20 再度課題
襲撃事件から数日後。
国王派メンバーが襲撃したことくらいしか事件の全容はつかめていない。
だが、襲撃により中断した仮面舞踏会だけは1週間後にまた行われることになった。
既に、晩餐会は終わっていたこともあり異様な晩餐会は免除されてアルシノエは嬉しかった。
アルシノエがずっと気にしていた茶会は再度課題を終えてからと言うことになった。
襲撃事件後の変化と言えば守役がつかなくなったことだ。
アルシノエは茶会がないので友人達の元へ出向いたり招いたりしてご機嫌伺いと情報交換をしている。
リューナン姉妹と部屋へと帰ってきて一人頭を悩ませているアニタに帰宅を告げた。
「ただいま。あら?」
「まだ作らなくて良かったです。材料を無駄にするところでした。」
「そうね。」
「綺麗ですわね。」
国王自ら渡された花々を花瓶に生けていた。
その色鮮やかな花々がテーブルの上をよりいっそう華やかにしている。
植物園でどの花をいくつもらうかでアルシノエ達がわいわい楽しく話をしているとギザーロがふらりと現われた。
テーブルの花を1輪、手に取るとにおいをかぐ。
「王様にもこんな趣味がおありとは。」
にやりと笑うと花を花瓶にもどした。
アニタはメモをしていた紙をすべて集めクローゼットの奥へとかくし、お茶と菓子を用意しはじめた。
「王様ってどんな方かしら?」
「えぇ。大臣や長老会の言いなりと評判です。」
「では、なぜ守役に?」
「家族、特に当主からの命令には背けません。」
「当主の目的をご存じだから言われるがままいらっしゃったのではありませんか?」
「それは・・・」
ギザーロが答えに困り黙り込んでしまった。
アルシノエがさらに追い込もうと質問を考えているとき、アルシノエの部屋が開いた。
そこには、大公派の要人の見張りを終えたナーリィスとマイギーが本来の役目であるアルシノエの守役として戻ってきた。
「あら、あら、あら。」
「君は楽で良いですね。」
「重要人物の見張り、ご苦労。」
別件でフェノロサは借り出されていたようでナーリィスやマイギーよりも遅れてアルシノエの部屋へやってきた。
彼は、明らかにイラだったようにドアを乱暴に閉めた。
「あーもう!」
「荒れているわね。」
「どうもこうもありませんよ。候補者の数人が辞退届を出されたと。あー、忙しい。」
「まぁ、それはあの件があったので幾人かは出てきても当然でしょう。」
「見張りをするだけなら楽です。長老会の愚痴を聞いて手続きをして・・・それだけなら良いのですが他にも雑用を言いつけられて。なぜ、守役がそのようなことをしなくては・・・」
すかさずアニタがお茶を出しひとまず落ち着いてくださいと菓子をフェノロサの口に放り込んだ。
クローゼットでは次回の仮面舞踏会に間に合わせるように補修を施そうとしているリューナン姉妹がいた。
茶会のドレスを選びに来たアルシノエもクローゼットにいた。
「これ、魔法か何かで編まれているのでしょうか?」
「補修の必要がなかったのです。」
「それ?大広間へ帰る途中、魔法で元通りにしたの。いけなかった?」
「あー。そうですか。」
「証拠隠滅・・・」
アルシノエは手間を省くためにしたのにやらなければ良かったと後悔した。
「元の形にもどすことは大事ですわ。」
「ナーリィス様はアルシノエ様に甘いのです。まるで、ミハリス様のよう。」
マイアの文句にアルキュオネも同調した。
「こんなにかわいいご令嬢なのですから甘くして当然ですわ。」
うふふとナーリィスは上品に笑う。
襲撃事件から1週間後予定通りに再度、仮面舞踏会が開かれた。
順番に、部屋番号が若い順から国王と大きい順に大公とそれぞれ5度ほど踊ることになった。
国王派、大公派の面々は特に何事もなかったかのように楽しんでいる。
途中、マイギーに出くわし1曲踊る。
アニタを見つけ出しどうだったかと聞くと賑やかですねと答えた。
「アルシノエ様?」
「うーん。」
「何かありましたか?」
「あ。いいえ。」
国王とも大公とも踊らないときにアルシノエは壁際に立って休憩をしていた。
あのときよりも皆が生き生きしているようにアルシノエには写っていた。
晩餐会といい、仮面舞踏会といい、襲撃事件といいアルシノエ達の裏で何かが起っている。
それが今後にどのような影響を及ぼすかアルシノエは危惧していた。
仮面舞踏会も終わりにさしかかる頃ギザーロから声をかけられた。
ギザーロも仮面舞踏会に来ていたのだ。
1曲踊らないかと誘われた。断る理由など無いのでえぇ、いいわ。二つ返事で踊る。
そうして仮面舞踏会は終わった。




