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読まれるエンタメ物語のテンプレ集 ~テンプレは悪じゃない!読者の期待を外さない物語の組み立て方~  作者: 夕月 悠里
第1章:基本のテンプレ

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14/24

ブレイク・スナイダー・ビート・シート(BS2/15ビート)

やあ(´・ω・`)


ようこそ、近年もっとも有名な脚本術の構成「ブレイク・スナイダー・ビート・シート(BS2)」へ。


これまで、俺たちは三幕構成をベースにした様々な型を学んできた。どれも強力だ。だが、実際にプロットを書き始めると、必ずと言っていいほど直面する地獄がある。


「幕が広すぎて、溺れる」


三幕構成は巨大な海だ。「問題、対立・葛藤、解決」と一言で言われても、何もない海原に放り出されたら、素人は方向を見失って沈む。


だからブレイク・スナイダーは、途中で溺れないように海に『15の島(目印)』を置くことにしたんだ。その15の島を配置した海図こそが、このBS2だ。


三幕構成を極限まで実務向けにチューニングし、物語を15のビート(変化の節目)で整理する魔法のメソッド。脚本/小説の両方でテンプレとして広く参照される最強のカンペだ。


今回は、この神の海図を暗記するのではなく、Web小説という過酷な戦場で生き残るための武器として授けよう。


◆ ◇ ◇ ◇


1. ブレイク・スナイダー・ビート・シート(BS2)とは何か?


BS2は、物語を15のビートに分解したチェックリストだ。ここでいうビート(Beat)とは、脚本用語で「物語の最小単位」「感情が変化する瞬間」を指す。つまり、単なるイベントの羅列ではなく、「ここで何らかの変化を起こせ」という機能のリストだ。点であり、それが連なる線(場面)でもある。


BS2は以下の15のビートで構成される。

1. オープニング・イメージ

2. テーマの提示

3. セットアップ

4. きっかけ

5. 悩みのとき

6. 第一ターニング・ポイント

7. サブプロット

8. お楽しみ

9. ミッドポイント

10. 迫り来る悪い奴ら

11. すべてを失って

12. 心の暗闇

13. 第二ターニング・ポイント

14. フィナーレ

15. ファイナル・イメージ


このBS2を使うメリットとデメリットはこうだ。


【メリット】

・プロットが止まりにくい:次に目指すべき島が見えているので、「次は何を書けばいいんだっけ?」と迷子になることがない。

・中盤が平坦にならない:広大な第2幕の真ん中に「ミッドポイント(中間点)」と「オール・イズ・ロスト(すべてを失って)」という強制的な山と谷が用意されている。これで中だるみは物理的に不可能になる。

修正リライトが容易になる:「読者が第3章で離脱している」とわかったら、BS2と照らし合わせる。「あ、ここで『お楽しみ』が入ってないから退屈なんだ」と、構造レベルでバグの診断ができる。


【デメリット】

・枠埋め作業になると死ぬ:15の項目を埋めることが目的になってしまい、前後の「因果関係(だから、次が起こる)」が抜けると、ただのイベントの羅列になる。

・細かくしすぎると窒息する:1ビート=1シーンである必要はない。複数のビートを1話にまとめてもいい。

・作品の呼吸を無視するな:ジャンルによっては、ビートの順番が前後したり、省略されたりすることもある。重要なのは機能であって順番の絶対厳守ではない。



ちなみに、スナイダー先生の著書タイトルにもなっている「Save the Cat(猫を救え)」という言葉の意味を知っているか?


これは「主人公が物理的に猫を助けるシーンを入れろ」という意味じゃない。「読者が主人公に好意を持ち、応援したくなるような行動(材料)を、物語の序盤に必ず仕込め」という鉄則だ。


どんなにクズな主人公でも、チンピラから野良猫を庇うシーンが一つあれば、読者は「こいつ、根はいい奴かも」と感情移入する。映画『アラジン』で、泥棒のアラジンが盗んだパンを飢えた子供に分け与えるシーンがそれだ。構造を組む前に、まずは主人公を愛させろ。それが大前提だ。


◆ ◆ ◇


2. BS2の15ビートの使い方


さあ、15の島を巡るぞ。


それぞれのビートには物語のどこで使うべきかのパーセンテージの目安が書いてある。ペース配分の参考にしてくれ。ただし映画と違ってWeb小説は読者の体感時間が一定ではないため、あくまで目安だと思ってくれ。読まれやすくするために順番を入れ替えるのもいいぞ。



