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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
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097 少年

 Aクラスの少年は、自分の置かれている状況を理解できずにキョロキョロと周囲を見回した。

 そして、再度私の方を見る。


「僕は金属系のスライムと戦ってたと思うんだけど……あれは夢だったのかな?」

「いや、夢じゃないよ。あなたは武器を取り落として攻撃を受けて気絶したの。たまたま通りかかった私が助けてここまで連れてきたんだよ」

「えっ!?じゃあ、あのスライムを君は倒せたのかっ!?」

「うん、倒したよ」

「そ、そうなんだ……。いや、助けてくれてありがとう」


 私が金属スライムを倒した事が信じられないみたいだ。

 うーん、私ってやっぱ弱そうに見えるのかな?

 今黒髪にしてるから、尚更そう見えるのかも知れない。

 前世でも黒髪は真面目な優等生のイメージだったし。

 威嚇するような赤に染めたろか?


「それにしても、何であんなところにいたの?金属スライムは、スキルの相性が良くないと倒すの大変だと思うけど」

「あぁ、あのダンジョンには何か伝説の武器があるらしいから。それで、なんとか頑張れば倒せるかなぁ?と思って入ってみたんだ」

「一匹であんなに苦戦してちゃ、とても最下層は行けないと思うよ。伝説の武器のある部屋の前には数百匹の金属スライムがいるから」

「ええっ!?そ、そうなんだ……。ん?なんでそれを知ってるの?」

「あっ……」


 うっかり喋っちゃったけど、仮にも伝説の武器なんだからあんまり持ってる事を吹聴しちゃダメよね?

 まだぼっちさんの強いとこ見てないから伝説の武器(仮)だけどね。


「おい、何故か今イラッとしたんだが、何考えてやがった?」


 ぼっちさんうるさいよ。

 ぼっちさんは私の耳元で声魔法を使ってるから少年には聞こえないだろうけど、私は返事すると声に出ちゃうんだからね。

 妖術で伝心使っておくんだったよ。

 今から使うと怪しまれちゃうじゃん。

 少年は何か怪しいものを見るように、じっと私を見つめている。

 何よ、惚れたの?

 また一人いたいけな少年を虜にしてしまったか……。


「今度はアホな事考えてるだろ?何となくお前の思考読めてきたぞ」


 ぼっちさん、後でシメるからね。

 そして少年は意を決したように口を開く。


「あの、君ってどこかで会った事ない?先日の学園で会った以前に……」


 え?何、ナンパ?

 私って罪な女ね……。


「絶対ナンパじゃねーと思うが、面白いから続けろ」


 おいこらぼっちさん、何で私の思考読めるようになってんのよ?

 え?顔に出てる?

 そんなばかな……。


「変な質問だけど、魔王の治める領地に行ったことあるかな?僕はそこで君に似た女性に助けてもらった事があるんだ。その女性を探してるんだけど……」

「残念だけど、魔王の領地なんて行った事ないよ。たぶん人違いかな」

「そ、そっか……」


 この大陸の各地を放浪してたけど、行ったのなんて獣人国と闇王国ぐらいだし。

 獣人国は近くに行っただけで、足を踏み入れてもいないし。

 そもそも、魔王の領地なんて危険なとこに態々わざわざ行かないよ。


 さて、お腹も減ったし、早く帰らないと学園始まっちゃう。

 せめて朝ごはんはちゃんと食べたいところだ。


「じゃあ、私はもう行くね。勇気と蛮勇は違うんだから、無理しちゃダメだよ」

「あぁ、うん。ありがとう……」


 なんかまた寂しげな顔をしてしまっている少年を置いて、私は帰路についた。

 あ、彼の名前聞くの忘れた。

 まぁ今後関わる事も無いだろうし、いっか……。


「あいつ、魔王の領地に行った事があるって事は、勇者じゃないのか?」

「えー?勇者とか魔王なんて、そうそう会えるもんでもないでしょ」

「いや、俺の元所有者は勇者だし」

「へぇ、そうなんだ。そんなプレミア付きだと高く売れそうだね」

「だから、売ろうとすんなあああああぁっ!!」


 耳元で声魔法の音量上げないでほしい。

 耳痛くなるんですけど?


「勇者でも金属スライムって倒せないもんなの?」

「召喚された勇者だとしたらあんなもんだぞ。この世界の生まれで勇者になる奴らが異常に強すぎるんだよ」

「そもそも彼って、本当に勇者なの?黒髪だったから召喚された勇者だと思ってる?」

「それもあるが、あいつの喋り方は召喚勇者のパッシブスキルである『異世界言語理解』っぽかったんだよな」

「あぁ、ひょっとして王女様が言ってた『帝国の勇者』って彼の事かな?」


 流路はそれなりに強い感じだったけど、たぶん強化前の閃紅姫レイアさん程ではないと思う。

 レイアさんなら無理矢理でも金属スライム倒せちゃいそうだもんね。

 でも帝国の勇者だとしたら聖女同様に面倒くさそうだから、なるべく関わらんどこ。


 ぼっちさんと話しながら歩いていると、程なくして家にたどり着いた。

 屋敷の玄関付近まで来たところで、突然大きな音とともに玄関の扉が開いてキャサリン姉が飛び出してきた。


「ご、ごめんなさい……ちょっと帰り遅くなって……」


 説教を回避しようとすぐに弁明し始めたが、突然ガバッとキャサリン姉に抱きしめられた。


「無事で良かった……」


 必ず初めに説教が襲ってくると思ってたのに、不意打ちされた私はしばし呆然と立ち尽くした。

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