第325話:VS.【破壊天使】ウリエル/ 〜Angel of Destroys〜
「ラストアーク騎士団……だと……? 誰がそんな組織を作った……!? 女神アーカーシャのデータベースには『ラストアーク騎士団』なんて組織の情報なんて無かった! 何なんだ……主機は嵌められたのか……!?」
「いいや、オレたちラストアーク騎士団は此処が初陣! 貴様は映えある第一の獲物だ!」
「テメェは魔王軍の“若獅子”……! 此処がテメェ等の初陣だと!? これ程の規模のアーティファクトを用意して……今まで影に潜んでいただと……!? 馬鹿な……」
俺たちの救援に駆け付けた『ラストアーク騎士団』。今日この場所が、この教会での戦闘が初陣らしい。確かに、ノアの名を冠した騎士団の存在など俺は聞いたこともないし、冒険者時代にもダモクレス騎士団時代にもそんな組織からの接触は一切無かった。
加えて、彼等が暗躍しだしたのは恐らく『アーティファクト戦争』が終結してからだ。何故なら、戦争中は獣国ベスティアの要人だった“狼王”たちや、魔王軍に属していたルリたちが名を連ねているのだから。恐らくは戦争中に人員確保などで組織の基盤を固めて、このタイミングで仕掛けて来たのだろう。
「ラムダ=エンシェント、オレが先に仕掛ける! 貴様は三秒、間を置いてから続け! その手心を加える甘さには期待しているぞ?」
「分かった、一番槍は任せる! しくじるなよ、ルドルフ! 巻き込まないように気は遣ってやる!」
「余計なお世話だ! “光量子充填弾”――――装填! ブースト全開! 唸れ――――“獅子走破”!!」
「主機を舐めんなよ、猫野郎がァ!」
これが『ラストアーク騎士団』が歴史に名を刻む第一戦。
機械天使ウリエルへと挑むルドルフは一度大きく跳躍。そして、空中に滞空している間に脚部に備え付けたアーティファクトの装甲に備え付けた加速装置に“光量子充填弾”を装填してエネルギーを溜め込むと、着地と同時に超加速してウリエルへと喰らいついた。
だが、その速度にもウリエルは難なく反応。手にした大剣を盾のように構えてルドルフの棒による渾身の突きを完全に受け止めた。
「くっ、流石に女神に改良された機械天使だ……随分と反応が良いな……!」
「ハッ、量産型ならともかく、主機は上位機である【大天使】だぞ! アーティファクトを装備したぐらいでいい気になんなや!!」
「量産型とか、上位機だとかは知ったことでは無いな。なにせ、全部破壊して突き進む腹づもりなのだからな! そうだろう、ラムダ=エンシェント?」
「なっ……!? ラムダ=エンシェントの武器に光量子が集束していっている……!? まさかテメェ、最初から目眩ましのつもりだったのか!?」
「お前の言う通りだ、ルドルフ……! 敵がどれだけ強かろうと、多かろうと、そんな事は関係ない……! 立ち塞がるのなら全員、倒すまでだ!! 行くぞ、聖剣解放――――“君臨せよ、偉大なる大帝よ”!!」
だが、ルドルフの攻撃はあくまでも“陽動”である。
ウリエルを討つための本命は俺の放つ聖剣の輝きだ。ルドルフは受け止められるのを前提として攻撃を放ち、ウリエルの大剣とかち合った衝撃で周囲の土を巻き上げて視界を曇らせた。
その瞬間に理解した、ルドルフは最初から俺の大技の時間を稼ぐために行動したのだと。なら、その期待に応えるのが俺の使命だ。聖剣から放つのは集束した魔力による一撃、今の俺が出せる最高火力だ。
聖剣から撃ち出された虹色の光は勢いを増してどんどんウリエルとルドルフに迫っていく。勿論、手助けをしてくれた若獅子を巻き添えにするなんて馬鹿な真似はしない。彼が取るべき行動はもう分かっている。
「このままじゃテメェも巻き添えだぞ、さっさと離れろ! くそッ、いくら主機でもあの出力は回避しなきゃ壊される! 離せ、離せ、離せェェエエエエ!!」
「良いぞ、離してやる。“光量子充填弾”――――装填! 吹き飛べ――――“獅子崩脚”!!」
「グォ……!? なんだ、いきなり主機を蹴り上げて……って、ラムダ=エンシェントの攻撃が此方に来るだと!?」
「残念、最初から聖剣の攻撃範囲はルドルフの頭上、いまお前の居る場所だ!!」
聖剣の光は地上から離れて夜空を目掛けて飛び上がっていく。最初からルドルフの居る場所からは攻撃は逸れるようにしている。
