21 ホスト役
2つめの課題を終えて、茶会が再開され幾日かが経った。
明日はアルシノエがホスト役となり茶会が開かれる。
「ご案内いたします。」
「ありがとうございます。」
「私は植物園の管理を担当しておりまして。」
管理担当の初老と思われる男性が自己紹介をした。
広い王宮を北へ抜け、雑木林の先に温室完備の立派な植物園があった。
そこには温室の外にも様々な植物が植えられており、色とりどりの花々が咲き誇っていた。
「植物園に花を少し分けてもらいましょう。」
「あぁ、でしたらこちらへ。」
案内された先には既に数名の人物が花を摘んでいた。
「え・・・あれは。」
「まぁ。王様ですわね。」
アルシノエ達が来たことを知ると近くまでやってきた。
「時間がかかると思ってね。」
5束の花束を色のバランスを考えながら摘む。
花の香りに幸せな気持ちの中でゆったりと花を選んでいく。
「この花は?」
「あ。」
アルシノエと王の手が同時に同じ花へとむく。
「摘もうか。」
「はい。」
アルシノエがはにかむ。
王様の顔も優しい顔をしている。
それは、いつも心の余裕が無くとげとげしい気持ちの者までも穏やかにする光景であった。
そうしている内に花を摘み終わった。
「茶会へ参加させて欲しい。スケジュール通りに行っても遅れるので。」
「は、はい。お席を準備してお待ちしております。」
「頼むよ。」
柔らかな口調でわざわざ頼んだ。
その様子にいつも、アルシノエは王様の印象をぴりぴりした怖い人だと思っていたがアルシノエは王様の今まで見せない楽しそうな思わぬ一面をのぞかせた。
その思わぬ王様の一面にアルシノエは心ときめかせた。
茶会当日。守役も手伝って会場のセッティングを終えた。
「席の数、茶葉の量、お茶菓子の量は大丈夫かしら?」
「そうですね。」
「楽しい茶会になると良いわね。」
「はい。」
「では、我々は。」
「もうまもなくお見えでしょう。」
ぞろぞろと候補者と侍女、守役がやってきた。
このお菓子は?との質問にアニタが答える。
「ピューカ地方のお菓子ですから。」
「安っぽい。」
「え。」
「私の侍女に作らせた方がもっと見栄えも良いものが出来るわ。」
ちょっとちょっとと周りがこの候補者、アンゲラを諫める。
そして、テーブルの上の花々に目を向けるとさらにアルシノエに詰め寄ってきた。
「まぁ。」
彼女は、茶会の初回にアルシノエに向けてわざと茶器などを落とし、ドレスを台無しにしたアウラの姉である。
「これは、私が王様からいただいた花と同じ。その花々は皆王様の植物園のものでしょう。私がどれだけ頼んでも摘ませてもらえなかったのに。」
「アンゲラ様。それは、私が勝手に持って行ったわけでは。王様からのお許しが出たのです。」
アルシノエはアンゲラに説明するが突っ返すようににじり寄る。
「貴女そうやって逃げるおつもりなの?」
「後ろ・・・ですわ。」
アンゲラ達の後ろに予告無く現われた王様に驚く。
「私が許可をしたのだ。」
口答えは許さないという威圧感を惜しげもなく出す当たりアンゲラの発言に悪意を感じたのではないかとアルシノエは身をすくめた。
それを王も感じたのかアンゲラだけを後で呼び出すこととして茶会を始めるよう促す。
それでもアンゲラは食い下がる。
「でも、あの件の・・・」
「それは私が決める。活躍をしたのだからこれは褒美だ。」
それから楽しい茶会が始まった。
お話や噂話で賑やかだったが、それさえも不愉快に思ったのかアンゲラはそれきり一言も話さずお茶と茶菓子だけを黙々と静かに食べていた。
ひとときの茶会を王様も楽しんだところで、スケジュール担当の男性が王様に声をかけ王様は席を後にした。
「そろそろ、お戻りに。」
「皆々、楽しまれよ。」
王様が帰るとアンゲラもそれに続くように席を外した。
茶会が終わり、候補者達がそれぞれアルシノエに一言感想を述べて帰って行く。
「アルシノエ様にだけつらく当たられるのかしら?」
「あの一族ですから。」
「あの件、怒られなくて良かったですわね。」
「勇敢な方なのですわね。」
アルシノエに対する慰めや評価などが多かった。
ニーナも楽しかったわといいつつ一言。
「私も、これで。」
「王様の目にとまった。それは事実として受け止めるべきですわ。」
「はい?」
「アンゲラ様が敵と見なしたこともそれをアンゲラ様が事実として認識されたからですわ。」
「ニーナ、様。」
「特に、コーミラ家の人間からの陰湿な嫌がらせには注意すべきですわ。罠に陥れることくらい簡単にしてしまう危うい方々ですから。」
ニーナの忠告にアルシノエはアンゲラのことを気にかけることにした。
罠にかかってはアンゲラの思うつぼだ。
おおむね成功したアルシノエがホスト役の茶会。
片付けもきちんと行いアルシノエ達は部屋へと引き上げた。
飾った花々はアルシノエの部屋で枯れかけてドライフラワーとなった後でもアルシノエ達や、部屋を訪れた人々を和ませてくれた。