【第1幕:状況設定】


1. オープニング・イメージ(Opening Image) 【0%〜1%】

物語のスタイル、雰囲気、ジャンルなど、主人公と世界の現状を一撃で見せる大事な場面だ。

物語の始まりであり、主人公が「変化する前の世界」を見せる。この場面は、最後のファイナル・イメージとの対比として使われる。


例:勇者パーティの端っこで、冷遇されながら雑用をこなす惨めな姿。/傲慢な令嬢としての振る舞い、または処刑台に向かう悪夢。



2. テーマの提示(Theme Stated) 【5%付近】

この話が最終的に何を問うのかを、さりげなく置く。

主人公以外のキャラ(たいていは脇役)が、主人公に向かって「お前は〇〇が足りないんだよ」と忠告するようなセリフが多い。説教臭くしてはいけない。


例:「お前のような足手まといは不要だ」と言われ、本当の居場所(評価)とは何かを問う。/「運命は変えられるのか?」という問い。



3. セットアップ(Set-Up) 【1%〜10%】

主人公の欠点、日常、人間関係、そして「この世界のルール」の提示。読み手が関心を持つかなくすかの境界線だ。ここで「Save the Cat(猫を救え)」を入れて主人公を好きにさせ、後で回収する伏線もばら撒く。


例:主人公がいかに不当に扱われているか、かつての仲間の傲慢さを描写。/自分が「悪役令嬢」であり、数年後に婚約破棄・追放される運命を知る。



4.きっかけ(Catalyst) 【10%付近】

日常を粉々に吹き飛ばす爆弾。ここから物語が動き出し、後戻りできなくなる。きっかけが遅いとストーリーがもたつくため、最初の10%付近には必ず入れておくこと。Web小説なら最初の段落にこれを入れてジャンルを確定させることも多い。


例:「お前はクビだ」という宣告と、パーティからの追放。/転倒して頭を打つ、または鏡を見て前世の記憶を思い出す。



5. 悩みのとき(Debate) 【10%〜20%】

爆弾を落とされた主人公が、「やる/やらない」「行く/行かない」で激しく揺れ動く。誰だって慣れた日常から出るのは嫌なものだ。だから悩みが必要だ。ここで読者は「主人公が何を恐れているか」「失敗したら何を失うか」を理解し、その後の決断に重みを感じる。


例:「自分にはこのスキルしかないのに、これからどうすればいいんだ…」という絶望。/どう逃げても破滅するゲームの強制力に怯える。



6. 第一ターニングポイント(Break into Two) 【20%付近】

プロットポイント1と同じ意味だ。ここでは未知の世界(第2幕)へ明確な意思を持って踏み込む。完全な後戻り不能点だ。

巻き込まれて第二幕に行くのでもいいが、できたらはっきりと明確な意思をもって進んだ方が主人公らしくなる。


例:街を出て一人になる。あるいは、死に体で潜ったダンジョンで「真の力」に気づく。/「よし、農業を始めて自給自足できるようにしよう!」など、回避行動を開始。



【第2幕:対立・葛藤】


7. Bストーリー/サブプロット(B Story) 【22%付近】

本筋(世界を救う等)とは別の、「内面変化を起こす別レーン」の物語が始まる。恋愛、友情、師弟関係などだ。このBストーリーの相手が、後で本筋を解決するための「テーマの答え」を持っていることが多い。急な第2幕への突入の緩衝材(息抜き)としての役割も果たす。Web小説だとヒロインやヒーロー登場など恋愛要素が挟まれることが多い。


例:追放先で出会う、自分を信じてくれる美少女ヒロインや相棒との出会い。/本来の攻略対象(王子)や、原作ではモブだった美少年との交流。



8. お楽しみ(Fun and Games) 【20%〜50%】

ここが物語のキモだ!


