召喚
「我らが仕える北小路様を狙う輩がいる、その者を排除し黒幕の悪事の証拠を持ってこい」
そう言ったのは、服部家当主で俺の父さんでもある服部仁。
「分かりました当主、行ってまいります」
「これはお前の試験も兼ねており難易度は高い。服部一族の麒麟児そして、俺の自慢の息子よ 無事に帰ってこい」
「必ずや」
「よろしい」
部屋を出て廊下を歩くと鶯張りの為、キュウ、キュウと独特の軋み音がなる。
極力音を消して歩くことも出来るが、音を消して歩くと驚かれるからわざと音を立ててる。
すると前から妹の菖蒲と母の梢がやって来た。
2人とも美人、系統で言えば妹はクール系で母さんはお母さん系と言ったところだろう。
「頑張ってね兄さん、死なないでよ」
「フッ、俺が死ぬわけなかろう なぜなら」
「無敵の忍者だ、でしょ」
「俺の台詞を取るな」
「あらあら,相変わらず仲がいいですこと」
「母さんも菖蒲も任務か?」
「ええそうよ、ちょっと菖蒲と一緒に夜の街にね」
そう怪しくそして艶やかに笑う母は美魔女の異名に相応しい。
「頑張れよ」
そう言って俺は中庭にある大きな桜の木を通る。春になると見事な桜が咲き、それを家族で見ながら花見をするのが春の通例だ。
自室に入り帽子と作業着等を着てから、奥の畳の床を開き下につながる階段を降りる。そして降り立った駐車場から俺の愛車のオールブラックのバイク『カワサキのNinja400』に乗り、スマホを操作しガレージを開く。
ドルルル……クォーーーン
バイクを走らせると事故防止の為少しライトアップされ、森に溶け込むように偽装されている舗装道に繋がりそこを下っていく。サイドミラーには俺達の住まいである、木々と白い壁に囲まれた大きな日本建築が映り込む。この森は友好の証として初代北小路家当主が我等に与えて下さり、それを何代にもわたって手を加えいった。その結果古き良きトラバサミや落とし穴、現代の熱源感知センサーなどがあり侵入者は本邸に辿り着く間もなく死ぬ『デストラップ・マウンテン』になった。
バイクを走らせる事数十分、奴らのアジト付近の駐輪場に止め工具箱を持って少し歩いて行くと大きな日本家屋に到着した。
「誰だ、お前は」
極道の門番が声を掛けてくる。
「空調設備の定期点検です。事前に上長の方にアポイントをいただいております」
俺は愛想よく笑いながら書類を提示、彼は俺が偽造したIDカードを読み取ってから門を開ける。
「書類やIDカードに異常なし、入れ」
俺は難なく玄関を突破して中に入る、標的のいるリビングを通り過ぎブレーカーを弄りスマホで停電を起こせるようにする。
そして奴らの秘密の脱出口の前の通路に工具箱から取り出したピアノ線付きのボルトを埋め込み手榴弾のピンにピアノ線を括り付けガムテープなどで固定する。
キュキュ、バリバリ
「完了」
そして俺はトイレに入り服を脱ぐ、中から現れたのはマットブラックのタクティカルギア、そして二段工具箱から取り出したフルオート・ショットガンを組み立てていく。
そして最後に暗視ゴーグルを装着して起動すると視界が緑色に変わり、同時に俺の意識が暗殺者としての冷たいものに切り替わる。
そして俺が奴らのいるリビングの前でスマホを操作して停電を起こす。
「ん?停電か、おいお前見てこい」
と言う声が聞こえてくる、その瞬間ドアを蹴破っていきなり銃をぶっ放す。
ババババババババババババ
構成員達が一瞬で物言わぬ肉塊へと変貌していく。暗闇を晴らすマズルフラッシュにより俺の真っ黒な輪郭と銃を乱射する狂気の姿が照らし出される。
「ヒ、ヒィー」
「うあぁぁー!死にたくねぇぇーー」
「し,死ねぇぇー!」
生き残った幹部やボスが錯乱状態でそこに向かって拳銃を放つが、この暗闇で大雑把でしか見えてない状態で撃った銃弾に当たる訳がない。
暗視ゴーグル越しに見える手首や目線、そして殺気から弾道を予測し身体を射線から外していく。そして更に数人挽肉にすると弾が切れた。
俺がリロードしようとわざと隙を見せる。
「いい、今だ今しかねえ」
「化け物ーー」
先の交戦で圧倒的な戦闘力と絶望感を味わった奴らは反対側のドアをぶち破り廊下に逃げ出す。そして廊下を走って行くがその先には残念ながら俺が仕掛けたトラップがある。
「まて前にピア」
先頭の人物が気付くがもう遅い、後ろから我先にと逃げ出そうとする人に押されて先頭の2、3人が高さ1.3mくらいに張ったピアノ線が首に食い込む。
ズシャッ
…
ピン…バキン!
首から突然血を吹き出す様子を見て奴らが止まるが流石に猛烈に押されてピアノ線を張っていたボルトが折れた。そのまま奴らが逃げようとするが奴らの耳が異音を捉える。
チッ……
シュウウウウ…
「ヒッ、これ手榴」
ドン!
大きな振動と音が俺にも伝わってくる。
そして爆発現場に赴くと全員死亡していた。
そして奴らのボスの部屋に赴き、そこから奴らの背後に居る政治家との北小路様殺害依頼契約書をリュックの中に入れ当主に電話を掛ける。
「終わりました当主」
「……流石だな、試験は合格だ」
そう言って電話が切れると身体が輝きだす。
「何だ」
そして白く眩い光が俺の目を塞がせる。
ーーー
目を開けると白い空間に誰かいた。
徐々に目が慣れ姿を知覚するとそこには、軽い雰囲気を纏った美青年がいた。
「やあ君が服部忍舞だよね初めまして僕はアザゼス、神だけどゼスって気軽に呼んでね」
俺は即座に自分の手を動かすが、感触がない。
(武器もなし、身体もなし。不味いな、それにしてもフランクすぎないか?ほんとに神なのか?……だがこの状況は神でもないと説明がつかないか……)
俺は焦る心を抑え意識を冷ましてから口を開く。
「…初めまして、今どういう状況ですか」
「君の状況を説明すると僕が君を『魂魄召喚』したんだ」
「…何故」
「僕はある人を殺してほしいと思っている、だから殺しのエキスパートである君を召喚させてもらった」
「疑問がある、父さんや母さんの方が総合的な強さで言うと上だ。何故俺なんだ」
「世界を移動する際若くないと魂に損傷が出来若すぎると変形しすぎる、つまり君くらいの年齢が丁度いいんだ」
「…理解した、それで俺は受けないと帰れないのか」
「いや別に帰れるよ」
「じゃあ帰る」
「あーあ、ちょっと待って!話だけでも聞いてくれよ〜」
「なら1つ確認だ、現実世界で時間の影響はあるか」
「う〜ん、話は1・2分で終わるから……時間の経過はゼロに限りなく近いかな!」
(ならば俺がこのまま「帰る」と言い張るより、一度相手の話を聞いてからの方が納得しやすいか……)
「…分かった、話を聞こう」




