クリストファー・ブッカー/ベストセラーコードの7つの基本プロット
やあ(´・ω・`)
ようこそ、売れるストーリーの分類「7つの基本プロット」へ。
プロット作りをしていると、こんな疑問が頭をよぎることはないか?
「なろうやカクヨムのランキング上位を見ても、本屋に平積みされているベストセラーを見ても、あるいは世界中で大ヒットしている映画を見ても……結局、売れてる物語って、どれも似たような展開をしていないか?」
その直感は極めて鋭い。見事に的を射ている。
実は、人類が「面白い!」と熱狂して金を払い、時間を費やす物語のパターンは、無限には存在しないんだ。
今日、俺が紹介するのは、神話の時代から現代のWeb小説に至るまで、人類が繰り返し愛し続けてきた「売れる物語のプロット」を分類した7つのジャンルだ。
この「7つのプロット」を知れば、君がこれから書こうとしている物語が「どの読者層の、どの感情をピンポイントで撃ち抜くための設計図なのか」が、手に取るようにわかるようになるはずだ。
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1. 7つの基本プロットとは?
この7つのプロットは、ただの一人の評論家の思いつきではない。まったく異なるアプローチをとった2つの研究が、奇跡的にも同じ結論に辿り着いたという恐るべき代物なんだ。
まず一つ目のアプローチ。
イギリスのジャーナリストであり著述家のクリストファー・ブッカーは、2004年に出版した著書『The Seven Basic Plots』において、世界中の神話、民話、文学、映画を分析した結果「あらゆる物語には、人間が本能的に好む7つの原型的テーマ(運動)が繰り返し現れる」と論じた。
そして二つ目のアプローチ。
ジョディ・アーチャーとマシュー・ジョッカーズが2016年に発表した『The Bestseller Code (ベストセラーコード)』だ。彼らは文学的な直感に頼らず、コンピュータ(テキストマイニング技術)を用いて、5000冊の小説のテキストデータを解析した。その結果、ベストセラーには「7つの基本的な感情曲線の反復パターン」が存在することが分かった。
「人間の心理の探求」と「冷徹なデータ処理」。アプローチの手法は真逆なのに、そこから浮かび上がった物語の基本形は、細かい解釈の違いこそあれ、おおよそ一致したんだ。
それが以下の7つの基本プロットだ。
・ブッカーの喜劇(Comedy):右肩上がり寄りの軌道で、障害と混乱を越えて大団円へ向かう。
・ブッカーの悲劇(Tragedy):右肩下がり寄りで、欠陥や過ちによって破滅へ進む。
・貧乏から金持ちへ(Rags to Riches):上がって、下がって、もう一度上がる。成長する。
・再生(Rebirth):下がって、上がって、また下がる(または暗闇から光へ)。やり直す。
・旅と帰還(Voyage and Return):未知の世界へ行き、試練を経て戻る。
・探求型(The Quest):明確な目標・目的物のために進む旅。
・モンスター退治(Overcoming the Monster):圧倒的な脅威を打ち倒す。
なお、主人公の変化やベクトルを軸にすると、「喜劇(上昇)」と「悲劇(下降)」は対をなし、「貧乏から金持ちへ(外的な成功)」と「再生(内面的な変化)」も対の構造になっている。また、「旅と帰還(行って帰ることが目的)」と「探求型(得ることが目的)」も、同じ旅でありながらベクトルが異なる関係にある。
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2. 7つの基本プロットの詳細
ここからは、それぞれのプロットの意味やWeb小説での具体例、そして読者が「何を期待して読むのか(お約束)」を見ていこう。
■ブッカーの喜劇(障害物を伴うハッピーエンド)
厳しい状況から幸せに向かって進んでいくストーリーがこれに該当する。感情曲線としては右肩上がりになる。途中でつまずくこともあるが、最後は必ず良い場所へ着地する話だ。
すれ違いによって人間関係や状況、立場、能力のスケールがどんどん大きくなり(インフレし)、最後にそれが整理され、幸せな結末(大団円)へ至る話に多い。
Web小説で言えば、「俺TUEEE」「すれ違いラブコメ」「勘違い系無双(本人は平凡だと思っているが周囲が勝手に最強だと勘違いして崇める話)」などが該当する。ギャグ寄りのなろう系は大体これに属する。徐々にスケールが大きくなっていくのが特徴だ。
【喜劇のお約束】
・序盤:「何がこんがらがるのか」というルールの提示だ。身分差、嘘、隠し事、敵対関係。最初からすべてが順調で素直だったら、喜劇のエンジンはかからない。すれ違いの元を提示しよう。
