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素人です。お手柔らかに。


 

 私の名前はサラサ。そして、生まれる?前の記憶持ち。しかも、2回分。

 

 1回目少し朧気になっているけれど、乙女ゲームが好きで多分20歳くらいまで生きてた…と思う。

 最後自分がどうなったのか今ではあまり記憶に残っていない。でも、平々凡々な生活をしてたと思う。

 

 2回目、びっくり仰天、1回目の時にやった事のある乙女ゲームの世界にヒロインとして転生してた。

 思い出したのは舞台となる学園に入学する1週間ほど前だった。

 学園に行ってみたら本当にいた攻略対象イケメン4人。

 フラグ回収、好感度上げ、全員分頑張りました。

 イケメン達に朝に昼に夕に口説かれ、彼等を侍らして物凄い高慢な嫌な女をやってたと思う。

 そう、逆ハーレム状態!!

 まぁ、そんなストーリーはなかった気もするけど…。

 悪役と言われてしまうようなポジションの子は居たけれど、別に破滅するような子ではなかったから、彼女のお小言を華麗にかわして、と言うより、キター!イベント!と存分に楽しみましたよ。

 攻略対象達との色々なスチル場面も生だー!とテンション上げて楽しんだよ。

 

 そんな風にお姫様の扱いだった私に暗雲が忍び寄ってた。

 気付いてもいなかったけど。

 学園の卒業。ゲームのクライマックス。

 逆ハーレム状態の私は彼等全員から求婚されて、『誰も選べない、どうしよう~』とのたまった。そして迎えた大団円エンド!

 最高に楽しかった。

 

 けれど、ここは現実。当然のようにその後もある。

 それでも調子に乗っていてその事実に気付いていなかった。

 1人、また1人といつの間にか彼等は国に帰っていた。攻略対象達は全員、色んな国の王族設定。いつまでも卒業した学園の近くになんて当然居られない。

 自分の傍から彼等が離れていって焦ったのはこっちの方。

 焦ったから最後まで傍に居てくれた1人の国へと付いていった。

 

 けれど、彼も当然王族。

 付いていった先の現実は厳しい教育。マナー、ダンス、その国の歴史、友好国の歴史、自国の名だたる貴族の名前や階級、その他にも覚えたりできなきゃいけない事が山積みで私は毎日泣いていた。

 頼りの彼も忙しいらしく中々会えない。会えても勉強の進みの遅さをチクリと指摘される。

 それでも、甘やかしてくれていたとは思う。

 けれど、考えてみて欲しい。

 4人から毎日チヤホヤされてた身としては、そんなのはまるで足りなかった。

 だから、どっかの貴族の『側妃なら、こんな煩わしさから解放される』の一言に飛び付いてしまった。

 別に王妃になりたい訳じゃなかったから。

 彼にそう伝えたら、物凄く落胆された。

 

 そりゃそうだろうと今は反省してる。

 

 それまできっと私を庇って、できるだけ甘やかしていたはずなんだから。それを後ろから切りつけたのは私自身だ。

 けれど、その時はそんな事にも気付けなかった。あれよ、あれよという間に私は後宮に押し込められ、彼は正妃を迎えていた。

 何故か悪役ポジションだった子を。

 

 そして、私は側妃として彼の訪れを待つだけの日々。

 最初の頃こそ結構顔を見せに来てくれていたけれど、いつの間にかその頻度は落ちていて、1年経たない内に訪れが全く無くなった。

 いつの間にやら『忘れられた側妃』と呼ばれて侍女達の陰口の対象になってた。

 

 そうなってやっと、自分の事をしっかりと反省した。

 自分の置かれてしまった立場とか、本当はどうしたかったのかとか、とにかく本当に毎日寂しくて、悔しくて、後悔して、反省して、それしかできることがなくなってしばらくして、私の所に暗殺者が来た。

 きっとそんな頃合いだったんだと思う。

 正妃に男の子が生まれたって報せを聞いた日だったから。正妃の懐妊すら知らなかったのにね。

 

 だから、その時考えたし、祈ったよ。

 『もしやり直せるなら、彼等を攻略しない』って。

 でも、だからって、まさか戻るなんて思ってなんかいなかった……。

 

 何故、何故、同じゲームの同じヒロインだったのかっ?!

