するプロジェクト・マーズ委員会はメンバーもオープンにされてる。その構成は各界の有識者や財界人等だから、ある程度は顔も名前も知れ渡っていた。


しかし、『その上』に当たる『プロジェクト・サステナビリティ委員会』が、いったい何者なのかは一切オープンになっていないのだ。だが、火星移住計画を始めとしてフェニックスの活動、その全てについて絶大な権限を持っている事は間違いない。


ドーベルは『プロジェクト・サステナビリティ委員会』には、ひとつだけ知っていた事がある。それは構成メンバーが『12人』だという事だ。それは、以前に噂で聞いた事があった。


1・・・2・・3・・・5人か・・・後のメンバーは何処だ・・・?


そこに、機関室から怒鳴り声が入る。

「ドーベルっ!気をつけろ、侵入者だっ!くそっ・・・ケージから出てきちまったらしいぜ!1・・・2・・・全部で6人居る!」


「どうやら、機関室も抑えたようだの・・・」

奥の椅子に座っている老人が呟く。


「くそっ・・・」


多勢に無勢とはこの事だろう。僅か3名で運行している艦に計11名でハイジャックされれば、手も足も出ない・・・おや?11名・・・?


『残りの1名はどうしたんだ?』という疑問が、一瞬ドーベルの頭を掠める。だが、それよりも今は眼の前の『5人』だ。彼らは一体、何が目的なのか・・・


「・・・さて、パイロット君。その席をどき給え。此処からはこの私、オームが操艦する」


「うわっ・・・!」


力づくで、ドーベルが椅子から引き離される。


「凄え・・・とても老人の『力』とは思え無い・・・」


「ほほほっ!そりゃ、そうじゃろうて」

『オーム』と名乗った老人が高らかに嗤う。


「ワシらの『身体』は生身では無いからな。まったく火星の連中は『いい仕事』をしてくれたよ。馬鹿な恐竜を(けしかけ)た事で、『VF-X実証機』からは貴重なデータを充分に採取出来たでのぉ・・・。人間と機械を繋ぐ『ナーヴィタル・フィードバック・システム』は、見事に完成を見たワケじゃて・・・」


ドーベルの背中に、どっと冷たい汗が流れる。

こついら・・・サイボーグだってぇのかよ・・・。


もしも彼らの身体が『機械』なのだとしたら、無生物には影響がない『中性子銃』では、どうにも出来ない。

オームの横に座っていた別の老人が、パネルを操作しながら後ろを振り返った。


「よし・・・ゲートとダイレクト・コンタクトが出来たでの。a号機、b号機ともに位置補正を始めるぞ」

「うむ。頼むぞ、ヘルツ。『空間短絡技術』は昔からアンタの十八番じゃからな」


老人達はドーベルを無視して、何かを始めようとしてる。


「いったい、何が始まるんだ・・・・」


「聞きたいかね?パイロット君。我々が何をしようとしているのか・・・を」

一番後方の椅子に、どっかりと座っていた老人だった。


「・・・我々はね、『新しい世界』を目指す事にしたのさ・・・そう、『新しい世界』だよ!」









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