表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読まれるエンタメ物語のテンプレ集 ~テンプレは悪じゃない!読者の期待を外さない物語の組み立て方~  作者: 夕月 悠里
ファンタジー・SF系でよくあるテンプレ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/52

勘違いもの

やあ(´・ω・`)


ようこそ、Web小説におけるすれ違いコント「勘違いもの」へ。


主人公は、ただ普通に行動しているだけ。あるいは保身で動いているだけ。あるいは本気で悪いことをしようとしているだけ。それなのに、周囲はなぜか主人公の行動を好意的に、あるいは過剰に深読みして受け取ってしまう。


「またオレ何かやっちゃいました?」


このセリフに代表されるように主人公本人は自分を凡人だと思っている。しかし周囲から見ると、主人公は規格外の天才、底知れない支配者、聖人、救世主、あるいは恐るべき悪のカリスマに見えている。


この「本人の認識」と「周囲の評価」のズレをエンタメにしたものが、勘違いものだ。


主人公は自分の実力を正しく理解していない。または自分の行動が周囲にどう見えているかを理解していない。その結果、本人の意図とはまったく別の方向に物語が進んでいく。


本当は逃げただけなのに敵の罠を見抜いたことになる。適当に言った一言が深遠な予言として扱われる。悪役らしく振る舞ったつもりが、なぜか慈悲深い改革者として評価される。悪いことをしようとしたのに結果的に人助けになってしまう。


今回は、誤解が誤解を呼び、周囲が勝手に盛り上がって世界を動かしていく「勘違いもの」の強さを見ていこう。


◆ ◇ ◇ ◇ ◇


1. 勘違いものとは


勘違いものとは「主人公の自己評価・意図」と「周囲の評価・解釈」の間に致命的なズレがあり、そのズレが修正されないまま物語が加速していく構造を指す。


主人公は自分では大したことをしていないと思っている。しかし周囲は、そこにとんでもない意味を見出す。


たとえば次のような形だ。

・本人は「たまたま運が良かっただけ」と思っている。だが周囲は「すべてを計算し尽くした神算鬼謀だ」と受け取る。

・本人は「田舎ではこれが普通だった」と思っている。だが都会や異世界では、それが規格外の魔法や技術だった。

・本人は「沈黙していただけ」なのに、部下たちは「主君はすべてを見通している」と震え上がる。

・本人は「悪役らしく冷たく振る舞ったつもり」なのに、相手は「本当は優しい人だ」と解釈する。


このジャンルの面白さを一言で定義するならこうだ。


「主人公の無自覚、低自己評価、保身、あるいは偶然の行動を、周囲が過剰に深読みし、勝手に主人公の伝説を爆破させていく物語」


基本的な流れはシンプルだ。

1. 主人公が保身や本能に基づく「何気ない行動や発言」をする。

2. 周囲の優秀なキャラクターが、それを勝手に「深読み」する。

3. 主人公の評価、地位、名声、影響力が青天井に跳ね上がる。

4. 主人公は、その虚像の評価に振り回される。


このループで物語が進んでいく。


ここで君に意識してほしいのは、主人公が「本当にすごい能力を持っているかどうか」は、このジャンルの本質ではないということだ。


本当に強いが本人の基準が狂っていて自覚がない型(無自覚最強)もあれば、戦闘力は一般人並みなのにハッタリと誤解だけで魔王として祭り上げられる型(偽りの大物)もある。


どの型を実装するにしても共通する絶対の掟は「本人のつもり」と「周囲の見え方」に巨大なギャップを維持し続けること。このギャップこそが笑いを生み出し、最強の無双感を生み出し、読者への報酬として機能するんだ。