 

 今回気付いたのは学園入学の朝。もう逃げることも回避することもできない!彼等との関わりはこの時点で確定した。

 だって、攻略対象4人と悪役ポジションの子1人と、ヒロインのたった6人しかいない研究室になるんだから!

 

 この学園の設定は、魔力の高い人しか入れない魔術学園。そして、身分がどんなものだろうと完全実力主義!だから、彼等はどこぞの国の王子だって隠していたりする。

 実はストーリー進めないと攻略対象達がどっかの国の王子だなんて分からない。私は既に全員が王子だって知ってるけどね。

 ちなみに悪役ポジションの子は1人の攻略対象と双子です。そう、どこぞの本物の王女サマ。張り合う方が実は馬鹿げた話。

 

 私は前回で懲りました。

 そりゃ、逆ハーで皆にチヤホヤされるのは物凄く楽しかったよ?

 だけど、その後誰とくっついてみたって結局、皆は王族。大なり小なり厳しい教育が待ってるのは火をみるより明らか。

 彼等も見た目は最高だし、ヒロインに向けられる性格だって悪くはない。けれど、自分の全てを捧げて尽くせるかと聞かれたらノーなのです。だって、前回焦って付いていった彼は確かに私の最推しだったはず。

 なのに、結果は悲惨だった。推しに対してもあんな風に自分に甘い判断しかできないのなら、誰を攻略しても事態は前回と変わらないと思う。

 やり直せるなら、誰も攻略したくない。

 贅沢したい訳じゃない。貧乏はイヤだけど、そこそこの幸せを望む。王妃とかそんな重責背負いたくない。貴族とかも面倒そうだからイヤ。

 

 何故かもう1回やり直さなきゃいけないみたいだし、仕方ないからもう腹をくくって、攻略しない!ストーリーを無視!をモットーに生き抜くぞ!

 

 


 ストーリーを無視できるのか手初めの実験として出会いイベントは丁度いい。

 彼等と鉢合わせないように学園内にある小さな庭園に隠れていた。

 ストーリー上、彼等と会うのは門から校舎に続く道だ。次々にまるで示し合わせていたかのように彼等は来るのだから冷静に考えればおかしな話だ。

 ただじっとひたすら時間が過ぎるのを待つ。

  

 

 「ふっふっふ~」

 

 そして、私はその結果に満足していた。

 彼等と入学式前に顔を合わすイベントを徹底的に避ける事ができた!

 彼等全てを躱す事に成功した私はその場で小さく喜びを噛み締めていた。

 

 「君、さっきから面白いね。」

 

 唐突に声をかけられた。

 へっ?!と思って顔を上げると見たことのない綺麗な顔立ちの男の子がくすくすと笑いをこらえるようにそこにいた。

 

 「え…だ、誰?」

 

 「あ、僕、…僕はえーと…ルイ…ス、だったかな?」

 

 「…かな?って自分の名前も分からないの?」

 

 怪しい、イケメンだけどなんだろう、この登場の仕方…。記憶に引っ掛からないという事はストーリーに関係無いって事なんだろうけど…。

 

 「いや、あんまり興味が持てなくなってたからさ。…うん、でも君は面白いと思うよ?」

 

 「…変なの。じゃ、私は行くから。」

 

 うん。なんかちょっと関わるのはやめておいた方が良さそう。

 そう思うからこそ自分は名乗りもせずに離れようとしたのに、すぐにルイスは追いかけてきた。

 

 「待って、入学式に行くんだよね?僕も今日入学だから一緒に行こうよ。」

 

 「えー。」

 

 折角、彼等をやり過ごしたのに面倒なのが引っ掛かかった気がする。

 でも、ルイスは記憶に引っ掛からないし、彼等を避けるのに使えるかも…。

 

 「……まぁ、一緒に行ってもいいけど…。」

 

 けっこう失礼な理由で一緒に行くことを了承したのだけど、ルイスは楽しそうに笑っているし、ま、いっか。

 

 

 入学式、席は特に決まっていないので、何故か纏まって座っている攻略対象達から離れて座る。

 入学式自体は特に代わった事はしないけれど、その後にこの学園恒例の魔力量を可視化する儀式がある。実力主義らしくそれぞれの力を皆に示すのが目的だ。

 要は平民以下の者が上のクラスに行っても実力示せてるから侮られないだろ、とそういう意図もあるらしい。

 うん、平民出身の私向けの救済措置だね。

 とは言っても基本、魔力量の高い人は大体が身分も高い。身分が低くても魔力量が高い人は存在するけれど、そこまで多くないというのが現実だったりする。

 この学園は入学から卒業までの衣食住全部無料だったりするので、魔力量のある人ならどんな身分だろうと受け入れる。と言うより入らなければいけないという強制制度がこの世界の常識だ。

