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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
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080 訪問者

 獣人の子供の名前はユユちゃん。

 狼系の獣人の女の子である。

 まだちょっと警戒しているけど、囚われている時に優しくしてもらったという事で、吹雪にだけはすごく懐いている。

 とりあえず吹雪にお世話をお願いして、お風呂に入れてご飯を食べさせる事にした。

 もう明るくなり始めているので、私達も朝食の用意を始めた。

 今日ももちろん肉を焼く。

 キャサリン姉が戻って来たけど、食材がそもそも無いのでこれしか出来ないのである。


「食材以外にも色々揃える必要があるから、後で買い物に行ってくるわ」


 私が隠密の妖術で行こうかと言ったんだけど、不用意に人前で妖術を使うなと禁止されてしまった。

 せっかく覚えたのに……。


 気を取り直して調味料(毒)で肉を焼いていく。

 油はヘルシー志向食用油(毒)にしてあるので、カロリーオフで健康的。

 本日の朝食、付け合わせなど何も無い肉オンリーの男飯が完成した。


「あら、相変わらずアイナちゃんの料理は美味しいわね。もっと女の子らしい盛り付けなら満点だけど」


 食材が肉しか無いのに、無茶言わないでよ。

 焼いた肉だけなのに、盛り付けも何も無いでしょうが。


「美味いな!」

「うむ、美味いっ!」

「美味しいですね」

「これ、おいしー!!」


 九曜達に加えて、獣耳をピクピクさせて食べるユユちゃんも美味しいと言ってくれた。

 食材さえあれば、もっと色々作れるんだけどね。

 王都だし、珍しい食材とかあるかも知れないから、今後に期待。

 みんなでの朝食を終えると、もう完全に日が昇ってしまっていた。

 私はヴァンパイアだから昼でも普通に寝れるけど、他のみんなは朝から寝直すのは出来そうにないからと、徹夜したのにそのまま起きているつもりらしい。

 ユユちゃんは途中で寝てたから眠くないみたいだし。

 それにしても、リスイ姉は結局帰って来なかった。

 キャサリン姉の話では、何か用があって少し離れたところに行っているらしい。


 生成したコーヒー(毒)で一服していると、九曜達も飲みたがったので入れてあげた。

 ユユちゃんはホットミルク(毒)にしてあげた。

 10分経つとお腹の中で消えちゃうから若干の喪失感があるけど、吸収された分は栄養として体内に残るから、なるべく吸収しやすい毒にしてある。


「主殿は便利だな」


 便利って言うの止めろ!

 私は家電じゃないんだからねっ!!


 と、突然家の入り口付近から激しい気の圧力が二重に飛んで来た。

 九曜と叢雲が立ち上がり、気絶してしまったユユちゃんを吹雪が抱える。

 こんなバカデカい気の持ち主同士が争ったら、この辺一帯が更地になっちゃうよ。


「主殿はここにいてくれ。俺と叢雲が見てくる」

「いやぁ、私が行くよ」

「危険だぞ、主殿っ!」


 だってこれ、どっちも私の知ってる人の気だし。


「大丈夫、大丈夫」


 私が玄関まで行くと、案の定キャサリン姉と仮面を付けた師匠が睨み合っていた。


「ちょっと、二人とも。何でこんなところで気をぶつけ合ってるのよ?」

「危険人物が訪ねて来たから威圧してるだけよ」

「用があるから来たんだが、威圧されたから威圧し返してるだけじゃ」


 どっちも会話が筋肉なんですけど……。


「師匠様っ!揉め事は勘弁してくださいっ!!」


 ルールーらしき仮面の女性が必死に止めてるので、私は必要無かったかな?

 そこへ、3人目の仮面の人が現れた。

 私より少し背が高い程度で、体の凹凸から私とそう年の違わない少女と思われる。


「キャサリン様、突然の訪問お許しください。昨日の情報に関する報告に伺いました」


 キャサリン姉がその少女を見て、目を見開いて驚愕している。


「報告だけなら他の者に任せても良かったのでは?」

「あら、直接お礼を言いたかったし、それに面白い人物の話を聞きましたので、どうしてもお会いしたかったものですから」


 上品な声質から、貴族の娘っぽいのかなと推測した。


「はぁ……。とりあえず中へどうぞ」


 この家の主であるキャサリン姉が招き入れると、師匠が真っ先にズカズカと上がり込んだ。

 それを見てキャサリン姉のこめかみに青筋が立つ。

 そういうとこだぞ、師匠。


 場所を談話室に移して話を行うようなので、私は九曜達と共に席を外そうとしたけど、何故か同席するように仮面の少女に言われた。

 師匠達とは後で話せればいいんだけど、報告とかまで私が聞いてもいいのかな?

 全員が備え付けてあったソファーに腰を下ろす。

 この家に大した家具は無かったけど、談話室のソファーやテーブル、寝室のベッド等は備え付けてあった。

 前の持ち主が、引っ越しで持って行くのを面倒に思って置いていったのかも知れない。


「昨日の情報、ありがとうございました。私の方でも探っていたのですが、確定的な情報が得られずに二の足を踏んでいたところでしたので」

「それで伯爵は?」

「捕縛に向かった者の報告では、仮面を付けた妙な男が使った魔導具のせいで、逃げられてしまったようです」

「そうですか……」

「とりあえず伯爵邸にいた奴隷達は保護しましたし、邸内にいた者は全て捕縛しました。いずれにしても暗躍していた者を一人失脚させた事になりますので、良しとしましょう」


 あの伯爵邸にいた仮面の人か。

 そういえば、なんかどっかで聞いた声だった気もするけど、誰だったかな?

 逃げれる魔導具か……それがあれば、私もキャサリン姉から逃げれたかも知れないのに。


「それで話は変わるのですが、そちらの方とお話させていただいてもよろしいですか?」


 仮面の少女が私の方を向いて、仮面を外した。

 綺麗な金髪と同じ金色の瞳。

 明らかに貴族であろうと思われる綺麗な肌と、整った顔立ち。

 佇まいは優雅なのに妙な威厳を持つ、不思議な雰囲気の少女だった。


「初めまして。私はこの国の第一王女ソフィア・メルヴェリアです」


 貴族でもあんまり会いたく無いのに、王族とか無理でーす!

 逃げようとしたけど、キャサリン姉に首根っこを掴まれてしまった。

 やっぱり、キャサリン姉からは逃げられないっ!!

この物語はファンタジーです。

実在する調味料及びヘルシー志向食用油及びコーヒー及びホットミルクとは一切関係ありません。

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