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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
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98/258

098 家族

 両親が帰って来なくなってから、家族って感覚が麻痺してたような気がする。

 でも、本当は求めていたからこそ、それを感じないようにしてたのかも知れない。

 キャサリン姉のゴツい腕が妙にあったかくて、一筋の涙が流れてしまった。


 ひとまず家に入ると、今度は吹雪(ふぶき)が目に涙を浮かべて抱きついてきた。


「よかったです。主殿に何かあったのかと……」

「ありがとう、吹雪。とりあえず大丈夫だから」


 嬉しい反面、吹雪の胸に埋もれてちょっと溺れかける。

 柔らか苦しい……。

 一旦落ち着くために談話室に移動して、お茶を入れてもらった。

 談話室のソファーでは、待ちくたびれたらしいユユちゃんが眠っていた。

 吹雪の話では、「自分もお姉ちゃんが帰ってくるまで待つ」と言ってくれてたらしい。

 なんだかこそばゆい。


 一息つくと、慌ただしく扉が開かれて、九曜(くよう)と叢雲(むらくも)が駆け込んで来た。


「お嬢、大丈夫かっ!?」

「主殿!無事か!?」


 どうやら私を探しに行ってくれてたみたいだ。

 吹雪が妖術で連絡してくれたので戻ってきたらしい。


「ありがとう二人とも。怪我とかはしてないから一応無事」


 こんなにも心配してくれる人達がいるってありがたいね。

 逃亡生活してた頃の状況とは大きく変わったなと思う。

 ひょっとしたら私が使った毒には、その時の孤独な状況のせいで自分でも気付かないうちに、味方になってほしいという願いにも似たイメージが込められていたのかも知れない。

 だから回復したり、パワーアップしたり、料理を振る舞ったりした相手が好意的になってくれたのかな?

 いや、私のスキルは10分で効果が無くなるし、きっときっかけでしかないはず。

 その後のあったかい感じは、ちゃんと人間関係の中で育んだものだと思う。


「アイナ、お前結構愛されてんな」

「えへへ」


 ぼっちさんに言われて、少し照れ笑い。

 愛されてるのはとても嬉しいし、私にとってもみんなは大事な家族だ。

 今後はなるべく迷惑かけないように自重しようと心に誓った……なるべくね。


 それにしても、少しだけ疑問も残る。

 私は絶対に第一声で怒られると思ってたのに、私がやらかしてるとは思わずに、何かあったのではと思ってくれてたのが不思議だ。


「私が何かやらかしたとは思わなかったの?」

「アイナちゃんが何かやらかす時は、バレないようにやろうとするでしょう?九曜が護衛で付いてるなら、一緒に巻き込むはず。でも、その九曜が慌てて私に連絡してきたんだもの、何かあったんだと思うわよ」


 なるほど……。

 確かに、やらかす時は証拠隠滅するために九曜も巻き込むかも。

 私一人が忽然と消えたら、何かあった時だもんね。

 実際今回はそうだったし。


「それで、何があったの?」

「あーうん、例の公爵家の金髪リーゼントに、転移魔導具でダンジョンに転移させられちゃったの」

「……ちょっと、軽く言ってるけど重大事件よそれ」


 キャサリン姉の顔がいつになく真剣みを帯びている。

 そして九曜達は妙に殺気立っていた。

 今にも殴り込みに行きそうで、ちょっとハラハラするよ。


「転移魔導具を了承無しに他人に行使するのは、国際法上の重大犯罪よ。指名手配の上に懸賞金も掛けられるレベルの案件ね」

「そうなんだ……。私これで3回目だけど?」


 キャサリン姉が天を仰いだ。


「よく今まで生きてたわね……。普通はダンジョンの深層に飛ばされたりするから、一発でアウトよ?」

「あぁ、ダンジョンの深層は2回だね。あとの1回は闇王国に飛ばされてヴァンパイアに噛まれた」

「それ、3回ともアウトじゃないの……」


 あ、呆れられた……。

 まぁかなり幸運もあったと思う。

 最初に飛ばされたとこでジっちゃんに会えたからパワーレベリングして貰えて、その後の困難も乗り切れたと思うし。

 あそこで私一人だったら、たぶんダンジョンから出れずに終わってたと思う。

 ほんと、ジっちゃんには感謝だね。


「それにしてもお嬢、ダンジョンからよくこんなに早く戻れたな」

「伝説の武器が道案内してくれたからね。ダンジョンの敵も私のスキルと相性良くて簡単に倒せたし」

「……今、伝説の武器と聞こえた気がしたんじゃが、儂耳遠くなったかの?」


 叢雲がお爺ちゃんアピールしてくるのは何故?

 私、はっきりと伝説の武器って言ったと思うけど。


「主殿、伝説の武器というのはどこにあるんですか?」


 吹雪が聞いてくるので、腰に引っかけておいたぼっちさんをテーブルに出した。


「これだよ」


 私以外の全員が、何故か微妙な顔をする。


「こんな形状で戦えるのかしら?こんなに短いなら拳で殴った方が早くない?」

「伝説になるぐらいだから、もっと立派な剣かと思ってた」

「そもそも伝説を知らないのだが、こういう形だと伝わっておるのか?」

「ひょっとして魔法使いの杖的なやつじゃないでしょうか?」


 皆それぞれにぼっちさんをディスってる。

 キャサリン姉、一応それ毒針になってるから私にとっては有用な武器なのよ。

 九曜、それは私のイメージ力が足りなくて華美な装飾されてないだけだから。

 叢雲、元々の形は槍だけど、本当に伝説があるのかは私も知らない。

 吹雪、たしかに某メガネで額に傷がある魔法使いが使ってた杖はこんな感じだったけどね。

 あ、ぼっちさんがめっちゃ落ち込んでる……。


「ぼっちさん、元気だして」

「俺、本当に伝説の武器なのにな……。名前も形も残念な事になってるし……」


 あぁ、いじけちゃったよ……。

 あれ?四人が固まってる?

 どったの?


「「「「し……」」」」


 し?


「「「「シャベッタアアアアアアアアアアァッ!?」」」」

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