第61話 何はともあれ……
何はともあれ、いったん帰国。いや、ラインシュ領に戻ります……。
東には行きたい。
米は探したい。
梅干しのめどは立った。
ナマズ魚醤の完成はまだだ。
カイエン男爵領は取り込みます。絶対に逃がしません。
あとなんだ……?
段々混乱してきたので一回リセット……。ではなく。
ナイジェル様との婚約を、一度、きちんと、お父様やお母様、お兄様がたを交えてお話合いをしましょう。
新制ラインシュ王国を、どこまで広げるかとかも確認しましょう。
その広げる範囲に優先して、簡易トイレを売りましょう。
王家には売らないよ☆ 売るとしても、優先しないよ? 高く売り付けるよ。
みたいなことをまとめないとねー……。
あ、あああ……。
色々考えないといけないのに。
わたしの頭の中は……、中は……。
先日の、ナイジェル様の、唇の感触に……。感触に……。
今更ながら、というか、あれからずっとというか……。うひゃーってなっています。
わたしを説教し終えたエリンは。
「お嬢様にもようやく情緒の発達が」
とか温く笑うし。
当のナイジェル様はわたしを見てにっこにっことしています。
「さて……、こうなると婚約指輪が必要だと思うのですが」
「ほへ!」
「せっかくですので、通信機能付き婚約指輪でも作りますかね」
「通信機能付き……?」
「……この世界、スマホがないから連絡が大変でしょう」
「妖精さん、飛ばせば……」
「魔法使い同士はいいのですが。トリクシー嬢、妖精飛ばせないでしょう」
「そうでした……」
元日本人。スマホとパソコンはないと困る。
さすがにパソコンは無理でも、スマホなら?
「内乱でも起こして、戦果を挙げて、地位を得て、トリクシー嬢に求婚……という流れはちょっと今すぐは無理なので」
無理というか、戦乱はなるべく避けてほしいなー。
やっぱりね、元日本人としては。温くても平和主義でいきたいんですよ。
でも、独立はするけどね。
いつまでもあんな阿呆な王家と王太子に付き合ってはいられない。
「スマホとまでは行きませんが、トランシーバー、いや電話。その程度の機能がある指輪を開発して、最初に作ったものは婚約指輪。それが出来たら、量産タイプを大量に作り、一獲千金。その資産をもってして、求婚いたします」
わたしが、唇の感触に、ポヤポヤしているうちに。
ナイジェル様は……。
すごいわ。
ちょっと惚れた。




