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愛をこの手に、弔い花を捧げましょう~死に戻り王女の幸せな復讐劇~  作者: 玉響なつめ
はじまり

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1/4

はじまりは、繰り返しの朝から

新作です!よろしくお願いいたします。

 目を覚ましてすぐに、その少女はベッドから飛び起きた。

 首元に手を当て浅い呼吸を繰り返し、そして上掛けを跳ね飛ばすと鏡の前に立つ。


「……また、また戻ってきたの……?」


 鏡に映るのは、艶やかな黒髪に濃い紫の瞳を持つ少女の姿。

 その姿に思わず手を伸ばし、鏡に触れる少女の名前はニュクス・アキレギア・ロレアヌス。


 ロレアヌス王朝と呼ばれる女系王朝の、末裔(まつえい)

 女王に授けられた二つ名が、国葬で捧げられる花であるアキレギアという不吉な名を持つ王女。


(……お祖父様の命日に生まれ、そしてお祖母様の命日にもなったから)


 授けられたのは七つの頃。

 そうだ、兆候はもうその段階であったのだ。


(どうする? どうしたらいい?)


 少女――ニュクスの脳裏を駆け巡るのは、これまでの三度の(・・・)愚かな人生。

 もう同じ轍を踏むつもりはない。


(そうよ、期待するだけ無駄なの)


 王太后に育てられた第一子よりも、手元で育てた第二子だけを愛する女王も。

 女王の機嫌だけが摂政でもある王配も。

 そして、手がかかるだけで一切情を抱くことができなかった、血を分けた妹も。


 ニュクスを、愛してくれなかった。


 彼女には人生三回分の、記憶がある、

 愛してもらおうと足掻いて、足掻いて、そして死んだ記憶。

 どうして死を迎える度に過去に戻ってやり直せているのか……なんてことは、もはやどうでも良かった。


 過去にはその理由を探ることもあったが、今はそれよりもやるべきことがある。


 ニュクスはベッドに戻ると、ベッドの天蓋から垂れ下がる呼び鈴を引いた。

 これだけ大きな物音を立てた後でも人が来ないほどに、ニュクスのいる宮は寂れているのだ。


 今頃は数少ない使用人が頑張って朝食の準備を調えてくれているに違いない。

 そう思うと呼び立てるのは気が引けたが、これからの行動が、どの人生でも(・・・・・・)最期までニュクスを支えてくれた使用人たちの命も救うことに繋がるのだから今だけ許して欲しいと彼女はそっと目を伏せ、ため息を漏らした。


(これまで……この頃の私は、どうだったかしら? 私は今、何才なのかしら)


 彼女のこれまでの人生は、決して素晴らしいものとは言えなかった。


 一度目の人生は、何も知ろうとしない人生だった。

 ただ流されるまま、わからないまま、十七才の頃に反乱が起きて死んだ。

 何故愛されないのか、何故罵倒されなければならないのかわからなかった。


 二度目の人生は、両親に認めてもらえるよう努力した人生だった。

 けれど、女王である母の失策の罪を覆い被せられて二十才で処刑された。

 両親の愛情は、とっくの昔に全て妹のものであったと理解した。


 三度目の人生は、それならば自分も妹を愛してみようと思った人生だった。

 愛されることしか知らない妹の尻拭いをし続け、そして愚かな妹姫を庇い続ける愚かな姉姫として暴漢に襲われ命を落とした。


(やってらんないわ)


 ただ、どの人生でも夫となった人と、この宮にいた使用人たちだけはニュクスを裏切らなかった。

 今度の人生は、家族のためではなく自身を大事にしてくれた人々のために生きよう。

 そうニュクスは心に決める。


(……私が幸せにならなければ、彼らはまた巻き添えとなって……)


 ゾッとする。

 もう大事なものが何か、見誤ってはならない。


 そうして今度こそ人生を掴み取った先に、このやり直しの人生の意味を見つけられる――彼女はそう思ったのだった。

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