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瀬戸内今昔物語  作者: 森村征爾
第一章 少年編
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冒頭 久遠の想い

夕暮れの防波堤に一組の老夫婦が座っている。

お互い残された時間は有限を意識してしまう。


「変わらない景色ですね、あなた」

夕日が沈み始めている、妻は隣に座った白髪交じりの夫に話しかける。


「ああ、海と夕日だけは変わらないな」

防波堤の下から海水が当たるたびにちゃぽっと音がなる。

少しはなれた場所から郊外列車が発車し笛が鳴っている。


「この場所から始まったのよね、私たち…。」

手を繋いだりはせず長年連れ添ってきた距離で座ったまま話しかける。


「ああ、ここで出会えた。」

二人で過ごした出来事を思い出しながら何度も頷いている。

「今もこうして過ごせている。」


夕日が沈んでも二人は並んだまま座り、水平線に浮かぶ島々を眺めていた。

いつまでも…。

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