第64話 野菜かき揚げ天茶漬け! ひょー!
「さ、どうぞ。ちゃんと箸も作っておきましたので!」
わあ、今気が付いたけど、ちゃんとお箸がある!
こうなるとお茶碗も作りたいところね。
今はスープカップで代用だけど。
とにかく、ナイジェル様が作ってくださった箸を手に取って「いただきます!」
まずは、お箸で野菜のかき揚げを二つに分ける。さくっと軽い音がした。
「わあ! さっくさくですね!」
「ええ。よろしければ、半分は塩を振って食していただいても……」
おおう! それはナイスアイデア! わたし、お茶漬け魔人だけど、天ぷらをお塩で食べるのも大好き!
勧められたとおりに、軽く塩を振って、そして……。
「ふわぁ……」
さくりとした衣の歯ざわり。そして、口の中に広がる野菜の甘い香り。
「お、おいしいですううううう!」
「良かった。それでは本命の、天茶漬けを……」
のこりのかき揚げを、麦飯の上に乗せる。そして、カイエン男爵領のお出汁にナマズ魚醤を数滴加えた温かいスープをかける。
こ、このビジュアルだけでも超感動。
だけど、いつまでも感動している場合ではない。
さあ、食すわよ!
一口目。
かき揚げが、サクサク感を残しつつ、お出汁に浸って、じゅわーっと口の中に広がる。
ああ、しあわせ……。
感動を抱きつつ、二口目へ。
はむはむしては、飲み込み、飲み込んでは、はむはむと……、ああ、これは永久機関。永遠に繰り返す口の中の幸福……。
三口目、四口目とお箸は止まらない。
そして、あっという間に、完食。
しあわせの時間って、短いのね……。
さみし気に空になったスープ皿を見つめていたら。
「おかわりもありますよ」
ナイジェル様の神の声が!
「お願いします‼」
勢いよく差し出すスープカップを、ナイジェル様は笑顔で受け取ってくださった。
ああ……、後光が見えるわ……。拝んじゃおうかしら、南無南無と……。
そうして、食すこと、三杯。
まだまだイケるけど。
わたしの背後で「トリクシーお嬢様……」と、ものすごい顔になっているエリンが気になって……。
「エ、エエエエエエエエリンさん……?」
恐る恐る振り向いてみれば……。
「カップを殿方に突き出すとは! お嬢様、身につけたはずのマナーはどこに逃亡されました⁉」
ひーん、怒られたあああああ。泣く。
「まあ、まあ。それほどまでに醤油の威力は絶大ということで」
ナイジェル様がわたしを庇って下さいます!
ああ、ナイジェル様!
わたしはエリンから逃げ、ナイジェル様の背に隠れます。
「そうなのよ、おいしかったのよ! お出汁にほんのちょっと魚醤が加わるだけで、こんなにも風味が変わるのかと、感動でしあわせで……」
「確かにお味はよろしゅうございますが!」
「あ、エリンも食べているわよね。おいしかった?」
「もちろんでございます! 油で揚げたとはとても思えなくサクサク感……ではなく!」
「はい! ごめんなさいエリン! 次回からはきちんとマナーを守ります!」
だから許して!
へこへこ謝っていたら、ナイジェル様に笑われました……。




