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ランクチェス王記  作者: 北川 零
第一章 ヨハン親王
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閉ざされた時を開く

ローは動揺することなく、その動作はとても慣れたものだった。だが、荒々しい動作の中にも優しさが垣間見える。いつもこうだったが、毎回心はこんなにも痛む。


「やめて!うっ!」


ジョンの肩を押さえつけ、どうあがいても逃れられない。力はすでにできる限り抑えていたが、こんなにも弱った彼には抜け出すことはできなかった。スープを口に流し込まれ、顔を背けようとしても、碗が口に押し当てられ、スープは止まることなく流れ込んでくる。


吐きそうで、苦しい。それ以外のことは考えられない。いや、この二つの思いしか残っていなかった。

ローを手で叩いても、痩せ細った腕では力が出せず、病による虚弱さも加わり、ローの体に当たっても何の感触もない。ただの無駄な抵抗だった。


スープを飲み終えると、咳き込み、喘ぎながら、苦しそうに口を押さえた。まるで内臓まで咳き出してしまいそうだった。


「殿下、もう終わりました…」


ローの給餌の任務は完了した。これはやむを得ないことだった。いや、命令だ。絶対的な命令だった。


「ロー…」


「申し訳ありません。これは殿下がずっと出してきた命令であり、俺の務めです…」


なぜこんなことを言うのか。そうだ、俺が彼にそう命じたんだ。


あの時…。


王宮の寝室は静寂に包まれていた。灯り一つなく、厚いカーテンが閉じられ、陽の光さえ差し込まない。真っ暗闇の中、ただ一人、白い礼服を身にまとった者がベッドに座っていた。


闇が彼を覆い、自分も他人も見えない。そこにあるのは永遠の「黒」だけ。


その時、ドアの外からノックの音が響いた。何度か叩かれたが、返事はない。


「殿下、入ってもよろしいでしょうか?」


男の声が聞こえたが、やはり返事はなかった。まるで部屋には誰もおらず、空っぽの空間のようだった。

だが、ドアが開けられ、外からの光が眩しく差し込み、彼の背中の白い服を照らし出した。


しかし、彼はうつむいたまま、白い手袋にべっとりと付いた血を見つめていた。血痕ははっきりと、まるで焼き付けられたようにそこにあった。


見たくない。闇の中なら見えなかったのに。なぜ見なければならないんだ。


「殿下、4日です…4日間、ここに閉じこもっているんですよ…」


たった4日か。なぜこんなにも長く感じるんだ。苦しみが消えると思ったのに、時間が短すぎたのか。

いっそこのまま餓死すればいい。悪くない気がする。ナイシャのところに行けるなら、きっと幸せだろう。


なぜこんな華やかな服が赤く染まってしまったんだ。こうなるはずじゃなかった。この服はこんなにも美しいのに、結婚の時に着るはずだったのに、なぜ葬送曲に…。


「4日間、何も食べていないんです…」


食べる必要なんてない。少しも腹が減らない。食欲なんて閉ざされ、ただ苦しむ感情だけがある。

なのに、体は勝手にむかむかとえずく。何も食べていないのに、なぜえずくんだ。ありODE


System: 不可能だ。そんなことはありえない…。

でも、なぜか上腹部がひどく痛む。


「殿下!大丈夫ですか!」


その男は心配そうに声をかけ続けた。でも、俺には彼がうるさいと感じる。なんて煩わしい奴だ。静かにしてほしい。ずっと、ずっと静かにしてほしい。こんなに騒がしくしていいのか?本当にうるさい、蝿みたいだ…。


あの男はどこに行った?俺の従者だと言ったじゃないか。病気でもあるのか?そばにいないなんて。殴ってやりたい…。


「ロー呢…」


「ローは今、『休息』しています…彼の顔の傷、誰がこんなひどいことをしたのかわかりません…」


俺の手にはこんなに血が付いている。そうか、ナイシャだけじゃない。周りの人間も傷つけてきた。どうやら俺は地獄に落ちるしかないらしい。

じゃあ、なんでまだここにいるんだ。もうすべて終わったのに。彼も去ったのに、俺はまだこんな平穏な場所にいる。

どうせ血にまみれているんだ、もうどうでもいいじゃないか――



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