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読まれるエンタメ物語のテンプレ集 ~テンプレは悪じゃない!読者の期待を外さない物語の組み立て方~  作者: 夕月 悠里
ファンタジー・SF系でよくあるテンプレ

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内政もの (開拓/建国/運営/経営/再建/改革)

やあ(´・ω・`)


ようこそ、町や国家そのものを成長させる超大作のアイデアジャンル「内政もの (開拓/建国/運営/経営/再建/改革)」へ。


冒険者として剣を振るい目の前の魔物を倒すのもいいが、もう少し大きなスケールで世界を変えてみたいと思ったことはないだろうか。


中央から見捨てられた辺境領へ赴き、荒れた道を直し、井戸を掘り、畑を開く。魔物から住民を守り、商人を呼び込み、工房を建て、学校や病院を作る。最初は数十人しか住んでいなかった貧しい村が、やがて交易の中心地となり、周辺諸国から無視できない都市へ成長していく。


あるいは、戦争によって荒廃した国を引き継ぎ、空になった国庫を立て直す。腐敗した官僚を排除し、有能な人材を登用し、税制や軍制を改める。最初は誰からも期待されていなかった主人公が、一つひとつの判断によって国の未来を変えていく。


このような、文明や社会が発展していく過程を物語に落とし込んだものが、内政ものだ。


なぜ、剣や魔法に比べて地味に見える政治、経済、農業、制度設計が、これほど読者を引きつけるのか。


そこには、自分の知恵で世界の仕組みを作り、その成果が人口、国力、街並み、住民の生活として返ってくるという、壮大な達成感がある。


今回は、ゼロに近い状態から土地、組織、国家を育てていく「内政もの」の強さを見ていこう。


◆ ◇ ◇ ◇ ◇


1. 内政もの (開拓/建国/運営/経営/再建/改革)とは


内政ものとは、主人公が領主、国王、宰相、参謀、代官、商会主、ギルド長などのリーダーあるいはブレインの立場となり、領地、国家、都市、組織を維持・発展させていく物語だ。


主人公が自ら剣を取って戦うこともあるが、物語の中心となるのは人材、資金、食料、土地、技術、法律、外交といった資源をどう配分し、社会全体を動かすかだ。


一口に内政ものといっても、扱う段階によって内容は細かく分類できる。


・開拓

まだ十分な生活基盤がない土地に、人が暮らせる環境を作っていく。井戸を掘り、住居を建て、畑を開き、道を整える。何もない状態から始まるため、変化を分かりやすく見せやすい。


・建国

単に町を作るだけでなく、一つの国家を成立させる。領土、国民、統治者、法律、軍、税、通貨、外交関係などを整え、「なぜこの国が国として認められるのか」という正統性まで作らなければならない。


・運営

すでに存在する領地、国家、組織を安定して維持することが中心になる。収入と支出を管理し、住民の不満を抑え、人材を配置し、問題が起きれば対応する。派手な新設よりも、限られた資源を回し続ける能力が問われる。


・経営

資金、利益、生産、販売、投資、雇用などが中心になる。店や商会、工房、企業、冒険者ギルドなどを成長させる物語であり、国家より小さい規模でも成立する。何を作り、誰に売り、得た利益をどこへ再投資するかが見せ場になる。


・再建

すでに壊れている国、町、領地、組織を立て直す。戦争、災害、悪政、財政破綻、人口流出などによって崩壊寸前の状態から始まるため、最初から明確な問題と緊張感を持たせやすい。


・改革

すでに存在する制度、慣習、権力関係を変えていく。税制、教育、医療、軍制、身分制度、貴族社会、後宮、宗教組織などに手を入れるため、既得権益を持つ者との対立が起こりやすい。



これらは別々のジャンルというより、国や組織が成長する段階として連続している。


最初に荒野を開拓し、村を作る。人口が増えれば、組織として運営する必要が出てくる。交易が始まれば、経営と財政の問題が生まれる。勢力が大きくなれば、法律と軍を整えて国家を作る。古い制度が成長を妨げるようになれば、改革を行う。戦争や災害で破壊されれば、再建が必要になる。


このジャンルを一言で表するなら「限られた資源と人材を使い、土地や組織を発展させていく文明シミュレーション型の物語」だ。



なお、Web小説界隈には「NAISEI」という揶揄の言葉もある。現実的な苦労や因果関係を完全にすっ飛ばした、ご都合主義な内政を指す。


たとえば、主人公が現代知識を一つ披露しただけで、翌日には産業革命が起きる。農業改革をした直後に収穫量が何倍にもなる。人手も資金も技術者もいないのに大規模な工事が完成する。主人公の領地だけに有能な人材や移民が都合よく集まる。改革によって損をする人々が誰も反対しない。