◆ ◆ ◇ ◇ ◇


2. 勘違いもののここがすごい


このジャンルがWeb小説でも人気な理由は、主に2つの機能にある。


【理由1:嫌味がない主人公の構築】

主人公最強ものでよくある罠が、主人公自身が自覚的にスカした態度を取ることで、読者に「鼻につく」「嫌味だ」と嫌悪感を持たれてしまうリスクだ。


だが勘違いものは違う。主人公は本気で「自分は凡人だ」「たまたま運が良かっただけだ」「早く逃げ出したい」と謙虚(あるいは小心者)に怯えている。


その一方で、周囲の人間が勝手に彼を持ち上げるわけだ。

「なんという奥ゆかしさだ。これほどの偉業を成し遂げておきながら、誇りすらしないとは……!」

「あの沈黙……。我々の浅はかな策など、すべてお見通しだったというわけか!」


この構造によって主人公の好感度を下げることなく称賛とスカッと感を読者へ供給できる。



【理由2:読者だけに与えられる「神の視点」という特権】

勘違いものは読者に二つの視点を同時に提供する。


一つは、主人公にシンクロする視点。「ただの普通の行動なのに、なぜか世界に評価されていく」というストーリー。


もう一つは、読者だけがすべての真相を握っている神の視点だ。周囲の秀才や強敵たちが、大真面目な顔をして「主人公の気まぐれ」に恐怖し、平伏し、踊らされている様子を、「いや、それただの偶然だから!」と心の中でツッコミながらニヤニヤ楽しむことができる。この二重の構造が読者をページに釘付けにするんだ。


◆ ◆ ◆ ◇ ◇


3. 男女向けの差


勘違いものは、男性向けにも女性向けにも使える。ただし、勘違いされる内容と、読者が求める期待が少し違う。


【男性向け:無自覚チート、悪のカリスマ、偽りの大物】

男性向けでは大きく分けて3つの人気パターンがある。


一つ目は、無自覚チート型。


田舎の村から来た少年が、自分の力を普通だと思っている。だが、実はその村の基準が異常だった。都会や学園に出ると、主人公の魔法、剣術、知識、身体能力がすべて規格外だと判明するといったもの。


主人公は本気で「自分は弱い」と思っている。しかし周囲は「化け物だ」「天才だ」「伝説級だ」と驚く。これは主人公最強ものと勘違いものが結びついた型だ。



二つ目は、カリスマ誤認型。


主人公は凡人、小心者、あるいは善人なのに、なぜか組織の幹部、組織の首領、裏社会の黒幕として祭り上げられる。本人は必死に取り繕っているだけ。それなのに、優秀な部下たちは勝手に深読みする。


主人公の沈黙は怒りの表れと解釈される。適当な指示は長期的な世界征服計画と受け取られる。失敗をごまかすための発言が部下にとっては神の采配になる。


この型の快感は「本人は小市民なのに、周囲が勝手に巨大な組織を動かすこと」にある。主人公の実力よりも、周囲の信仰と誤解が世界を動かすところにある。



三つ目は、善人誤認型。


主人公は悪人になろうとしている。あるいは自分の利益だけを考えている。それなのに行動の結果がすべて良い方向へ解釈されてしまう。


悪いことをしようとしたのに、民を救ってしまう。嫌われようとしたのに、なぜか尊敬される。冷酷に振る舞ったつもりが、深い慈悲だと解釈される。


この型は、悪役主人公やコメディと相性がいい。「悪くなりたいのに、なぜか善人扱いされる」というズレが笑いになる。



【女性向け:天然悪役令嬢、無自覚聖女、愛され勘違い】

女性向けでは、物理的な無双よりも人間関係や愛情に関する勘違いが主軸になる。


本人は悪役令嬢らしく振る舞っているつもりなのに、周囲からは「実は国の未来を憂う賢い令嬢」と解釈される。目立たず平穏に暮らしたいだけなのに、なぜか聖女のように感謝される。婚約者に愛されていないと思って距離を取っているのに、相手は本気で溺愛している。


