4 香澄ちゃんの友達
「あのさぁ、あんまりこういう事言いたくねぇんだけど。」
何か嫌な予感…。
「カラオケ来たら何でもいいからせめて一曲歌わねぇ?場が白けるからさぁ。」
あ~、やっぱりそうなるのか…。
「ごめん、本当に苦手なんだ。」
「苦手でも下手でもいいんだよ!場の雰囲気を壊すなって言ってんだよ。」
「ごめん…。」
俺が歌うと下手なのもあって逆に白けるんだけど…。
話しながら部屋への通路を歩いていると、香澄ちゃんの女友達がこちらに歩いてきた。
「何々?何の話?」
「いや、仁科が歌わねぇって言うから、一曲でもいいからって言ってたんだよ。」
「あ~まぁそうだよね。香澄って素直で思いやりがある子だから、あんまり気を遣わせるのもどうかと思うしね。」
「だろ?せっかく香澄が誘って来てるんだから、ちょっとは香澄の事考えてやってもいいんじゃね?」
「そうだよ。せっかく来たのにノリ悪いと香澄が気ぃ使っちゃうでしょ?」
聞いてるだけでもいいって言うから来たんだけどな…。歌うしかないのか…。
「わ、わかった。一曲だけなら…。」
「そう来なくっちゃな!」
「オッケー、じゃあ戻りましょ!」
「みんなぁ!仁科が歌うってよ!」
「マジ!聞いてみてぇ!」
「仁科君はどんな歌声なのかな~?」
「え?孝ちゃん?歌うの?」
案の定、歌い出すとシーンとしてしまった。早く終わってくれ…。
そのまま全く盛り上がらずに終わった。
「…に、苦手だって言うからすごい下手なのかと思ったよ!下手じゃないじゃん!」
「そ、そうだな!上手いよ!全然!」
「そ、そうね!また聞きたいな!」
あ~、やっぱりそうなるのか。気ぃ使われる位なら歌いたくなかったな…。
「じ、じゃあ最後は香澄の歌で締めてもらおうか!」
「さんせ~い!香澄よろしく!」
「あ、わ、わかったよ!頑張る!」
香澄の歌でようやく盛り上がりを取り戻し、カラオケは終わった。
「じゃあ、俺こっちだから…。」
「あっ、た、孝ちゃん、またね!」
「あぁ…。」
やっと解放された…。