・中盤:その混乱が極限までふくらむことが最高のごちそうになる。「嘘に嘘を重ねて引っ込みがつかなくなる」「勘違いが国を巻き込むレベルに発展する」。話がややこしく、インフレするほど、読者は「これ、一体どうやって丸く収めるんだ!?」と前のめりになる。
・終盤:ハッピーエンドが絶対条件だ。大団円、結婚、誤解の氷解、共同体の回復。喜劇で一番まずいのは、バッドエンドにすること。ご都合主義と言われようが、読者を笑顔で帰らせるハッピーエンドが鉄則だ。
■ブッカーの悲劇(避けられなかったバッドエンド)
主人公が致命的な欠陥や過ちを抱え、それが最終的に避けられない破滅を招くストーリー。
悲劇は喜劇の完全な反転だ。最初はまだ引き返せたかもしれないのに、自らの選択によってだんだんと悪い方へ、後戻りできない暗黒へと進んでしまう転落劇だ。バッドエンドやビターエンドになるのがほとんどで、悪い方向へのスケールが徐々に大きくなることが大事だ。
Web小説では読者を選びすぎるため、あまり好まれない。基本的には、ざまぁされる悪役(傲慢な勇者や悪徳貴族)の視点や、重厚なダークファンタジー、悪漢小説で使われる。または、やり直し系の前日譚として用意されることも多い。
【悲劇のお約束】
・序盤:主人公の長所や魅力だけでなく、その裏にある致命的な危うさ(傲慢、執着、盲目的な愛、未熟さ)をしっかり見せる。読者に「この人、このままいくと絶対に破滅するぞ……」という不吉な予感を持たせる。
・中盤:内面的な欠陥が、外部の事件(ライバルの罠や運命のいたずら)と最悪の形で結びつき、転落が深まっていく。ここでは単なる「運の悪さ」ではなく、「本人の間違った選択」が破滅を加速させていることが重要だ。何故そうなるのかを見せることが大事だ。
・終盤:破滅が「必然」であったという着地が欲しい。理不尽な事故で死ぬのは悲劇ではない。読者が期待するのは、残酷さそのものではなく、「ああ、あの時のあの選択のせいで、ここまで来てしまったのか」という、胸を締め付けるような苦い納得感だ。
■貧乏から金持ちへ(成長物語)
貧しく不遇な主人公が、運や才能で力・富・恋を一度は手に入れるが、未熟さゆえにいったんすべてを失い、最後に「人間としての成長」を伴って再びそれを取り戻す型だ。
Web小説でも不動の人気の物語だ。底辺職業からの成り上がり、孤児からの英雄、最下層からの領主などいろんなパターンがある。ただし、単なる右肩上がりにすると「喜劇」になってしまうので、途中で「何かを失う出来事による成長」が必ず必要となる。
【貧乏から金持ちへのお約束】
・序盤:圧倒的な不遇、貧しさ、未熟さ、社会的な低さを見せつける。スタート地点が低ければ低いほど、上昇のカタルシスは爆発する。
・中盤:チャンス到来と急激な成功(偽りの勝利)が訪れる。だが、そのあとで必ず致命的な喪失が来る。天狗になって仲間を失うか、本当の強敵に鼻っ柱を折られるか。この型はただの直線的な右肩上がりではない。一度手にしたものを失うからこそ、最後の回復がドラマになる。
・終盤:単なる地位や富の回復ではなく、主人公が「以前よりも成熟した人間」になっていることが絶対条件だ。金持ちになっただけでは下品だ。富や力を持つにふさわしい真の器になって終わるから、この型は最高に気持ちいい。
■再生(やり直し系)
ある出来事(脅威や愛)によって、主人公が生き方を改め、よりよい人間へ変わろうとする型だ。プロット3とは変化のベクトルで逆の動きをする。
最初は高い位置にいるが、状況が下降して自信が失われ、新たな学びや経験を通して変わろうとする。内容がただ右肩上がりになる場合は「喜劇」になるため、文学では最後がビターエンドやバッドエンドになりがちだ。
Web小説では、ズバリ「やり直し系」が該当する。悪役令嬢が前回の失敗の記憶を取り戻し、これまでの傲慢な生き方を改心して破滅フラグを折っていく物語などがこれだ。
【再生のお約束】
・序盤:主人公の心の闇、閉塞感、歪み、トラウマをしっかりと見せる。最初にどのような生き方をしていて、何が悪いかを示すことが大事。
・中盤:その強固な心の闇が、外部からの強烈な刺激によって揺さぶられる。純粋な愛情、致命的な損失、あるいは圧倒的な敗北。何らかの事件が主人公の心の殻を粉砕し、「このままではいけない」と変わらざるを得ない状況へと追い込む。
・終盤:内面が変わったことが、具体的な行動として証明される必要がある。ただ心の中で反省しただけではダメだ。「以前の主人公なら絶対に見捨てていた相手を、命がけで助ける」「以前なら壊していた関係を、プライドを捨てて守る」。そこまで描き切って初めて、読者は「ああ、本当に生まれ変わったんだ」と涙する。文芸や映画では結局変わらずにビターエンドになることも多いが、Web小説であればここからハッピーエンドに向かうのも悪くない。
■旅と帰還
主人公が見知らぬ土地(異郷)へ放り込まれ、そこで非日常の脅威や異常なルールを体験し、価値観を揺さぶる新たな学びを得て、再び元の場所(あるいは新たな安住の地)へ帰ってくる型だ。
