025 ワーム
やって来ましたワームの巣。
「ウネウネしてる……キボジワルイっ!」
気がちゃんと練れているか確認するだけなら、その辺の岩でもいいんじゃないの?
って聞いたら、魔力を弾く白銀鉱でないと純粋に気の効果が出ているか分からないとのこと。
この世界の人間は無意識のうちに魔力も使っているから、気の攻撃なのか魔力の攻撃なのかの判別が難しいらしい。
でもなんでよりによってワームなのよおぉ……。
こうなったら自己暗示で何とか……
「あれはミミズじゃなくて蛇……あれはミミズじゃなくて蛇……あれはミミズじゃなくて蛇……」
「主様、普通蛇の方が怖いと思うんですけど……?」
蛇は鶏肉っぽくて美味しい!ミミズは食べる気にもならない!(個人の見解です)
食べないものとは闘いたくないのですっ!
「無茶な気の解放なんてやるからアホになったんじゃな……」
「あ、あ、アホになってないしっ!」
私は素質があったからアホにならずに済んだはず!
……なってないよね?
とにかく嫌な事は早く終わらせるに限る。
私は全力で地面を蹴り、駆け出した。
魔物は私の足音に気付き鎌首をもたげる。
ほーら、蛇みたいな動きしてるし、あれは蛇!
それぞれが全長5m以上にも上る巨体で10匹もいる。
無我夢中で拳を突き出すも、私の動きより素早く、あっさりと避けられた。
クリティカルポイントが視えている私が捉えきれない程素早いだと?
どうやら僅かな足音から私の位置を測ってるみたいだ。
「それなら、地面を踏まなければいい」
あの白銀の人の動きを見てから、なんとか模倣出来ないものかと考えていた。
私の毒は針から切り離しても半径10m以内であれば自由に操れるので、個体を空中に固定しておく事もできる。
透明の足場を空中に固定しておいて、それを蹴って移動すれば立体機動できちゃうのだ。
魔物は地面の震動を感知できなくなって、どうやら私を見失ったようだ。
やっぱり足音で私の位置を調べていたんだね。
その中の一匹に空中から襲いかかる。
私の姿が見えていないからか、あっさり攻撃はヒットした。
「いだあっ!?めっちゃ硬いぃ!」
「だから硬いって言っただろ?ちゃんと気を練らないと攻撃が通らないぞ」
そっか、忘れてて普通に攻撃しちゃった。
次はちゃんと気を練って、
「せいっ!!」
破砕音とともに白銀色の体の一部が砕けた。
なかなかの破壊力——だけど、たぶんまだ毒針でやった方が強いんじゃないかな?
前世のRPGのイメージでは金属系の敵には特に毒針が効果的に思えちゃうよね。
……あ、そっか。
クリティカルポイントに気を打ち込めばいいのか。
私は再び気を練って、空中からクリティカルポイントに拳を打ち込んだ。
「てやっ!!」
「ギシャアアアアアアアアアッ!!」
胴体の表皮がはじけ飛んで苦しそうに暴れ始める。かなりの威力になった!
もっと収束した方が効果倍増する気がする。
私は人差し指にだけ気を込めて、最も効果が高そうなクリティカルポイントに指を突き刺した。
ビキリと刺さったところを中心にヒビが入り、抉るようにその部分が破裂した。
「今みたいな感じでどう、師匠?」
あれ?何か師匠が唖然としてる?
「な、なんじゃ今の……?指を突き刺したところが爆発した?」
「凄いです主様……まるで東方の一子相伝の武術のようでした」
何その武術、めっちゃ気になるんですけど?
残りは全部ルールーが倒した。
炎の拳は禁止されて素手のみで闘ってたけど、私よりスムーズに闘っていた。
体格差が如実に出ている……。
基本的な体が出来てない子供の私では、まだまだ攻撃力が足りないと思った。
辺りに転がる白銀の欠片——これ売ったらかなりのお金になるだろうけど、足下にゴロンと転がる頭部だけでもかなりの重さがありそうだし、荷物になるから持って行けないか。
それにしても変な顔だ……。
ちょっと口の形がおかしくて、目がどこについてるか分からなくて、鱗の模様もちょっと変わってて……
「やっぱミミズだこれっ!!キボジワルイいいいいいいいぃっ!!」
この物語はファンタジーです。
実在する一子相伝の武術とは一切関係ありません。




