表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/64

第49話「すれ違いの日々」

ケンカの翌日。

僕――早見孝介は、

グラウンドに向かいながら胸がざわついていた。


(乃愛……来るよな)


でも、

いつもなら一番に準備をしているはずの乃愛の姿はなかった。


「白石、今日は休みか?」

「珍しいな」


先輩たちの声が遠く聞こえる。


(……やっぱり、怒ってるよな)


胸が重く沈んだ。


その頃、乃愛は自分の部屋で膝を抱えていた。


(孝介……)


昨日の言葉が頭から離れない。


「乃愛は……俺の気持ちなんてわかってないよ」


胸がぎゅっと痛む。


(わかりたいよ……

 ずっとそばにいたいよ……

 でも……どうしたらいいのかわからない)


乃愛はスマホを握りしめたが、

メッセージを送る勇気が出なかった。


練習が始まっても、

僕は全然集中できなかった。


「早見、どうした?動き悪いぞ!」

「おい、ボール見ろ!」


怒鳴られても、

頭の中は乃愛のことばかり。


(昨日……なんであんなこと言ったんだよ)


後悔が胸を締めつける。


練習後、

乃愛の姿を探したが――

やっぱりいなかった。


乃愛は部活に来なかった。


「白石、風邪か?」

「最近見ないな」


周りは気にしていないようだったが、

僕だけは落ち着かなかった。


(乃愛……どうしてるんだろ)


スマホを開いては閉じ、

メッセージを打っては消す。


「ごめん」

「話したい」

「会いたい」


どの言葉も、

今の乃愛に届く気がしなかった。


乃愛は部活に行こうと玄関まで来ては、

足が止まってしまう。


(孝介に……会いたいよ)


でも、

昨日の言葉が胸に刺さったまま。


(また……あんなふうに言われたら……

 私、耐えられない)


乃愛はそっと靴を脱ぎ、

部屋に戻った。


数日後。

僕は意を決して乃愛の家の前まで来た。


(話したい……謝りたい……)


でも、

インターホンに指を伸ばした瞬間――


「……孝介?」


背後から声がした。


振り向くと、

乃愛が買い物袋を持って立っていた。


でもその表情は、

どこかぎこちなくて、

距離を感じた。


「乃愛……」


「……部活、どうしたの?」


「いや……その……」


言葉が出ない。


乃愛は視線をそらし、

小さな声で言った。


「……ごめんね。

 今は……ちょっと話せない」


胸が痛んだ。


「乃愛……」


「ごめん……」


乃愛はそのまま家に入っていった。


僕は追いかけられなかった。


その夜。

僕はベランダで空を見上げていた。


(乃愛……会いたいよ)


一方その頃、

乃愛も自分の部屋の窓から夜空を見ていた。


(孝介……会いたいよ)


同じ空を見ているのに、

心の距離は遠いままだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