『不思議の国のアリス』や『千と千尋の神隠し』などが有名。感情曲線としては、WやMの字を描くように主人公の立場や状況が上下しながら進んでいく。最後は最初に居た位置より高くなるハッピーエンドが定石だ。
Web小説では、元の世界への帰還を前提とした異世界への旅、デスゲームからの生還などがある。
【旅と帰還のお約束】
・序盤:日常から非日常へ踏み出す明確な扉(境界線)が必要だ。退屈な現実から、狂気と魔法が支配する異世界へ。この落差が旅のワクワク感を生む。
・中盤:異郷の狂ったルールに翻弄される姿が最大の見どころになる。常識が通じない世界での驚き、サバイバル、現地住民との交流。「知らない世界に迷い込んでしまった」という圧倒的な没入感を読者に提供しろ。
・終盤:帰還することに意味がなければならない。旅で得た経験や学びによって、主人公の「日常への向き合い方」が変わっていること。前と同じ場所に戻っても、主人公の魂は同じではない。読者が期待しているのはその成長だ。
■探求型(冒険もの)
明確な目的物(宝、薬、真実、約束の地)を求めて主人公と仲間が旅に出て、数々の誘惑や致命的な障害に立ち向かう型だ。
何か明確な目標を達成するための試練が連続的に起きるため、感情グラフではM字に近い上下動を持つ型として紹介されている。どんどん状況がよくなるだけの場合は「喜劇」になる。
Web小説では、ダンジョン最深部へのアタック、世界に散らばった最強武器の回収、不治の病の妹を救うための万能薬探しなど、いろんなパターンがある。
【探求型のお約束】
・序盤:「何を探すのか(ゴール)」と「なぜ探すのか(動機)」を明確に、かつ強烈に示すことが最重要だ。目的の価値が低ければ、読者は冷めてしまう。「絶対に必要なんだ」という探求の理由を強固に設定しよう。また、時間制限を付けるのが盛り上げるコツだ。
・中盤:障害の連続こそがエンタメの燃料だ。仲間集め、立ちはだかるライバル、凶悪な罠、裏切り、寄り道、誤情報。ここで道程が険しければ険しいほど、探求の旅は面白くなる。
・終盤:宝の獲得、目標の到達、あるいは決着が必要だ。「探していた宝は空っぽだったが、真の宝はこの旅で得た仲間だった」というような着地でも構わない。だが、何らかの形で探求そのものに明確なピリオドを打たないと、ゴールを期待してついてきた読者は激怒して暴動を起こすだろう。
■モンスター退治(穴に落ちた男)
主人公が、自分や愛する故郷、あるいは世界そのものを脅かす「敵対的な力」を倒しに行く型だ。敵はドラキュラ、巨大怪獣、宇宙人、ゾンビなど圧倒的なモンスターが多い。
感情曲線はV字のように一度どん底まで行き、そこから大逆転する形。突然の不幸により「穴に落ちた主人公」がそれを解決する、という比喩で説明されることも多い。大事なのは、理不尽な出来事をどのように処理していくかだ。
Web小説では、突如現れたモンスターの討伐、圧倒的な戦力差のある帝国への反逆、人類を滅ぼそうとする邪神との闘いなど、理不尽な状態に立ち向かう物語が該当する。
【モンスター退治のお約束】
・序盤:モンスター(脅威)の「圧倒的な恐ろしさと理不尽さ」を見せつけることが絶対条件だ。ここで敵が弱そう、あるいはマヌケに見えてしまうと、退治した時のカタルシスも半減する。絶望感を与えろ。
・中盤:主人公が圧倒的な劣勢に立たされ、押し潰されそうになることが重要だ。敵の強大さに主人公が傷つき、絶望し、それでも立ち上がるからこそ、読者は「頼む、勝ってくれ!」と熱狂する。
・終盤:打倒の瞬間が最大のご褒美だ。ギリギリの死闘の末の完全勝利でも、自らを犠牲にした代償を払っての勝利でもいい。読者は、物語全体に充満していた「恐怖の圧力」が、最後の一撃で解放される圧倒的な快感を待っている。
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まとめ
今回のポイントを整理しよう。
クリストファー・ブッカーとベストセラーコードでは物語に繰り返し現れる「7つの基本型」として、以下のプロットを提示した。
これらの型を覚えることで、読者の期待感(何を求めてその作品を開いたのか)を正確に理解することができる。
・障害を越えて大団円へ行くなら喜劇。
・欠陥ゆえに落ちていくなら悲劇。
・不遇から成功し、いったん失って取り戻すなら貧乏から金持ちへ。
・心の闇を超えて変わるなら再生。
・異郷へ行って戻るなら旅と帰還。
・目的物へ向かうなら探求。
・脅威を倒すならモンスター退治。
君の作品が今どの型に一番近いのか、まずそこを見極めてみてくれ。
主軸が一本通るだけで、序盤のフックも、中盤の見せ場も、終盤の着地点も、かなり決めやすくなるはずだ。
今回は以上だ、解散!
【参考】
ジョディ・アーチャー, ベストセラーコード
Christopher Booker, The Seven Basic Plots




