第66話:リナの覚醒
「リナ!!」
俺は、倒れたリナを抱き起こした。
「リナ、しっかりしろ!」
「ケ、ント……」
リナの声が、弱々しい。
体が、青白い光に包まれている。
「これは……何だ……」
「下がれ、ケント」
アルフォンスさんが、前に出た。
「これは、竜の力の覚醒だ」
「竜の力……?」
「ああ。リナは、氷竜王の血を引いている」
「その力が、今、目覚めようとしている」
「なぜ、今……」
「分からん」
アルフォンスさんは、リナを見つめた。
「だが、このままでは危険だ」
「力が暴走すれば、リナ自身が耐えられない」
「どうすれば……」
その時――
ドラグが、店に飛び込んできた。
「リナエル姫!」
「ドラグさん!?」
「姫の力が覚醒したのを感じた」
ドラグは、息を切らしている。
「急いで来たが……間に合わなかったか」
リナの体から、さらに強い光が溢れ出す。
「うあああああっ!!」
リナが、苦しそうに叫ぶ。
「リナ!」
「ケント、触るな!」
ドラグが止めた。
「今の姫に触れば、凍り付く」
「でも……」
「方法は、一つしかない」
ドラグは、真剣な目で言った。
「姫の心を、落ち着かせるしかない」
「心を……」
「ああ。姫が一番信頼している者が」
「姫に語りかけろ」
「……」
俺は、リナに近づいた。
「ケント、危険だぞ!」
レイナさんが止めようとしたが――
「大丈夫です」
俺は、リナの手を握った。
冷たい。
氷のように冷たい。
でも――
構わない。
「リナ、聞こえるか?」
「……ケント……」
リナの瞳が、俺を捉えた。
「怖い……力が……抑えられない……」
「大丈夫。俺がいる」
「でも……」
「リナ」
俺は、優しく言った。
「お前は、一人じゃない」
「俺がいる。ユウがいる。ソラがいる」
「レオンさんも、レイナさんも、みんながいる」
「……」
「だから、怖がらなくていい」
「力を、受け入れろ」
「拒絶するんじゃなく、受け入れるんだ」
「でも……」
「俺が、ずっと側にいるから」
「ケント……」
リナの目から、涙が流れた。
そして――
青白い光が、だんだん穏やかになっていく。
「……」
光が、リナの体に吸収されていく。
やがて――
光が、完全に消えた。
「はあ……はあ……」
リナが、荒い息をついている。
「リナ、大丈夫か?」
「うん……もう、大丈夫」
リナは、自分の手を見た。
「力が……制御できるようになった」
「よかった……」
「ありがとう、ケント」
リナは、微笑んだ。
「ケントがいてくれたから」
「……」
「姫」
ドラグが、膝をついた。
「おめでとうございます」
「ドラグ……」
「姫は、真の氷竜の力を手に入れられました」
「これで、姫は竜国の正当な後継者となられます」
「え……」
「帰国なさいますか?」
ドラグが聞いた。
「いえ」
リナは、首を横に振った。
「私の居場所は、ここよ」
「ケントの側にいたい」
「……かしこまりました」
ドラグは、微笑んだ。
「では、私は竜国に報告に戻ります」
「姫が、無事に力を覚醒されたと」
「ありがとう、ドラグ」
ドラグは去っていった。
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「リナ、本当に大丈夫か?」
「うん」
リナは頷いた。
「むしろ、すごく調子いい」
「力が、溢れてくる」
リナが手をかざすと――
空中に、美しい氷の結晶が現れた。
「すごい……」
「これが、私の本当の力」
リナは、嬉しそうに笑った。
「ケント、これで私、もっと役に立てるよ」
「料理でも、戦闘でも」
「ああ。頼りにしてる」
「うん!」
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**翌日。**
七賢人の試練は、一日延期された。
リナの体調を考慮してのことだ。
「すみません……」
リナが、申し訳なさそうにしている。
「いや、気にするな」
アルフォンスさんは、優しく言った。
「むしろ、興味深いものを見せてもらった」
「竜の力の覚醒とは、滅多に見られるものではない」
他の賢人たちも、頷いている。
「それに」
マザー・エレナが、温かく言った。
「あなたたちの絆を見られて、よかったわ」
「ケントとリナの、信頼関係」
「それが、料理にも現れているのね」
「……」
「さあ、明日から再開しよう」
アルフォンスさんが宣言した。
「第五の試練」
「若き天才、シェフ・ダンテが担当する」
ダンテ――
20代の青年だが、七賢人の第六位。
鋭い目つき、野心的な雰囲気。
「ケント」
ダンテが、こちらを見た。
「俺の課題は、『革新』だ」
「革新……」
「ああ。今までにない、全く新しい料理」
「それを作れるか?」
「明日、楽しみにしてるぜ」
そう言って、ダンテは不敵に笑った。
ーー第67話に続く