このように、技術、資金、人材、時間、政治的抵抗を無視すると、読者はご都合主義がひどいと感じる。そういった物語が「内政」ではなく「NAISEI」呼ばれるのである。


◆ ◆ ◇ ◇ ◇


2. 内政もの (開拓/建国/運営/経営/再建/改革)のここがすごい


内政ものが読者に与える快感は、主に以下の4つがある。



【理由1:スケールが広がる達成感】

バトルものでは、快感の多くが敵を倒した瞬間に集中する。強敵を斬る。必殺技を決める。勝利を宣言する。その瞬間は強烈だが、戦闘が終われば一つの区切りがつく。


一方、内政ものの快感は、少しずつ積み重なっていく。


最初は小屋が数軒しかなかった。水を得るには、毎日遠くの川まで歩かなければならなかった。畑は痩せ、住民は冬を越せるだけの食料も持っていなかった。


そこへ主人公が井戸を掘る。水路を作る。農具を改良する。倉庫を建て、保存食の作り方を教える。やがて収穫が安定し、余った作物を売れるようになる。商人が訪れ、宿や市場ができる。仕事を求めて移民が集まり、道や学校や病院が作られる。


最初の変化は小さい。しかし、一つの改善が次の改善を可能にする。


水路ができれば農業が安定する。農業が安定すれば人口を養える。人口が増えれば、兵士や職人を確保できる。職人が増えれば製品を作れる。製品が売れれば税収が増える。税収が増えれば、道路や城壁へ投資できる。


この連鎖によって、村は町になり、町は都市になり、都市は国家の中心になる。


読者は、その変化を主人公と一緒に見守る。人口が増え、地図が広がり、建物が増え、他国からの扱いが変わる。成長が目に見えるため、経営シミュレーションゲームや街づくりゲームに近い中毒性が生まれる。



【理由2:影響力の大きさ】

一人の怪物を倒せば、目の前の人々を救える。だが、疫病を防ぐ上下水道を整備すれば、何千人もの命を守れる。農業制度を変えれば、毎年の飢饉を防げる。教育を広めれば、次の世代の生活まで変えられる。


主人公の一つの判断が、何万、何十万という人々の生活を根本から救済する。この影響力のスケールが、個人の武力無双ではなかなか味わえない全能感を生み出す。



【理由3:良い政策にも代償があるというジレンマ】

制度や技術は、導入した瞬間に成果が出るわけではない。


道路を作るには人手と資材がいる。新しい農法を広めるには、農民へ利点を説明し、失敗した時の補償を考える必要がある。学校を作っても、子どもを働かせなければ暮らせない家庭は通わせられない。税を下げれば住民は喜ぶが、国庫の収入は減る。


内政ものでは、良い政策にも代償がある。どの問題を先に解決し、何を後回しにするのか。その優先順位の判断が、主人公の能力と人格を表す。


軍備へ資金を使えば、外敵から守れるが、生活改善は遅れる。福祉へ使えば住民は助かるが、財政が苦しくなる。商人を優遇すれば経済は動くが、既存の職人や貴族が反発するかもしれない。


すべてを同時には救えない。だからこそ、主人公の選択に物語が生まれる。



【理由4:群像劇の楽しさ】

主人公一人が農業、建築、軍事、医療、法律、外交のすべてを完璧にこなす必要はない。


農業に詳しい村人、財政を管理する文官、兵士を鍛える将軍、交易路を開く商人、住民の不満を聞く代官など、それぞれの専門家を集めて役割を与えられる。


主人公の能力は、すべてを自分で解決することではなく、問題を見つけ、適切な人材を選び、仕事を任せ、全体を調整することに置ける。


有能な人材が主人公のもとへ集まり、互いの能力を発揮する様子も、内政ものの大きな魅力だ。


◆ ◆ ◆ ◇ ◇


3. 男女向けの差


内政ものは、戦略、経済、軍事、組織運営、数値的な成長を中心に据えやすいため、男性向けWeb小説で目立つジャンルだ。


政治や内政に興味があるのは男性が圧倒的に多く、国内企業の男性社長割合をみても9割程度となっている。そのため女性向け作品を書きたい場合はメインにしないほうがよいジャンルだ。



【男性向け:軍事+内政、弱小国の下剋上】

男性向けでは、内政と軍事が同時に描かれることが多い。


貧しい辺境領や弱小国家を引き継ぐ。農業改革と産業育成で国庫を潤し、その資金で最新の装備を整え、精強な軍隊を組織する。


そして、かつて自国を見下していた周辺の大国や魔王軍を、圧倒的な物量と戦術で蹂躙する。内政で国力を高め、軍事力で領土を広げ、得た資源を再び内政に回すという拡大再生産が、男性向けにおける報酬になる。