女性向けで強いのは、自分は特別ではないと思っているのに、周囲から大切にされる構造である。


主人公は、自分が好かれていることに気づかない。

自分の行動が相手を救っていることに気づかない。

自分が誰かの人生の中心になっていることに気づかない。


その無自覚さが、周囲の執着や溺愛を強める。


政略結婚ものでも使いやすい。主人公は「これは契約結婚だから愛はない」と思っている。しかし相手は本気で主人公を愛している。主人公が義務としてした行動を、相手は愛情だと受け取る。または逆に、相手の不器用な愛情を、主人公が契約上の優しさだと誤解する。


この場合、勘違いはコメディだけでなく、恋愛の焦れったさになる。読者は「早く気づけ」と思いながら、両者のすれ違いを楽しむ。


まとめると、男性向けでは「能力やカリスマを過大評価される勘違い」が強い。女性向けでは「愛情や善性を過小評価している勘違い」が強い。


◆ ◆ ◆ ◆ ◇


4. どうカスタマイズするか


勘違いものを作るときのポイントをいくつか解説する。


【周囲の深読みの理由を作る】

勘違いものでは、周囲のキャラクターがバカに見えすぎると弱い。何でもかんでも「すごい」と言うだけでは、読者が冷める。


大事なのは、「その状況なら、そう誤解しても仕方ない」と思える流れを作ることだ。


・主人公の発言が、偶然にも敵の弱点を突いていた。

・主人公の沈黙が、あまりにも堂々として見えた。

・主人公の逃亡が、敵の罠を避ける最善手になった。

・適当に選んだ人材が、実は隠れた天才だった。

・主人公の保身が、結果的に民衆の救済になった。


このように勘違いには理由が必要だ。優秀なキャラクターほど主人公の凡庸な一手を高次元の策として解釈する。この「優秀ゆえのポンコツ化」が勘違いものの面白さになる。



【バレそうになるハラハラ感を入れる】

勘違いものは、評価が膨らむほど「いつバレるのか」という緊張感が生まれる。そのため、秘密がバレそうになる瞬間を入れると物語が動く。


・専門家に質問される。

・部下から具体的な指示を求められる。

・本物の強者と対面する。

・嘘が検証されそうになる。

・恋愛感情を直接告白されそうになる。


このハラハラ感があると、ただの称賛だけでなく、サスペンスやコメディのテンポが生まれる。



【主人公が気づかない理由を用意する】

主人公が無自覚であることには、ある程度の理由が必要だ。


・なぜ自分の強さに気づかないのか。

・なぜ周囲の好意に気づかないのか。

・なぜ自分の影響力を理解していないのか。


理由があると、主人公がただ鈍いだけに見えにくくなる。たとえば、次のような理由が使える。


・師匠や育った環境が異常すぎた

・田舎の基準が高すぎた

・前世のゲーム知識に引っ張られている

・過去に自己評価を徹底的に下げられている

・自分は嫌われて当然だと思い込んでいる

・相手の立場上、愛されるはずがないと思っている

・自分の行動が社会的にどう見えるか分かっていない

・小心者なので、すべて悪い方向に解釈している


これがあるだけで、勘違いの説得力が上がる。



【主人公を無能にしすぎない】

勘違いものでは、主人公が本当に何もしていないのに全部うまくいくと、飽きられやすい。主人公は勘違いしていてもよい。運がよくてもよい。周囲が勝手に深読みしてもよい。


しかし、最低限の魅力は必要である。

・善意がある。

・勇気がある。

・努力している。

・優しい。

・判断力がある。

・人を見る目がある。

・本人は小心者でも土壇場では誰かを見捨てない。


このような芯があると、読者は主人公を応援しやすい。完全な無能が偶然だけで成功するより、本人にも少しは成功する理由があるほうが読みやすい。



【よくあるパターン】

よくある勘違いもののパターン例を書いていこう。


・実力過大評価型

主人公は普通、またはそこそこ強い程度なのに、周囲がとんでもない実力者だと勘違いする型。


偶然強敵を倒したように見える。発言を深読みされる。たまたま知っていた情報が予言扱いされる。強者が主人公を警戒する。本当の実力と評判の差が広がるほど、コメディとハラハラ感が強くなる。



