仕事
作業部屋で毒薬や火薬・爆弾の調合をしていると自室の方の扉が叩かれた。
扉を開けると執事長のセバス・バランチェが立っていた。
歳は65歳で身長は177cmで整えられた白髪、堀が深く鷹のように鋭い目つき、燕尾服の上からでも分かる頑丈な筋肉の鎧を持っている
「どうした」
「旦那様から『お仕事の時間だ』との事です、詳細はこちらに」
彼が紙2枚渡してきた。
「分かった、ありがとう」
俺は紙を受け取り作業部屋に戻って読む。
(こいつは大物だな)
紙に書かれていたのは奴隷商人レイブ・イワール、かなり大きく色んな貴族が贔屓にしているようで国が動いてもなかなか尻尾を出さずうちに回ってきたらしい。
(流石ダクラス家の諜報員だ証拠も揃ってる、こいつは後々役に立つ物を持っているから倒したい。用意するか)
俺は煤煙色の乗馬用フロックコートと防刃仕様の高襟インナー、ブリーチズと特殊加工し音が出にくいロングブーツを着て指輪を装着して忍者刀や暗器、銃を取って外に出た。
ーーー
「フハハハハ、また大儲けだ」
出っぷりと肥えた腹に成金みたいな服装に大きな宝石付きの指輪をしている中年の男が下卑た声で笑い声を上げる。
「そうですね〜」
そう返答したのは裏社会でも巨大武闘派組織と呼ばれる獄門の人身売買部門の王国支部長パウロ・ズーピー通り名はダブルナイフのパウロ
バチン
突然停電が起きる。
「な,な何だ」
「敵襲ですね〜、お前達!」
「「へい!」」
奴の手下が直ぐに逆さまに掛けられていた絵画を反転させると壁が動き隠し通路を開く。パウロがレイブを連れて逃げようとするが
「むう、あれはワイヤーか」
(いつの間に張られた?まあいいなら天井から抜け出す)
奴は歴戦の武闘派、闇となったこの空間でも正確にトラップを把握し次の脱出口に向かおうとする。だが俺はその様子を見て口角を吊り上げる。
(何だこの臭い、まさか爆弾!?)
「すみません」
彼がレイブを担ぎ上げ防御魔法〈障壁〉を発動してその裏に隠れたその瞬間爆弾が起爆
ドゴーン!
「グギャーー」
「ガァァーー」
「チッ、下っ端全員持ってかれたか!」
(まさか隠し通路の仕組み自体に爆弾とは、何らかの次なる仕掛けがあるとは予想していたがあのワイヤーに触れる事で作動すると思っていた…ワイヤーに爆弾そしてこの感じ、ダクラス家の者か!)
一瞬で部屋が焦土となり煙が充満して視界が悪い。
(誰が来た!無慈悲のファルドかそれとも死花のフローラか剣鬼のセバスか)
すると何かが煙を切り裂く気配がする。
シン
「!? ぐお」
彼が脇腹に刺さった物を見る。
(これは…苦無か?日の本の国の忍びと呼ばれる者が使うらしいが…こんな武器使う奴いたか?)
すると煙が抜けて薄れると何者かが目の前に現れる。その人物はこの死屍累々の現場に相応しくないやけに霞んで見える15くらいの紳士だ。
(……は?)
ーーーー
(パウロ思ったより強そうだ、正面からやるとどんな感じかな)
「お前…確かクルトとかいう奴だな、こんな小僧だとはこのパウロも舐められたものだ
それにしてもお前の周辺だけ何で画質悪いんだ」
「言うわけないだろバカ」
「……なら無理矢理吐かせてやる」
そう言うと落雷のような踏み込みで一瞬にして懐を侵略し奴が突こうとするが俺の輪郭がボヤけ正確に急所を狙えない。
(チッ厄介だな何だこれ、でも結局真ん中刺せば終わりだ)
とはいえ奴も歴戦の猛者、即座に本質を見抜き袈裟に切り替える。
だが迷った斬撃で俺を捉えるなど夢物語、あっさりと躱す。
(こっちでも霧の体術は通用するのか)
仕組みはサッカードや風景に同化したりする服部家に伝わる特殊な体術で霧の体術と呼ばれている。遠くから見れば見るほど滲んだ見え飛び道具等に有効な対策だ。
攻撃の合間合間に忍者刀や苦無を挟んで奴を削っていく。
(何ちゅう体術と技術だ全く当たる気がしねえ、これもう頭首超えてんじゃねえか歴代1の才能は嘘じゃなかったのか…)
奴の顔が曇っている中俺は冷静に奴の攻撃パターンを解析していく。
(なるほどかなり速いこれは不可視と言われるのも納得だ、実際早過ぎて残像が見える)
これは奴の固有〈加速〉で効果は際限なく加速できるというもの。
(肉体の限界があるとは言えここまで加速できるのは奴の技術だな)
こうしている内にも更に加速し続けるナイフをいなしたり躱していく。
(もう奴の剣筋は見切った、これで幾ら速くても関係ないね。何でトドメ刺そうかな…よし白リンカプセルでの焼死をプレゼントしようか、外道には長く苦しんで死んでもらうのがうちの流儀だしね)
奴が袈裟を落とした時白リンカプセルを投げながら後ろに後退、即座にカプセルから白リンが溢れそれが奴に振り返る。その瞬間奴から火が激しく燃え上がる。
「グギャーーーー」
「水でもかければ消えるんじゃないか?」
それを聞いた奴が水魔法を発動して自身にかけたが消えない。
「何故消えないんだ!!」
奴の心が絶望感で塗り潰される。
(残念だね、白リンは1度発火したら止まらない地獄の業火なんだよ)
だが何と奴が地面を凄まじい速さで転がった為火が消えた。
(へぇ~瞬時の判断も素晴らしい、まさかストップ&ロールを知っているとは…でもね)
だが何とまた発火した。
「ギャーー」
(白リンは酸素を遮断しない限り燃え続けるんだよ)
消したはずの火がまた発火すると言う絶望を味わって奴は黒焦げになって死んだ。
自身の護衛があっさり突破されたのを見たレイブは腰を抜かし失禁しながらも匍匐前進で逃げ出そうとする。
「だ〜め、逃げんなよ」
俺が苦無を奴の膝裏に投げつける。
ザシュ
「アギィーー」
奴が醜い叫び声を上げるが耳障りなだけなので奴の頭を上から踏んづける。
「ゴボ」
「なあ貴族派の奴隷取引書を持ってきてくれよ」
「はひ、はいいいーー」
「これです」
2分くらいで戻って来た。
「随分と早いな、本当にこれだけか」
俺がドスを効かせて言うと怯えて赤べこのようにカクンカクン頭を揺らす。
「そうかじゃあな」
「ヒッ!お、おた」
俺は奴にも白リンカプセルを投げつけパウロと同じ末路を辿って死んだ。