また、荒くれ者の将軍、偏屈だが優秀な文官、亡命してきた天才技術者など、一癖も二癖もある有能な人材を集め、適材適所に配置して最強の組織を組み上げる人材収集(三国志的ロマン)の快感も極めて強い。



【女性向け:王妃、クラフトスキルや知識チートの付属品】

一方、女性向けでは、国家を軍事的に大きくすることよりも、制度によって人々の暮らしや関係性を改善する方向が好まれる。


王妃、公爵令嬢、あるいは聖女の立場から、孤児院の設立、女性の労働環境の改善、病院の整備、後宮の悪習の撤廃などを行う。最初から国家経営を望んでいるわけではなく、自分や身の回りの大切な人々が困っている問題を解決した結果、その優しさと手腕が評価され、改革が社会全体へと広がっていく形が多い。


◆ ◆ ◆ ◆ ◇


4. どうカスタマイズするか


領地経営・内政ものを自作に落とし込むときは、以下の設計が物語のスケールを決める。


■ 「初期状態の悲惨さ」を明確にする

まず物語開始時点の状態を明確にする必要がある。


最初の領地がどれほどボロボロかが、成長した時の達成感に直結する。

・人口数十人の過疎の村

・モンスターの出没地域で誰も住みたがらない

・土地が痩せていて農作物が育たない

・前任の領主が悪政を敷いていて住民の信頼がゼロ

この「最悪のスタート地点」をどれだけ魅力的(あるいは絶望的)に描けるかが最初の勝負だ。



■ 「改革のステップ」を段階的に描く

いきなり大都市が完成するのではなく、一つ一つの問題を順番に解決していくプロセスを丁寧に描くこと。

・まず水の確保(井戸、水路)

・次に食料(農業改革、新しい作物の導入)

・次に安全(軍備、城壁、冒険者ギルドの誘致)

・次に経済(市場の開設、交易路の確保)

・次に教育、医療、法律……

この段階的な発展が、読者に「一緒に国を作っている」という参加感を与える。



■ 「障害」を用意する

内政は順調にいくだけでは物語にならない。

・近隣の大国からの圧力や侵略

・内部の汚職や反乱

・天災や疫病

・改革に反対する保守派との対立

・外交上の駆け引き

これらの障害を主人公がどう乗り越えるかが、物語の山場を作る。



■よくあるパターン

・無人の荒野開拓型

人も建物もない土地から始める、もっともサンドボックス性の強い型だ。

主人公は、まず水源と安全な寝床を確保する。次に家、畑、倉庫、道を作り、人を呼び込む。既存の社会や制度がないため、主人公の理想に近い共同体を設計しやすい。

その一方で、労働力、資材、食料のすべてが不足している。最初の住民をどこから集めるか、なぜ危険な荒野へ移住してくれるのかを用意する必要がある。

追放された人々、難民、異種族、元奴隷などを受け入れる設定にすれば、共同体形成や疑似家族ものとも接続できる。



・辺境領地型

領地は存在しているが、中央から見捨てられ、十分に統治されていない型。

交通が不便で、魔物が多く、土地が寒冷または不毛である。税収が少ないため、中央からは価値がない土地と見なされている。

しかし、主人公はそこに未発見の資源、特殊な地形、交易上の価値などを見つける。中央には不要だった土地が、主人公の知識と工夫によって重要拠点へ変わる。

貴族の次男以下、追放された王族、左遷された官僚などを主人公にしやすい型だ。



・貧困村再建型

住民と生活基盤は存在するものの、農業生産、税収、人口が不足している型。

問題の規模が比較的小さく、村人一人ひとりの生活を描きやすい。畑の改良、保存食、特産品、観光、交易など、一つの施策による変化を見せやすいため、内政ものの導入に向いている。

住民からの信頼が少しずつ高まり、主人公が「よそ者」から「自分たちの仲間」と認められる過程も描ける。



・財政破綻型

国庫や領地財政が空になり、役人や兵士の給与、公共事業、借金の返済ができない状態から始まる型。

主人公は、増税、借金、資産売却、支出削減、産業育成などから方針を選ばなければならない。どの方法にも副作用があり、単純な正解はない。

新しい産業を作っても利益が出るまで時間がかかる。増税すれば短期的な収入は増えるが、住民の反発や経済停滞を招く。軍費を削れば財政は改善するが、外敵への備えが弱くなる。

