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28 国王の代理

アーノルドがアルシノエの部屋に来たのはアルシノエが部屋へ案内されてすぐのこと。

そばには孫のマイギーもいた。

自分がなぜ王宮に連れてこられたのかがわからないアルシノエは彼らの話から理由を探ろうと耳を傾けた。

「ボンボン条の緊急事項により大公様には王宮で執務を執り行ってもらっている。仕事が忙しく今は自由な行動が制限されていらっしゃる。こちらに来て、大公家への帰参も出来ない状態にある。」

「大公家へは一度も・・・ですか。」

「執務でお忙しいのでね。」

「それではいくら手紙を送っても無駄だったのですね。」

一度大公ディオミディスにあわせて欲しいと食い下がったが芳しい返答はもらえなかった。

「大公様は今どこにいらっしゃるのですか?」

「それは、まあ。」

「今は国難に瀕しているので。」

「何があったのですか?」

ご存じない?それではお話いたしましょうとアーノルドは重い口を開いた。

それは3ヶ月前のこと。王様が王の狩り場で鹿狩りをしていた。

鹿を追いかけて供回り達を置いて馬を走らせてしまい、供回り達は後を追った。

だが、平原まで来た時には乗っていた馬だけが見つかり、王様の姿が消えた。

供回りとして同行していた者達がいくら探しても王の姿を再び見ることがなかった。

それで、ボンボン条第170項を適用することを長老会で議決し、満場一致で採択された。

と言うことの経緯をゆっくりと語った。

「私は関係・・・」

ないから帰りますと言おうとしたら横から声がする。

「ある。もし、国王が万が一の場合はつなぎの国王を大公とする可能性がある。となると、王妃となるのはアルシノエ様、貴女だ。」

急な展開にアルシノエは自分の置かれている状況が飲み込めない。

リューナン姉妹もあっけにとられている。

「え??」

「王妃選びを再度する必要もない。後宮も引き継げば問題はない。」

「それは・・・」

「まだ、国王が崩御されたというわけではない。仮の話だ。」

「一つ言えることがある。それは最近巷をにぎわわせている目的も正体も不明の集団が連れ去ったのではないかと言うこと。我が国で人攫いをしたという形跡がないのでなんとも言えないが。」

「ところで、勉学の方はいかがかな?」

「今は、応用の最終段階ですから。間に合うかと。」

「でも、王宮の中では・・・魔法を使うことが出来ないですわよね?」

アルシノエは逃げる算段を考えたが無駄だろうなと感づいてはいたが一応抵抗してみた。

「それには問題はない。宮廷魔法使いの離宮の一室を使えばよい。」

「そうでしょうな。」

「さらに、法律についても学んでもらう。最低でもボンボン条だけでも。王妃として必要なことだ。」

「はい・・・」

「勉学はそこで行うように。ボンボン条については別に師を付ける。話は以上だ。」

アルシノエ達は部屋を出て別な部屋へと案内された。

アルシノエは普段いる部屋で荷物を解いた。

リューナン姉妹が忙しく片付けをしているとディノスはいつものように勉強の準備を始めた。

女官の一人が訪ねてきて、宮廷魔法使いがアルシノエを呼んでいると告げた。

アルシノエとマイアそしてディノスが宮廷魔法使いのいる離宮へと向かう。

「お初にお目にかかります。」

「やあ。」

「おや、ディノス。久しぶりだな。」

「では、大いに励んでくれ。」

宮廷魔法使いは部屋へ案内すると仕事があると言って出て行った。

そして、普段と変わりない授業を受けるアルシノエがぽつりとつぶやいた。

「どうして私をここに連れてくる必要があるのかしら?」

「わかりませんか?」

「なにがです??」

「ホワムも安全ではないのです。」

師匠のディノスの言葉にアルシノエは驚きの表情で固まった。

ボンボン条の176項とは未来の王妃を守るための条項だったである。

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