作品の「売り」や「タイトル」が約束した快楽を、読者に全力で提供する区間だ。読者はここを読みに来ている。存分に無双させ、イチャイチャさせろ。修行したり、世界観を探索したりする一番楽しい時間だ。

なお近年ではここまでの過程(1〜6)を超速で進ませ、延々とお楽しみを進める「スローライフ系」が人気となっている。


例:隠れた最強スキルで無双。ギルドで驚かれ、周囲の評価が爆上がりする。/現代知識(料理、化粧、経営)を駆使して、周囲の好感度を次々塗り替える。



9. ミッドポイント(Midpoint) 【50%】

物語のちょうど真ん中。強制的なギアチェンジだ。

ここで「偽の勝利(絶好調!)」か「偽の敗北(絶不調)」が起きる。そしてここから「Stakes(賭け金・リスク)」が跳ね上がり、お遊びモードが終了する。

なお絶好調の場合あくまでも一時的な勝利であることに注意する。全部の問題が解決したわけではないということを頭に入れること。すべて解決したらそこで物語は終了だ。


例:大きな街の危機を救う、あるいは王族からスカウトされる(社会的地位の確立)/本来なら敵対するはずの「ヒロイン(聖女)」と親友になってしまう。



10. 迫り来る悪い奴ら(Bad Guys Close In) 【50%〜75%】

外の敵が本気を出して迫ってくるだけでなく、主人公の内部の弱さや、Bストーリーの仲間たちとの不和も迫ってくる。状況がギシギシと締め上げられる。描くのが一番つらい場所。


例:主人公を捨てた勇者たちが、主人公がいなくなったせいで落ちぶれ、逆恨みし始める。/原作の強制力が働き、身に覚えのない罪(いじめ等)でハメられそうになる。



11. すべてを失って(All Is Lost) 【75%付近】

物語の「底」だ。希望が完全に折れる瞬間。

スナイダー先生はここに「死の匂い(Whiff of Death)」を入れろと言っている。物理的な死(恩師の殺害)でも、精神的な死(大切な夢の崩壊)でもいい。これまでの日常、古い世界や考えが死んでいく。それらを経験するから新しい世界への道が開かれる。


