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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第二章『冒険者編』
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064 三兄弟

「それにしてもミノタウロスが多いわねぇ」

「こんなところに縄張りは無い筈。何かおかしい」


 キャサリンさんとリスイさんが、倒れているミノタウロス達を眺めながら呟く。

 私はお肉祭りなので上機嫌だが、その対比にちょっとだけ不安になる。

 何かのフラグじゃないよね?

 まぁ私が何かの物語の主人公でもない限り、そうそうフラグなんて回収するもんじゃ……


「おやおやぁ?こんなところに人族の雌が3匹もいやがるぞぉ」

「部下どもが戻ってこねぇから見に来て見れば、人族ごときにやられやがって。情けねぇ」

「いや、よく見ろ。こいつら『拳聖』と『魔操』だ。ガキの方は知らんが」


 何のフラグを回収したのやら、突然、金と銀と銅のテカテカした眼に悪い色のミノタウロス達が現れた。

 それにしても、このミノタウロス達、普通に人の言葉喋ってるんですけど?


「キャサリンさん、まさかミノタウロスって獣人なの?」

「いや違うわよ。牛の獣人はいるけど、中途半端に頭だけ牛になったりしないから。頭部だけ牛のミノタウロスは普通に魔物よ」


 なら良かった。

 さすがに獣人を手に掛けたとあっては、師匠に顔向けできないもんね。

 襲ってきたらその限りではないけど。

 まぁ、今回は襲ってきたんだから、別にいいのか……。


 それにしても『拳聖』と『魔操』……レイアさんの『閃紅姫』に比べたら、痛々しくない二つ名だね。

 私も強くなったら二つ名がつくんだろうか?

 変な二つ名を付けられる前に、ミミィみたいに自ら名乗った方がいいのかも知れない。

 でも、中二病だと思われるのも嫌だなぁ……。


「なるほどね。ミノタウロス三兄弟の『金角牛』『銀角牛』『銅角牛』がいたから、こんなにミノタウロスがいたのね。それにしても、あんた達の縄張りってもっと山奥の方じゃなかったかしらぁ?」

「ふん、もう縄張りなんて関係ねぇんだよ。俺達は新たな力を手にしたからな」

「おうよ。いかに『拳聖』と『魔操』が強いっつっても、俺達がそれぞれ魔王級になったら3対2じゃ勝てねぇだろ」

「おいおい、そこに一匹ガキがいるじゃねぇか。一応3対3だろ。ギャハハハハっ!」


 おやぁ?この牛ども、随分舐めてくれるじゃあーりませんか?

 ちょっとカチンときちゃったぞぉ!

 この3匹、色的に不味そうだからやる気出なかったけど、全力で行く事が決定したよ。


「ミノタウロス三兄弟は、3匹揃っても魔王の幹部程度だったはず」

「「「俺達をひきで数えるんじゃねぇっ!!3とうって言えっ!!」」」


 ツッコむとこ、そこ?

 大型動物のプライドでもあるんかい?

 っていうか、一応人型っぽいのに『にん』じゃなくていいの?


「へへへ、この『限界突破薬』を飲めば、俺達の力は数倍に膨れ上がるんだぜ」

「我ら3兄弟が、この力をもって世界を支配するのだ」

「手始めにお前らを食ってやるから感謝しろよ」


 ミノタウロス達は、何やら毒々しい赤い液体の入った瓶を取り出した。

 私の生成した毒より毒々しいんだけど……それホントに飲んでも大丈夫なやつ?

 まぁムカついてるから止めないけど。


「グビグビ……あばばばばばばっ」

「グビッ……あばばばばばばっ」

「グビビッ……あばばばばばばっ」


 あばばばばばばってなってるけど、毒じゃねそれ?

 アホにならないといいね……。


 ミノタウロス達の体が次第に膨れ上がって大きくなっていく。

 この世界では何度か見た巨大化?

 師匠やミミィほどではないけど、全長2m程だったミノタウロスの体が倍ぐらいの大きさになった。

 筋肉も盛り上がり、血管が浮き出てピクピクしている。

 気の流路もかなり増大していて、師匠が巨大ライオンになった時ぐらいの強さになったように思う。

 素の状態の私じゃ勝てそうにないね。


「何よ、あの薬?あんなヤバいものが出回ってるの?」

「『限界突破薬』なんて聞いた事無い。どこで手に入れたか吐かせる」

「そうね。じゃあ、私達も力を解放しましょう」

「りょ」


 キャサリンさんは仁王立ちして、両手に気を巡らせた。

 そして、あろうことか自身の体を次々と指で穿っていく。

 一時的に出血するものの、次の瞬間には筋肉が隆起して血が止まり、爆発的に気の流路が開かれた。

 私の毒と同様に自身の急所も視えるから、力を増す急所に気を打ち込んでるみたい。

 全身の気が膨れ上がったところで、キャサリンさんは眼で追うのも難しい速度で金色のミノタウロスに肉薄した。

 ジっちゃんがドラゴンを倒した時と同じぐらいの速度だったにも拘わらず、ミノタウロスは手に持っていた斧で防いだ。


「おおっと、危ねぇっ!でも、見えているぜぇ」

「あらん、これは時間かかりそうね……」


 次いでリスイさんも外部から取り込んだ魔素を自身の体中に巡らせた。

 体全体が複雑な魔方陣を描き、リスイさんの魔力の流路が増大する。

 その魔力を乗せた魔方陣が瞬時に形成され、刹那、銀色のミノタウロスへと放たれた。

 爆炎が舞うが、そこに立っていたのは体中の皮膚が鱗のように硬質化した銀色の何か。

 ミノタウロスというよりは、ドラゴンに近い見た目に変化していた。


「ふへへ。魔法はこの鱗が弾いてくれるみたいだな。じゃあ俺はこいつをやるぜ」

「魔法弾くとか、厄介……」


 銀色のミノタウロスはゆっくりとリスイさんに向けて歩を進める。


 残ったのは銅色のミノタウロスだけど……


「おいおい、張り合いがねぇなぁ。せっかくパワーアップしたのに、俺はこんなガキの相手かよ。さっさと食って、兄貴達に加勢すっか」


 ほほう……。

 どっちが食われる側か、その体に教えて進ぜよう。

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