4話 振り向くな、前へ進め!!
ドオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォン!!!
凄まじい轟音が会議室に響き渡った。
「~~~~~~~~っ!!」
当然ながら、拳から激痛が走る。叩いた手から痛みが走った。
「痛い……」
ものすごく痛い。涙が出そうなくらい痛い。
「はあぁ……」
私はゆっくりと拳を引っ込めた。
「よし」
スッキリした。とてもスッキリした。
胸の奥に溜まっていたモヤモヤが綺麗さっぱり消えていた…ーーー痛みと引き換えに。
本当だったら、この拳で逃げたあの父親を一発ぶん殴りたかった。
だが、今はそれでいい。
一刻も早く儀式の準備に向かわなければならない。
国の命運がかかっているのだから。
「……あっ」
私はあることを思い出した。
「扉、開けっぱなしだった」
王女たるもの、そういうところはきちんとしなければならない。
私は急いで扉へ向かった。そして……ーーー。
パタンッ!!
静かに閉める。小気味よい音。
「これでよし」
完璧だ。我ながら感心する。
「うん。実に良い仕事をした」
王族の鑑と言っても過言ではない。
そう満足して振り返ろうとした瞬間ーーー。
ガタァァァアアアアアアアアアアアアン!!
「.............」
会議室の中から何かが倒れる音がした。
「....気のせいだろう」
よくあることだ。私は歩き出した。
ベキ....ミシィ......バキイィィィィィィィィン!!!
「.............」
何かが壊れる音がした。
「…………………気のせいだろう」
木材の収縮とかそういうやつだ。
「よく知らないけれど....たぶんそうだ」
私は歩く速度を少し上げた。
ガシャァァァァァァァァァァァァァアアアン!!
「.............」
今度は何かが盛大に落下した音だった。
恐らくシャンデリアだろう......ーーー天井から吊るされていた大きなやつ。
「だが、確認してはいけない」
絶対に.....何があっても....ーーーー。
「確認してはいけない!!」
私はさらに歩く速度を上げた。
「急がなければ」
そうだ。
今は儀式だ...勇者召喚だ...ーーー国家存亡の危機だ!!
私がこんな場所で足を止めている場合ではない。
「急がなければ」
歩く。
「急がなければ...」
早歩きになる。
「急がなければ........」
ほぼ小走りになる。
「急がなければ、急がなければ.......急がなければ!!」
気づけば全力疾走だった。
スカートの裾を持ち上、廊下を駆け抜ける。
ミシミシミシィ......
「.............」
背後からは...ーーーーー。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ.........
という非常に聞き覚えのある嫌な音が聞こえていた。
だが、聞こえてない…私は聞いていない。
聞こえたとしても聞いてない。なぜなら……ーーーーー。
「王女だから」
ズゴオオオォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
そして城全体を揺らすほどの轟音が響いた。
「聞いてない」
私は走った。
「聞いてない」
ただひたすら走った。
「聞いてないったら........聞いてない!!」
振り返るな。立ち止まらるな。現実を見るな!!
それが今の私にできる最善だった。
「私は遅れているのよ!」
自分に言い聞かせるように叫ぶ。
「要である私がこんなところで時間を使っている場合じゃない!」
その通りだ。
「私は悪くない……決して悪くない!!」
たぶん、恐らく、きっと、願わくば。
だから……ーーーーーーー。
仮に会議用テーブルが粉砕されていたとしても。
その衝撃で床が抜けていたとしても。
ついでに会議室そのものが崩落していたとしても。
それは私の知るところではない……断じてない!!
私は何も見ていないのだから。
「……そうよ」
私は力強く頷いた。
「これは現実逃避ではない」
違う。断じて違う。
「そうよ。未来へ向かっているのだ」
希望のために…世界を救うために…勇者を召喚するために。
私は城の最上階ーー儀式の間を目指して走り続けた。
後ろで何かが大変なことになっている気がしたが。
そんなことよりも。
今は未来だ……未来を見なければならない。
決して後ろなど振り向いてはいけないのだ!!!