例:勇者たちの妨害や、強大な魔王軍の襲来。大切な場所(Bストーリーの相手)が危機に。/運命の「断罪イベント(夜会)」が始まり、大衆の前で糾弾される。



12. 心の暗闇(Dark Night of the Soul) 【75%〜80%】

「すべてを失って」から立ち直るまでの、どん底でもがく時間。すぐ終わる場合もあればしばらく続く場合もある。

痛みを受け止め、自分の愚かさを呪い、そして……Bストーリー(仲間からの言葉や絆)からヒントを得て、「次の一手」の種を見つける。

このビートは大事だ。ただ、Web小説ではあまり長く続けると読者が死ぬので、早めに終わらせるのが鉄則だ。


例:「また自分は守れないのか?」という過去のトラウマとの対峙。/結局、運命は変えられなかったのか…と絶望する。



13.第二ターニングポイント(Break into Three) 【80%付近】

プロットポイント2と同じ。解決策が見つかって新しい世界へと進む。

Aストーリー(外の問題)とBストーリー(内の問題)が合流し、解決の方針が決まる。「俺はもう迷わない」と立ち上がり、敵の本拠地へ向かう。


例:自分の力は「誰かを見返すため」ではなく「守るため」にあると覚醒する。/これまで助けてきた人々が、次々と自分の無実を証明するために現れる。



【第3幕:解決】


14. フィナーレ(Finale) 【80%〜99%】

最終決戦と、これまでの伏線の全回収。教訓を学び、主人公は成長する。

主人公は、以前の自分なら選ばなかった方法(テーマの答え)で敵を倒し、新しい世界を構築する。


例:勇者たちを圧倒的な差で公開処刑し、元凶の魔物を討伐。/真犯人を突き止め、王子から改めてプロポーズ(または自由な生活)を勝ち取る。



15. ファイナル・イメージ(Final Image) 【99%〜100%】

オープニングイメージの鏡として、主人公がどれだけ変化したかを見せる。長々と見せることはしなくていい。最初と最後の変化が明確に感じられるようにすること。


例:最高の仲間に囲まれ、新たなパーティのリーダーとして歩み出す背中。/破滅フラグを全て折り、原作にはない「自分だけの幸せなエンド」を迎える。




BS2の使い方として、いきなり1から順に完璧に書こうとするな。息が詰まって死ぬぞ。

おすすめの使い方はこうだ。


・ざっくり埋める:15個を全部、1行ずつでいいから仮置きする。細部は後回しだ。まずは海に島を置け。

・「ミッドポイント」と「すべてを失って」を固定する:この2つは物語の「一番高い山」と「一番深い谷」だ。ここが決まると、中盤のダレが絶対に防げる。

・「冒頭」と「最終」を鏡にする:主人公がどう変わったか(成長したか)を、セリフで説明するのではなく、映像的な対比で設計する。



◆ ◆ ◆ ◇


3. Web小説での使い方


Web小説は更新のたびに幕が下りる特殊な媒体だ。だからこそ、BS2の読者の心拍をコントロールする機能がめちゃくちゃ刺さる。


ポイントは2つだ。


【1. 尺をページではなく節目で扱う】

110ページ基準のパーセンテージはあくまで参考だ。Web小説では「1話の文字数」「更新頻度」「読者の忍耐力」によって最適なペースは変わる。

なろう系なら「1.オープニングイメージ」から「6.第一ターニングポイント(異世界への旅立ち)」までを、1話〜3話の超高速で終わらせるのが普通だ。大事なのはパーセントではなく、その機能がちゃんと発動したかだ。


【2. フラクタル(入れ子)運用】

100万文字続くWeb小説全体を1つのBS2で回そうとすると、第2幕のお楽しみ(Fun and Games)が30万文字続くことになり、読者は確実にダレる。だから、マトリョーシカのように使え。


・作品全体(超長編):巨大なBS2。

・第一部(例:王都編30話):中くらいのBS2。


こうすれば、超長編でも読者は常に「おっ、今ミッドポイントだな」「うわ、底に落ちた! 次の更新が待ちきれない!」と、心地よいリズムに身を任せることができる。


【Web小説で事故りやすいポイント】

自分の小説が伸びないと思ったら、ここを疑え。


・日常が長すぎてきっかけが来ない:3万文字書いてもまだ主人公が部屋で設定資料を朗読している。読者は契約(ジャンルの期待)を結べずに「ブラウザバック」ボタンを押す。

・お楽しみが設定の説明になっている:タイトルで「もふもふスローライフ」と約束したなら、さっさとモフらせろ。ここで政治の話や魔法の仕組みを長々と語るな。看板未回収だ。

・ミッドポイントがただの派手なバトル:爆発させただけで、目的や立場が反転していない。結果、後半が前半の焼き直しになり、中だるみする。

・すべてを失ってが底になっていない:「ピンチっぽいけど、まあチートあるし大丈夫っしょ」と読者に見透かされている。痛みが薄いから、その後の「復活(暗夜からの回復)」のカタルシスも薄くなる。


逆に、ランキングを駆け上がる設計は単純明快だ。

・冒頭で強烈なフック(Opening Image)

・早めに日常を壊す(Catalyst)

・中盤で「ここから別フェーズだ」と宣言(Midpoint)

・徹底的に読者の価値観をへし折る(All Is Lost)

・ヒロインや仲間(Bストーリー)の答えで立ち上がる(Break into Three)


この読者の心拍リズムが維持されていれば、毎日更新のたびにPVは跳ね上がるだろう。


◆ ◆ ◆ ◆


まとめ


ブレイク・スナイダー・ビート・シート(15ビート)は、数あるテンプレの中でも、特に「連載中に作者を迷子にさせない力」が圧倒的に強い道具だ。


君の次の「部(あるいは章、だいたい30話くらい)」を想定して、下の島を埋めてくれ。


1. オープニング・イメージ:主人公の現在の不満な姿は?

2. テーマの提示:この物語の教訓(裏テーマ)は?

3. セットアップ:世界観のルールと、主人公を好きになるポイントは?

4. きっかけ:日常をぶっ壊す爆弾は?

5. 悩みのとき:何を恐れて躊躇する?

6. 第一ターニング・ポイント:どこで「もう戻れない」と踏み出す?

7. サブプロット:本筋とは別の、主人公の心を動かす関係は?

8. お楽しみ:読者が一番読みたい「ジャンル特有の快楽」は?

9. ミッドポイント:真ん中で何が「反転」する?(情報・立場・目的)

10. 迫り来る悪い奴ら:どうやって敵と内面の弱さが主人公を追い詰める?

11. すべてを失って:物語の「底」で、主人公は何を失う?

12. 心の暗闇:底でどん底を味わい、どうやって解決の糸口を掴む?

13. 第二ターニング・ポイント:本筋とサブプロットが合流し、最後の決戦へ向かう動機は?

14. フィナーレ:どうやってテーマを体現し、敵を倒す?

15. ファイナル・イメージ:冒頭と対比して、主人公はどう変化した?


この島を海に置けば、もう溺れることはない。あとは、読者という乗客を船に乗せて、最高の景色(お楽しみ)を見せながら航海するだけだ。


今回は以上だ。解散!

【参考】

ブレイク・スナイダー, SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術

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