 

 …私はまぁヒロインなだけあって魔力量はチートなのだ…。

 

 

 座った順に魔力量を皆に示していく儀式が始まった。

 やることは簡単で大きな水晶っぽい魔道具に魔力を通すだけ。そうすると、魔力量に応じて光ってくれる。ちなみに属性という考えはないけれど、それぞれの個性で色付く事もある。

 人のを見てる分にはとても幻想的なのだけど、自分もやんなきゃならないのは正直イヤだ。

 

 「…はぁ…。」

 

 知らずため息が出ていた。

 

 「なんだか辛そうだけど具合でも悪いの?」

 

 隣にいたルイスにため息を聞かれたらしく、心配そうにこちらを見ている。

 

 「…そういう、訳じゃないから大丈夫。」

 

 「そう?…あ、どこぞの王子サマ達の番だよ。」

 

 「本当だ…。……って、え??」

 

 確かに攻略対象達の順番になっていたけれど、この時点で彼等は誰も身分を明かしていないはず。

 なのに、何でルイスは知っているんだろう?

 

 魔力量を測定するための壇上で攻略対象の最初の1人が手をかざすと、それなりの量を示しているから会場はざわめいているけれど、私はそれどころじゃない。彼等が測定している間、何も言えずただルイスを凝視してしまっていた。

 ルイスは気付かずにずっと壇上を見ていたけれど、彼等の測定が終わると、こちらを向いてそして、にこりとした。

 

 「そんなに見つめられると照れちゃうよ。」

 

 少しも照れているように見えない。それでも目を離せずにぐるぐる考えていると、不意にルイスはこっちに体を寄せてきて囁いた。

 

 「…なんか僕、君に一目惚れしちゃったかも。」

 

 「は、い?」

 

 展開に着いていけない…。どこにそんな要素あった?

 私が知らない、もしくは思い出せないだけで隠しキャラですか、この人?隠しキャラならルイスもどっかの王族ですか?だから、攻略対象達と面識あったとか?そういうこと?

 でも、ルイスなんて見たことも聞いたことも無いんだけど??

 

 「ふふっ、驚いた?…けっこう本気なんだよ?よかったら名前も教えて?」

 

 「…え?あれ?…私、名乗ってなかったっけ?」

 

 なんだか物凄く間抜けな会話になってないだろうか?

 

 「うん。ね、名前何て言うの?」

 

 なんだか囁きが甘いけれど、これくらいでは怯んだりとか赤面とかできない…。

 悪い意味で口説かれ馴れてる自分が悲しい…。

 

 「…サラサ…。」

 

 とりあえず名乗っておかなきゃダメな気がして答えれば、ルイスは嬉しそうな顔になった。

 

 「サラサ、よろしくね。」

 

 何て答えればいいのかなんて分からない。曖昧な顔をしていると思いながらもルイスから視線を逸らした。

 ただ、意味が分からなさすぎて、思考だけがぐるぐる巡る。

 

 いつの間にか自分の番まで回ってきていて、仕方なく壇上の魔力測定器に手をかざす。

 途端に物凄く明るく光り、それだけでなくゆらゆらと、たゆたう虹色の光も混ざる。

 見てる人達から感嘆の声が聞こえてきたのでさっと手を引っ込める。壇上から一礼して逃げるように席に戻った。

 その時に攻略対象達から見定められるような視線を受けた気がした。

 

 席について一息つく間もなく、再び会場がどよめいたので、視線を上げれば、ルイスが魔力測定器を私並みに光らせていた。

 

 「え?…なんで?」

 

 ストーリー上、ここで一番あの測定器を光らせるのはヒロインである自分。次は攻略対象達のはず。けれど、ルイスは攻略対象達より光らせている。もしかしたら私とあまり変わらない。

 

 いなかった。そんな存在は前回もその前の記憶にあるストーリーにも絶対にいなかった。

 ここは似ているけれど全く違う世界ということなんだろうか?

 

 隣の席に戻ってきたルイスににこりと微笑まれたけれど、私の頬は引き攣っていたと思う。



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