えじ
部屋の外で突然、ドアをノックする音がした。ローは一瞬警戒したが、聞こえてきたのはカオの声だった。
「その、起きてる?」
カオはドアの外に立ち、水を換えるために水盆を持っていた。しかし、ジョンは異常なほど警戒心を露わにした。彼はドアの外にいる者が自分を世話していたことを知らず、もし誰かに自分のこんな姿を見られたと知ったら、激しく怒るだろう。
ローはジョンのそんな様子を見て、どうすべきか理解していた。彼はドアを開けた。
「なぜここに来た?ここは殿下の部屋だぞ。」
カオは最初、なぜそんなことを言うのかと戸惑ったが、すぐにジョンが起きていることに気づいた。
だから彼はすぐに口調を変え、ローの信頼と自分を守るためにこう言った。
「すみませんでした!部屋を間違えたようです!殿下を邪魔してしまい、申し訳ありません!」
カオは恭しく退いた。ローが彼が去るのを見届け、ようやく一息ついて静かにドアを閉め、ジョンのそばに戻った。
「あの男は誰だ…」
ジョンは他人に邪魔されたことに苛立ち、ドアを睨みつけていた。こんな姿を他人に見られたくなかった。
それは自己防衛からくる凶暴さだった。他人に恐ろしいと思わせ、近づかせないようにしているが、本当は自分がもっと怖がっているのだ。
「ただの城の使用人だよ。」
ローはそう言った。ジョンが少しでも安心できるように、そしてカオがかつて自分を助け、ジョンが熱を出していたときに一緒に世話をしてくれたことを思えば、二人を傷つけたくなかった。
「もしあいつにこんな俺を見られたら…殺すぞ…」
その一言。やはり、ジョンは自分のこんな姿を見た者を皆殺しにするのだ。ひどく敏感になっていた。いつからか、彼は狂ったように自分を麻痺させ続けていた。
毎日食べ物を口にしているのに、体はどんどんやせ細っていく。最初は肉を食べられたが、だんだん野菜しか食べなくなり、しまいには野菜も食べられなくなった。今は水を飲むだけだ。
「……殿下…もう何日も何も食べてない…食べさせないと…」
「嫌だ…」
ジョンは全身で拒絶した。こんな「食事」がたまらなく嫌いだった。命をつなぐためだけの行為なのに、ひどく苦痛だった。食べる前の嫌悪感が、いつも湧き上がってくる。
「……殿下、すみません。食べさせます…」
ローはジョンのそんな拒絶に慣れていた。毎回、異常なほどつらい思いをする。ローにとってもジョンにとっても、こんな当たり前のことが、こんなにも難しい。
パンか?野菜か?魚か?それとも薄いスープか?
ここにあるのはそれだけの選択肢だ。パンはひどく乾いて、野菜はびしょびしょで、魚は生臭い。
目の前の食べ物を見ると、残っているのは冷めたスープだけだった。だが、そのスープはひどく見苦しく、表面には膜が張っていた。
「ロー!食べたくない!何も食べたくない…俺に逆らうのか!」
「殿下…何も食べなかったら死にます…」
ローは一番食べやすそうなスープを手に取り、表面の膜を取り除いて、ゆっくりとジョンのそばに近づいた。
だが、ジョンは後ずさりし続けた。しかし、ベッドの背もたれの後ろにはもう退く場所がなく、スープの入った碗をじっと見つめた。
「嫌だ…飲まない…気持ち悪い…」
彼はひどく拒絶した。食べ物がこんなにも苦痛で、まったく食べたくなかった。そしてこの過程――
まるで拷問、まるで残酷な刑罰のようだった。
「早く持ってけ!頼む!ロー…頼むから…」
命令から懇願へ。その落差。目には涙が浮かび、懇願の光が宿っていた。あまりにも弱々しく、拒めないほどだった。
気持ち悪い、気持ち悪い、めっちゃ気持ち悪い――




