第二章15最終話「自立」
全面的に自己責任でお願いします。
朝。
窓から差し込む陽射しが、静かに部屋を照らしていた。
優守はいつものように目を覚まし、コーヒーを淹れる。
香ばしい香りが部屋に広がる。
マグカップを手に、窓の外を眺めた。
平日の朝。
通勤する人たちが駅へ向かって歩いていく。
ほんの少し前まで、自分もその一人だった。
時間に追われ、会社へ向かう毎日。
働かなければ生活できない。
給料日だけを楽しみに、一か月を過ごしていた。
あの頃の自分は、それが普通だと思っていた。
「変わったな……」
自然と言葉が漏れる。
宝くじに当たった。
異世界の本と出会った。
スキルを得た。
独立した。
事業を始めた。
振り返れば、たくさんの出来事があった。
だが、一番変わったのは環境ではない。
自分自身だった。
生活のためだけに働いていた自分は、もういない。
働かなくても生きていける。
それは昨日や一昨日の出来事ではない。
少しずつ積み重ねてきた結果が、ようやく実感へと変わっただけだった。
優守は作業部屋へ向かう。
パソコンの前に座るが、すぐには電源を入れない。
しばらく静かな部屋を見渡した。
本棚には、数え切れないほどの本が並んでいる。
営業。
会計。
法律。
経営。
投資。
AI。
そして、異世界から手に入れた本。
どの一冊も、自分の人生を少しずつ前へ進めてくれた。
「ありがとう」
誰に聞かせるでもなく、小さく呟く。
本へ。
支えてくれた先生方へ。
出会ってきた人たちへ。
そして、諦めずに学び続けた自分へ。
感謝の気持ちが自然と湧いてきた。
優守はパソコンの電源を入れる。
画面には、管理画面や売上レポートではなく、新しいフォルダを開いた。
名前はまだ決まっていない。
新しい事業の企画書。
企業向け研修。
AIを活用したサービス。
まだアイデアの段階のものも多い。
どれも今すぐ始める必要はない。
急ぐ理由もない。
それでも、少しずつ形にしていきたいと思えた。
生活のためではない。
誰かに命令されたからでもない。
やりたいから、やる。
その気持ちだけで十分だった。
キーボードへ手を置く。
ふと、ノートの一節を思い出す。
『事業というのは、小さな種から始まる。』
あのとき植えた種は、まだ芽を出したばかりだ。
これから水をやり、育てていく。
失敗するものもあるだろう。
枯れてしまうものもあるかもしれない。
それでも構わない。
また、新しい種を植えればいい。
優守は小さく笑った。
「焦らんでええ。一歩ずつや」
そう言って、新しい企画書の一行目を書き始める。
そのとき、画面の端に異世界との定期取引を知らせる通知が表示された。
「もうそんな時間か」
優守は通知を確認する。
いつもの取引。
いつものやり取り。
特別なことは何もない。
けれど、優守はふと思った。
異世界の本を読んだこと。
知識を得たこと。
その知識を現実で試したこと。
その一つ一つが、今の自分につながっている。
「……本って、ほんまに人生変えるんやな」
小さく笑う。
そして、机の上に置かれた一冊の本へ手を伸ばした。
今日も、読む。
明日も、読む。
これから先も、きっと読む。
知らないことは、まだ山ほどある。
学びたいことも、やりたいことも、まだまだ残っている。
だからこそ、焦る必要はない。
一冊ずつ。
一歩ずつ。
自分の人生を、自分で選んでいけばいい。
優守は静かに本を開く。
「さて、次は何を学ぼうか」
本堂優守の人生は、これからも続いていく。
失敗することもあるだろう。
迷うこともあるだろう。
それでも、もう大丈夫だ。
誰かに決められた道を歩く必要はない。
自分で選び、自分で学び、自分で進んでいけばいい。
知らないことは、まだ山ほどある。
学びたいことも、やりたいことも、まだまだ残っている。
だからこそ、これからも本を読む。
一冊ずつ。
一歩ずつ。
自分の人生を、自分で選びながら。
そして、本堂優守は今日もページをめくる。
一冊の本から始まった人生は、これからも続いていく。
それが――
本堂優守が手に入れた、最高の「チート」だった。
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。
最終回です。
こんな駄文をここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。
まだ続けようと思えば続けれそうですが、中途半端になるなら、ここまででと考えました。
もしも、今後続きを書くなら、また各章事かな〜ってなっていますが、この作品は、とりあえずここまでと、皆さん思っておいてください(笑)




