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勇者が二人産まれたら  作者: みそすーぱー


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83/83

#83 お姫様の自問

閲覧いただき、あひりがとうございます。

みそすーぱーです。

noteにて、本作を要約したあらすじを公開しています。

復習などにご活用ください。

https://note.com/miso_soup_er/m/m0e9e0ffa3562


以下、前回の内容を覚えていらっしゃれば、本編までお読み飛ばしください。


~前回のあらすじ~

突如現れ、いくつも疑問の種を残して去っていった。元老院の一人”ムータオヒカ卿”。

スウォルとシェリルは質問を重ねるうち、ガガーニムから元老院しか知らないという機密事項を明かされる。

”ダヲジア卿の死亡は確認されていない”と。

「…行方不明、っすか?」


 ガガーニムの前任者”ダヲジア卿”の死亡が確認できていないと聞き、スウォルが呟くと、ガガーニムは静かに頷いた。


「如何にも。ご遺体は未だ、発見できておりません」

「では…クレン様が仰っていた、この一年でいなくなってしまった三人のうちのお一人が、そのダヲジア様なのですね。住人の方に伏せているのは…」


 リリニシアの確認にも、やはりガガーニムは静かに答える。


「昨日も申し上げた通り、シャファルノールの民の間では”忘敬者の仕業”という噂が広がっております。そんな中で、”元老院の一人までもが消えた”と知れれば──」

「対立の激化は避けられない、ということですわね」

「あるいは、”元老院までも手に掛ける忘敬者”に恐れを抱くか。…いずれにせよ、その先に望ましい結果はないでしょう」

「望ましい結果…かぁ…」


 スウォルがガガーニムの言葉を繰り返し、腕を組んで考え込む横で、リリニシアは質問を重ねた。


「そのような重大な機密を、なぜワタクシたちに?」

「私がダヲジア卿を手に掛けていない証拠を提示できない以上、私に出来る形で誠意を示すより他ないと考えました」

「誠意、ですの」

「ヤクノサニユの姫君、そして”予言の勇者”ともあれば、この情報の重みを理解し、みだりに口外はしないだろうと…お二人を”信用”してのことです」

「…信用いただき、光栄です。──もう一つだけお伺いしたいですわ。ガガーニム様が答えをご存知かは分かりませんけれど」


 リリニシアは深く頭を下げた後、話題を変える。


「なんでしょう」

「あの方はそもそも、何をしに、ここにいらっしゃいましたの?ワタクシたちのことを知っていて来たようではありませんでしたけれど、伝えておりませんでしたの?」


 質問が想定外だったか、ガガーニムは一瞬口ごもった後、困ったように眉を歪めた。


「…順番にお答えしましょうか。まず召集についてですが、間に人を介するため、情報の漏洩を避けることを重んじております。具体的な内容は伏せ、ただ”集まって欲しい”ことだけを書簡で伝えるのが、元老院の(なら)わしなのです」

「へぇ〜…先に内容知ってた方が、話早そうなのになぁ」

「同感ですが、先程の件のように、民に知られては困ることもございますので」


 スウォルの単純な感想に、ガガーニムは頬を緩ませ、答える。


「自国の民を疑わねばならないのは悲しいことですが…必要なことではございますものね。あの方の目的については?」

「正確なことは分かりかねますが…私を非難したいが為だけに来たのかと」

「…その為だけに?」


 予想だにしない回答に、リリニシアはポカンと口を明け、首を捻った。


「ご覧いただいたように、私は大層、彼に嫌われている様子でして…。ムータオヒカ卿の望みは、私が自主的に元老院を降りること…でしょうな」

「つ、つまり…ガガーニム様が自分から辞めたくなるように、イビリに来た…ってことかよ…?」

「恐らくは…」


 リリニシアと同じく”信じられない”という思いを隠さず、思わず馴れ馴れしい口調で質問を重ねてしまうスウォルに対し、ガガーニムは重々しく頷く。


「信じらんねぇ…。元老院って国で一番偉いヤツの集まりなんじゃねぇのか?そんなガキみたいな…」

「私も、可能ならば信じたくはございませんが…あの様子ですから…」

「スウォルにガキ呼ばわりされるようじゃ、おしまいですわね…」

「…お?なんで急に俺のこと刺した?」

「けれど、ワタクシも同感ですわ。内心で何を思おうが勝手ですが、せめて表面の立ち居振舞いくらいは取り繕って欲しいモノですわね」

「刺すだけ刺して無視か?ん?」

「…ふっ」


 せっせと噛みつくスウォルと、それを意にも介さないリリニシアを見て、ガガーニムは頬を綻ばせた。


「あ!?ガガーニム様まで!?」

「え?あ、いえ、違います!”幼馴染みというだけあり、気の置けない間柄なのだろう”と微笑ましく思っておりました」

「…そうですわね」


 リリニシアが一瞬、視線を伏せ言葉少なに頷くと、ガガーニムは明後日の方向に顔を向け悲しげに目を細める。


「…ムータオヒカ卿にもお二人のような、親しい友がいれば、ああも歪まずに済んだのかもしれない、と」

「友達、かぁ…。考えてみたら俺も、姉ちゃん以外で歳が近いヤツと遊ぶ機会なんて、リリニシア以外は少なかったなぁ。…ま、リリニシアほどじゃねぇと思うけど?」


 スウォルは先ほど刺された反撃とばかりに、リリニシアの交遊範囲の狭さをチクリとつつくも、望んでいた反応は返ってこなかった。


「…」

「あれ?リリニシア?おーい?」


 リリニシアは思案に耽る。



気の置けない…本当にそうなのかしら。

お祖父様への不審といい、崖から落ち、ワタクシを救った時の()()姿()といい…ワタクシは、スウォルに()()()()()()()()()()