そして、攻撃範囲にはルドルフの開脚蹴りを顎に喰らって打ち上げられたウリエルの姿がある。
俺は味方を巻き込む事はしない、ルドルフは俺が味方を巻き込むような事をしないと確信している。故に、ルドルフはウリエルを頭上に打ち上げて、俺はウリエルが打ち上がる箇所に攻撃を仕掛ければ良い。
即席の連携、それもかつての敵同士の阿吽の呼吸だ。我ながら上出来だと感心してしまう。
「くっ……出力臨界、【オーバードライヴ】発動!! うっ、うぉぉおおおお!!」
そして、ウリエルが打ち上げられた直後、聖剣から放たれた虹色の輝きが機械天使を飲み込んで夜空を引き裂くように登って行く。完全な直撃だ、確かな手応えを感じる。
だが――――
「フッ……甘ぇ、甘ぇ、甘ェェ!! このウリエルがその程度の攻撃で倒されるかァァ!! ノア=ラストアークの造った【大天使】の性能を舐めてんじゃねェェエエエエ!!」
――――それでも尚、半壊しても尚、“破壊天使”の名を冠する機械天使はとまることをしなかった。
聖剣の一撃をまともに受け、駆体はズタボロの状態に。左腕は損失し、右脚は膝から下が消滅、駆体の各部からは回線が損傷した影響で発生したと思われる火花を散らし、砕けたバイザーの下からは鋭く睨む金色の瞳が覗いている。
完全に機能停止寸前な筈だ。しかし、ウリエルは声を張り上げて俺たちを威嚇している。まだ動けるなら諦めないと言うことなのだろう。背部の翼は皇々と焔を荒ぶらせ、右手に握った大剣は太陽のように輝いている。
あれがウリエルの“本気”なのは一目瞭然だ。
「武装変形――――高出力形態へと移行ッ!! 主機は負けねぇ! 敵を倒すことが主機の存在意義! 動力炉、出力臨界! 光量子、収束開始!!」
「マ、マズいですよ、ご主人様!! ウリエルの大剣に集束しているエナジー総量、破邪の聖剣の最大出力を超えています! このまま攻撃を許せば、教会どころか周囲一帯が吹き飛びます!! 玉砕覚悟の自爆攻撃です!!」
「なんだって……! すぐに阻止しないと……!!」
大剣を夜空に掲げて、ウリエルは俺を見下ろしている。彼女は振り上げた大剣に斬り落とすように振って、集束させてエナジーを撃ち出す気だ。
ウリエルが狙う目標は俺だ。そして、俺の背後には多くの避難者が隠れた教会が在る。もしウリエルの攻撃を避けたのなら、教会へ甚大なダメージを与える事になってしまう。彼処には避難者の他にも負傷したオリビアたちが居る。
決して攻撃を許すわけにはいかない。攻撃を放つ前にウリエルを始末しなければならない。そう確信した俺は無意識の内に走り出していた。
「主機たちに敗北は許されない! この世界の秩序を守らなければ、あの世界を滅ぼした贖罪は成されない!! この世界の秩序を乱すなァァアアアアアアア!!」
「ルドルフ、俺を打ち上げろ!! このまま片を付ける!」
「了解した。オレが思いっ切り蹴り上げる! お前はオレの蹴りを踏み台にして奴に向かって跳べ!!」
チャンスは一度きり。俺は自分の右脚をルドルフの蹴り上げた脚に乗せ、彼の蹴りと同時に踏み込みで大きく跳躍、一気にウリエルの元へと跳び上がった。
後は間に合うかどうか。
跳躍の勢いは凄まじく、ウリエルの姿はどんどん近付いてくる。俺にできる事は打ち上げた勢いのまま、下側から斬り上げてウリエルを打倒することぐらいだ。ウリエルが攻撃を放つまであと一秒も無い。
だけど間に合わせる、この命に変えても。
「死ね、ラムダ=エンシェントォ!! 喰らいなァ――」
「――――今だ! 撃ち抜け、サジタリウス!!」
「――――ッ、ァッ……!?」
そして、俺が相打ち覚悟でウリエルに斬り掛かろうとした瞬間、遠方から飛来した銃弾がウリエルの胸部を撃ち抜いて、勝敗は決した。
蒼く輝く一筋の閃光はウリエルの胸の内で光っていた彼女の心臓を正確に撃ち抜き、動力炉を失った機械天使は霧散した焔と共に動きを鈍らせた。
「喰らえ、ウリエル!! 聖剣、解放――――“悲恋の騎士”!!」
「駆体……胸部より下を……損失……戦闘続行……不可。そんな……この主機が……負けた……?」
そのまま振り上げた聖剣の刃はウリエルの駆体を左腰から右脇腹にかけてを斬り裂き、ウリエルの戦闘能力を完全に奪うことに成功するのだった。