経済と政治の判断を中心に据えたい場合に向いている。



・弱小国家型

軍事力、人口、資源、領土のすべてで周辺国に劣る国家を生き残らせる型。

正面から戦えば負けるため、外交、交易、同盟、地形、技術、人材を利用する必要がある。複数の大国の間で立場を変えながら生存を図る、外交ゲームとしても描ける。

内政によって国力を高めるだけでなく、強くなるまでの時間を外交で稼ぐことが重要になる。

最終的に大国へ成長する下剋上にもできるが、独立と平和を守ること自体を目標にしてもよい。



・未来の破滅回避型

主人公だけが、飢饉、革命、敗戦、疫病、国家滅亡などの未来を知っている型。

転生者、回帰者、ゲーム知識持ちなどが、破滅までの期限を逆算しながら原因を取り除いていく。何年後に戦争が起きる、来年は不作になる、特定の貴族が反乱を起こすといった情報があるため、物語へ明確な締め切りを持たせられる。

ただし、主人公の行動によって未来が変われば、知識どおりに進まなくなる。途中から予測不能になることで、緊張感を維持できる。



・多種族混住型

人間、魔族、獣人、エルフ、ドワーフなどが、同じ領地や都市で暮らす型。

種族によって食事、住居、活動時間、宗教、寿命、身体能力が違うため、それ自体が内政課題になる。人間向けの建物では大型種族が入れない。夜行性種族は昼間の行政窓口を利用できない。肉食種族と草食種族で食文化が衝突する。

単に仲良く暮らしていると説明するのではなく、違いに合わせて法律や設備を作ることで、多文化社会を設計する面白さが生まれる。

異種間バディや移民、差別、共存のテーマとも接続しやすい。



・流刑島・孤島型

外部との交通が限られた閉鎖環境を舞台にする型。

食料、水、燃料、建材などを簡単には外から入手できないため、自給と資源循環が重要になる。限られた土地を農業、住宅、工業、防衛のどれへ使うかという選択も生まれる。

船や飛行手段を開発して外部と交易を始めることを、中盤以降の大きな目標にできる。



・ゲーム領地転生型

主人公が都市経営、戦略、領地運営ゲームの世界へ転生する型。

主人公は、イベント、資源配置、有能な人材、将来の敵国などを知っている。その知識を使い、ゲームでは滅亡するはずだった弱小勢力を救う。

ゲームシステムによって人口、忠誠度、資源、技術などを数値化すれば、成長を見せやすい。日本統一、大陸統一、領地戦争とも組み合わせられる。

ただし、現実化した世界ではNPCも人間として生きているため、ゲームでは簡単に切り捨てていた判断を本当に実行できるのかという葛藤も描ける。



・ダンジョンマスター型

主人公がダンジョンの管理者となり、内部を成長させていく型。

魔物を配置し、罠を作り、侵入者から資源や魔力を得る。階層を増やし、魔物の生活環境を整え、やがて一つの地下国家へ発展させる。

敵を倒すだけの迷宮にするのか、人間と交易する町にするのか、魔物たちの避難所にするのかによって作品の方向が変わる。

通常の領地経営を、ダンジョンという閉鎖空間へ置き換えた型であり、サンドボックス、魔物育成、拠点防衛と相性がよい。



・商会・企業経営型

国家や領地ではなく、商会、工房、店舗、企業などを成長させる型。

商品開発、生産、仕入れ、販売、人材雇用、店舗拡大が中心になる。競合商会との価格競争、材料の不足、職人の引き抜き、物流の問題など、国家より身近な経済ドラマを描ける。

主人公の商会が大きくなるにつれて、領主や国家の政策へ影響を持つようになれば、経営から内政へ自然に規模を拡大できる。



・組織改革型

国家全体ではなく、騎士団、冒険者ギルド、学校、病院、神殿、後宮など、特定の組織を立て直す型。

腐敗した人事制度を改める。役割分担を見直す。訓練や教育を体系化する。記録と会計を整える。主人公の改革によって、機能不全だった組織が本来の役割を取り戻していく。


国家運営より規模を抑えられるため、登場人物と問題を管理しやすい。内政ものを書き慣れていない場合にも扱いやすい型だ。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


まとめ


内政ものの本質は「自分の知恵と判断によって世界の仕組みを作り、その成果が目に見える規模となって返ってくる達成感」にある。


読者が求めているのは、一人の敵を倒した瞬間だけではない。


荒野に道を引く。井戸を掘る。畑を作る。人を集める。市場を開く。学校や病院を建てる。最初は何もなかった場所に生活が生まれ、振り返った時には、一つの町や国家ができあがっている。


その壮大なビフォーアフターこそが、内政ものの最大の報酬だ。


多くの人に読まれるためには、読者に「この国がどう成長するのか、もっと見ていたい」と思わせること。そして最後には「自分もこの国に住んでみたい」と感じさせることが必用だ。


それこそが、内政ものが目指す最強のゴールだ。


今回は以上だ、解散!

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