昨日、"人から感じたことのないニオイ"についての会話を遮ってしまったのもそう。

もし()()姿()になってしまったことで、そのニオイを発する様になってしまったのだとすれば…以降、レピさんはまだ会っていないのだから、指摘されてなくて当たり前。


ラツンジパさんはニオイに対して何も言及されませんでしたが、嘘を見抜けないのと同様、それも"未熟であるが故"だとしたら…可能性は否定できない。


会話が続き、スウォル自身に()()姿()のことが露見することを恐れ、自分でも強引だと感じるような遮り方をしてしまった。

再会を待ち望んでいたはずなのに…レピさんに限っては、スウォルと会わせるのが怖いですわ。


ワタクシは本当に…スウォルの、気の置けない友人を名乗る資格があるのでしょうか。



「リリニシアさーん?」

「…え?あ…な、なんですの?」

「なんだよ、急にボーッとしちまって」

「いえ、その…つ、疲れが出てしまっているのかもしれませんわ。おほほ…」

「おいおい、大丈夫か?」


 リリニシアが笑って誤魔化すと、ガガーニムは少しの間を置き、微笑みながら頷いた。


「…ヤクノサニユからここまでの旅路で蓄積した肉体の疲労、お仲間と分断された精神的な磨耗に加え、ようやく腰を落ち着けたと思えば不慣れな洞窟(環境)と来れば、それも無理からぬことでしょう」

「情けない所をお見せし、お恥ずかしい限りです」

「そのようなことは。…しかし、私がいては気が休まらぬ、というのも確かでしょう。──私は少しばかり外しますので、しばらくはお二人で、心身をお休めください」


 スウォルはガガーニムの提案に、申し訳なさそうに頭を掻きながら答える。


「え、でも悪いですよ。ここ、元々ガガーニム様が先にいたのに…」

「気になさる必要はありません。私も少々、会議に向けて備えたいこともございますので」

「そ、そうですか?けど…」

「スウォル、ここはお言葉に甘えさせていただきましょう」

「リリニシア…。じゃあその、すみません。場所、お借りさせていただきます」

「えぇ、どうぞごゆっくり。…ではお二方、また後程」

「ありがとうございます」


 声を揃えた二人の礼を背に受け、ガガーニムは洞窟から姿を消した。


「ふぅ…。正直、助かるな…。いくらか話してて楽になっては来たけど、やっぱちょっと緊張するし…」

「そう…ですわね…」


 ため息と共にボヤくスウォルに、リリニシアは言葉少なに答えると、再び意識を集中させ、思案にのめり込む。



政治的な意図があるとはいえ、生半可な腕で元老院からお声が掛かるとは思えない。

クレン様との気安いやり取りにも、そうした”引け目”のようなモノは感じられなかった。


ガガーニム様もルヴィニケンプ様や…明言はいただけていませんが、クレン様と同様に、その内容までは分からずとも、”嘘を見抜く”一流の魔術師だと考えるべきでしょう。

──つまり、先ほどワタクシが言った、”疲れが出た”も嘘だと理解しているはず。

…いえ、疲れていること自体は間違いないのですけれど。


それを理解した上で席を外した、ということは…ワタクシとスウォルに、”ガガーニム様の前では出来ない話”をさせようと誘導している…?

だとしたら、目的はいったい…?

盗み聞き?それともなにかしら、この洞窟内での出来事を察知する手段が…?


…個質魔術?

”年齢を変化させる”なんて荒唐無稽が存在する以上、そんな個質魔術はありえない、等とは到底言えない…!

ガガーニム様は使えないと言っていましたが、他に協力者がいれば…いえ、そもそも使えないというのが嘘である可能性も──。



「なぁ、リリニシア」


 疑心暗鬼に陥りかけるリリニシアの思考に、スウォルが割り込んだ。


「…なんですの?」

「ガガーニム様さ、ダヲジア卿?って人が行方不明になったことがバレたら、”望ましい結果にならない”っつってたよな」


 リリニシアは、スウォルが下手な事を口走ればすぐに止められるよう、心の準備をした上で先を促す。


「えぇ、おっしゃってましたわね」

「ガガーニム様の言う”望ましい結果”って、どんなんだろうな?」


────────


 スウォルが抱いた素朴な疑問をリリニシアに投げ掛けるのと同じ頃、すっかり日が落ち、人気のいない深い森の中で、ガガーニムは一人の老婆と言葉を交わしていた。


「私が任命された時以来ですな、本来のお姿を拝見するのは。──メジャルカ卿」

「少々長い時間、余りに若くなりすぎた。しばらく…明日の昼頃までは使えぬ故な。お客人方はどうなされた」

「お二人の時間を設けて差し上げようかと」

「ふん…。して、儂に何用か。ジスタム卿」


 ”気遣い”を鼻で笑うクレンに、ガガーニムは動じることなく、淡々と告げる。


「ムータオヒカ卿が尋ねて参りました」

お読みいただき、ありがとうございました。

よろしければ評価・ブックマークなどお願い致します。

また温かいご感想は励みとして、ご批判・ご指摘・アドバイスなどは厳しい物であっても勉強として、それぞれありがたく受け取らせていただきますので、忌憚なくお寄せいただければ幸いです。

次回は7月13日19時にXでの先行公開を、14日19時に本公開を行う予定です。

よろしければフォローいただけますと大変嬉しいです。


~次回予告~

真の姿を晒すクレンに、ガガーニムは訪れたロガーメーポの言動と、気掛かりを伝える。

その翌朝、シェリル、レピ、リエネの前でラツンジパは、目と鼻の先に差し迫ったシャファルノールを前に”気が重い”と漏らす。


次回「正常と異常」

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