・無自覚チート型

主人公自身が、自分の力を普通だと思っている型。


田舎育ちで基準がおかしい。師匠が神級だった。前世の常識を持ち込んでいる。周囲のレベルを知らない。こうした理由で、自分が規格外だと気づいていない。主人公最強ものと非常に相性がいい。



・なりすまし型

主人公が有名な誰かに間違われる型。


容姿が似ている。取引場所に偶然居合わせる。服装や紋章を勘違いされる。本来の人物が失踪しており、代役にされる。


本物として扱われるうちに、主人公がその役割を演じざるを得なくなる。スパイもの、宮廷もの、コメディと相性がいい。



・深読みされる型

主人公の何気ない一言や行動を、周囲が高度な計画、深謀遠慮、神の采配として解釈する型。


なんとなく言った言葉が予言扱いされる。保身で逃げたら、敵の罠を見抜いたことになる。適当に選んだ人材が実は逸材だった。何も言わずに黙っていたら、部下が勝手に最適解を実行する。


勘違いものの王道であり、周囲の解釈力が面白さを作る。



・悪のカリスマ誤認型

主人公は善人、凡人、小市民なのに、悪役陣営から冷酷な支配者、理想の魔王、裏切りを許さない主君として誤解される型。


魔王軍の部下が、主人公の沈黙を恐怖と解釈する。悪の組織の構成員が、主人公を神格化する。主人公の適当な指示で、部下が勝手に世界征服を進める。本人と周囲の温度差が大きいほど面白い。



・善人誤認型

主人公は打算や保身で動いているのに、周囲から聖人、救世主、人格者と勘違いされる型。


自分が助かるために逃げ道を作ったら、民衆救済になる。面倒を避けるために仲裁したら、平和の使者扱いされる。嫌われようとして厳しくしたら、相手の成長を促す名指導になる。



・両片思い勘違い型

互いに好きなのに、「相手は自分を好きではない」と思い込む型。


女性向け恋愛、学園ラブコメ、幼なじみ、主従、身分差、政略結婚と相性がいい。読者は両者の好意を知っているため、「早く気づけ」とツッコミながら読む。



・契約・偽装関係の勘違い型

契約結婚、偽装恋人、政略結婚、仮初め婚約などで、「これは本物の愛ではない」と主人公が思い続ける型。


相手は本気で愛しているのに、主人公は契約上の優しさだと思う。あるいは逆に、主人公の演技が相手に本気だと思われる。恋愛の焦れったさを作りやすい型。



・嫌われていると思い込む型

主人公は相手から嫌われていると思っているが、実際には相手は不器用に好意を持っている型。


冷酷公爵、無口騎士、無表情王子、幼なじみ、師匠、上司などと相性がいい。相手の不器用さと、主人公の低自己評価が噛み合うと強い。




なお、勘違いものを書くにあたって注意点もある。これは基本的にコメディ系だ。だから絶対にバッドエンドになるようなことはしてはいけない。


勘違いのすれ違いが原因で「ガチで周囲の人間が不幸になる」「取り返しのつかない凄惨な死者が出る」といった鬱展開は絶対に書くな。その瞬間、笑いは消え失せ、読者はブラウザを閉じる。すれ違いの果てには、必ずハッピーエンドを用意してくれ。もしバッドエンドにしたいなら、絶対に物語の序盤にそういった伏線を挟むこと。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


まとめ


勘違いものの核は、主人公の行動 → 周囲の深読み → 評価の上昇 → 主人公の困惑 → さらなる誤解、という流れにある。


いかに主人公を愛すべき勘違い野郎にし、いかに周囲を大真面目に踊らせるか。この「アンジャッシュ的すれ違い」を巧みに組み上げることが、読者を熱狂させる勘違いコメディの極意になる。


今回は以上だ、解散!

【参考】

勘違い(ピクシブ百科事典)

https://dic.pixiv.net/a/%E5%8B%98%E9%81%95%E3%81%84

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