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第七十四話 芽吹く力

地方ダンジョン。




悠真が登録した新設ダンジョン。




名前すら、


まだ正式には定着していない。




探索者の数も少ない。




理由は簡単だった。




危険が少ない。




しかし。




得られる素材も少ない。




誰もが、


「成長には向かない場所」


そう考えていた。




悠真以外は。




「……面白いな。」




入口付近の植物を見ながら、


悠真は呟く。




「ぷる?」




ポムが首を傾げる。




「普通なら捨てる素材だ。」




「でも。」




「使い方次第では価値がある。」




悠真は地面に落ちていた小さな魔力草を拾う。




魔力含有量は低い。




だから、


誰も採取しない。




しかし。




「少ないから意味がない。」




それは違う。




少ないなら。




増やせばいい。




育てればいい。




悠真の考えは、


昔から変わらない。




◇ ◇ ◇




その日の探索。




戦闘は少なかった。




低級魔物。




低品質素材。




普通の探索者なら、


成果なしと判断する内容。




しかし。




リルは違った。




「悠真さん。」




「この植物……。」




小さな花を指差す。




「少しだけですが。」




「精霊の力が残っています。」




悠真が近づく。




「分かるのか?」




リルは頷く。




「以前より。」




「はっきり感じます。」




そして。




リル自身が驚いた顔をする。




「……あれ?」




「どうした?」




「いえ。」




「今まで見えなかったものが。」




「見えるようになっています。」




◇ ◇ ◇




帰宅後。




悠真は採取した素材を整理していた。




その横で。




リルは庭の植物を確認している。




荒れていた土地。




しかし。




少しずつ変わり始めていた。




小さな芽。




新しい葉。




生命の気配。




「リル。」




「この土地、変わってきたな。」




リルは嬉しそうに笑う。




「はい。」




「ここは……。」




「優しい場所です。」




悠真は首を傾げる。




「優しい?」




リルは土に触れる。




「誰にも見向きされなかったものを。」




「悠真さんは捨てません。」




「弱いものを。」




「必要ないって決めません。」




その言葉に。




悠真は少し黙る。




それは。




リル自身のことでもあった。




◇ ◇ ◇




その夜。




突然。




リルの体が淡い光に包まれた。




「リル?」




ポムが驚いて跳ねる。




「ぷる!?」




リル自身も戸惑っている。




「分かりません……。」




「でも。」




「力が……。」




暖かい光。




苦しさはない。




むしろ。




安心するような感覚。




【契約情報】




【対象:リル】




【信頼度】




【100%】




【条件達成】




【家族認定】




【進化可能】




悠真は表示を見る。




「進化……。」




リルは震える。




「私が……?」




「強くなれるんですか?」




悠真は頷く。




「ああ。」




しかし。




リルは首を振る。




「違います。」




「たぶん。」




「これは……。」




「強くなりたいからじゃありません。」




リルは庭を見る。




小さな芽。




まだ何もない土地。




でも。




ここには。




自分の居場所がある。




「ここを守りたい。」




「ここで。」




「もっと役に立ちたい。」




その想いに。




光が応える。




【進化条件確認】




【種族変化】




【フェアリー】




↓




【ハイフェアリー】




◇ ◇ ◇




光が消える。




そこにいたリルは、


少しだけ変わっていた。




羽は以前より大きく。




淡い光を纏っている。




魔力の流れが、


以前とは比べ物にならない。




しかし。




表情は変わらない。




「……変でしょうか?」




不安そうに聞くリル。




悠真は笑う。




「いや。」




「リルらしい。」




ポムが近づく。




「ぷる!」




リルは笑う。




「ありがとうございます。」




【種族】




【ハイフェアリー】




【能力】




・精霊植物育成


・高位薬草感知


・魔力循環補助


・植物意思疎通強化




以前なら。




誰にも選ばれなかった妖精。




しかし。




必要とされる場所を得たことで。




眠っていた力が目覚めた。




悠真は庭を見る。




まだ小さな土地。




まだ小さな家。




まだ始まったばかり。




でも。




確かに。




ここには未来がある。




「明日から。」




「もっと庭を広げよう。」




リルは大きく頷く。




「はい。」




「私たちの場所を。」




「もっと育てましょう。」




その言葉を聞きながら。




悠真は思った。




積み重ねるものは。




武器だけではない。




力だけでもない。




信頼も。




家族も。




居場所も。




すべて。




少しずつ育っていく。


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